第2章13話 [戦う不死身のシスター]
「これが『力の石』か〜」
光にかざして見ると、赤い透き通った石の中に拳の形の石のような物が入っている。
オッサンとの勝負はスピカのおかげで圧勝した。
「マ、マリー、ここはPvPくらいしかする事がない街だし、僕的には次の街に行ってもいいと思うよ」
「…まあ、一応仲間探しやってから次の街に行こう」
ミツハは新しい仲間を極力入れたくないのか、次の街に行きたがっている。
「おい、そこのお嬢ちゃん!!」
またかよ…。またおっさんか?
「なんだよ?」
振り返るとノースリーブでスソがボロボロのシスター服を着た女の子が立っていた。
年齢は15、6くらいか。顔は可愛いと言うよりカッコいいかんじで、シスターの帽子から少し見える髪は真っ赤だ。
「は、はい?なにか?」
オッサンじゃなかった事に驚いてしまい、どもってしまう。
「お嬢ちゃんが噂の『妖精の召喚士』だろ?ワタシとPvPをやらないか?」
「え?なんで…?」
何で知らないシスターとPvPをしないといけないんだ。
「おい、マリー。このシスター、戦う不死身のシスターアカネだ!」
「え?」
ミツハが、コソッと耳打ちをしてきて思い出す。あのレベル14の!
「お断りします!」
「おい!何でだよ!別に負けても何も失わないんだから良いだろ!」
「逆に聞くけど、どうして俺とPvPがしたいんだ?」
アカネは腕を組み、ドヤ顔をしながら話す。
「腹痛…いや『初心者狩り』を倒したんだろ?噂で聞いたぜ」
「腹痛?『初心者狩り』…ガーウィのことか。それがどうした?」
「あの最初の街で初心者狩りを倒したんだ、今ならもっと強くなってる…はず!ワタシは強いヤツと戦いたいんだ」
戦闘狂じゃん、怖!でも、どうしてガーウィを倒した事を知っているんだ?
「なあ、どうしてガーウィを倒したことを知ってるんだ?」
「森にお嬢ちゃんが行ったあと、ガーウィも森に行くのを見たプレイヤー達がいたんだよ。そんで、森からお嬢ちゃんが帰ってきた。そうなると、お嬢ちゃんがガーウィを返り討ちにしたんじゃないかって、プレイヤー達との間では噂になってるんだよ」
意外に人に見られているもんだな。なら、誰か助けに来てくれても良いのに…。
「PvPか〜。力の石も手に入れたし、俺ってもうPvPする必要ないからな〜」
「おいおいおい、お嬢ちゃんも強いプレイヤーと戦った方が良い経験になると思うぜ」
「う〜ん」
たしかに、この街で1番強いプレイヤーの強さを見てみたい気持ちもある。
「じゃあ、お嬢ちゃんが勝ったらワタシの持ち物から好きなもの1つやるよ!どうだ?」
「え!良いのか?でも賭けは出来ないんじゃ…」
「これはワタシが普通に勝ったらあげるっていう口約束だから良いだよ」
合成に使う装備は欲しいし、強いアカネならレアな装備を持ってるかも。
「分かった、良いぜ!約束破るなよ。さすがに貰うばかりは嫌だから、俺が勝った時は回復薬をあげるよ」
「へへ、良いな!私に対して既に勝った気でいるのが面白い!」
アカネはメニューを開く動きをする。
「すまん!ちょっと待って」
「マリーどうした?」
俺は急いでミツハを連れて、少しだけアカネから離れて小声で話す。
話を済ませてアカネのところに戻る。
「待ってくれてありがとう、PvPを始めようか」
「ああ、何か作戦会議か?」
「そんなところだ」
俺もメニューを開く。
「ルールのところ、誰でも観戦OKになってるのを、俺のパーティー以外は観戦出来ないようにしてくれないか?俺のジョブ、珍しいから人に見せたくないんだ」
「分かった、そのかわり野次とか飛ばすなって、お嬢ちゃんのお仲間に言っておいてくれ」
「ありがとう、野次なんて飛ばす教育が悪いのは俺の仲間にはいないけどな」
「そうかい」と小さく言うとアカネからPvPの申請が来ていたので〈YES〉を選択すると。一瞬のうちに場所が変わる。
「ここは…コロッセオか…?」
円形状のフィールドと上には客席が見える。
「よし!エリー、スキルの解説頼むぞ」
「うん、サポートは任せて!」
「準備は良いか?」
少し離れた場所からアカネは聞く。
「おう!」
「いくぜー!マリー!!」
アカネはこちらに勢いよく走ってくる。
「『召喚!』スピカ!ナイト!」
俺は急いでスピカとナイトを召喚する。
「来い!!」
アカネは嬉しそうに笑いながら拳を構える。