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第2章6.5話 [ミツハの想い]

弥都葉(みつは)、また観てるの?」

「うん!おかあさん!わたし、おっきくなったら、やみのまほうつかいになる!」


 子供の頃にテレビで放送していた、闇の魔法使いが困っている人を助けながら旅をするアニメを観て、私は闇の魔法使いに憧れた。

 アニメのDVDを何度も観て、物語に出てくる主人公の喋り方や仕草を真似を練習した。

 いつか闇の魔法使いになる僕の夢のために。


「わがなは!やみのまほうつかい、みつはだ!あしきひかりをつらぬき!くろきやみにいやされよ!」


 小学生になった頃には、現実には魔法なんて使えないし無理だって分かった。

 テレビのCMで【Ner Equip Adventure World】を観て驚いた。この【N–EAW】では僕の夢が叶えられる。闇魔法が使える!僕は嬉しかった!

 親に頼んで何とか買ってもらった。代償にお小遣い半年分が消えた。

 子どもの頃に憧れた主人公になりたくて闇魔法使いのジョブを選んで、喋り方を真似し意気揚々と門の外に出る。


「『ダークショット!』」


 初級魔法だから小さいが、野球のボールくらいの大きさの黒い球が手から飛び出しゴブリンの頭に当たる。


「やった…!闇魔法だ!!今、私の手から…うんうん、ぼ、僕の手から闇魔法が出たんだ!!」


 嬉しくて自分の手を眺めていると闇魔法が当たったゴブリンが立ち上がり、その周りに5対のゴブリンがワラワラと出てくる。


「え…?」


 弱過ぎてダンジョンに辿り着く前に死んだ。闇魔法使いは序盤は弱いようだ。

 ゴブリンを倒す為には仲間がいる。


「ねぇ、魔法使いの君。良かったら一緒にダンジョンに行かない?」

「い、良いんですか?」


 仲間がほしくて冒険者ギルドの集会所をブラブラしていたら声を掛けられた。

 剣士と魔法使いの少し高校生くらいの2人組の女の子のパーティーに入れてもらった。

 さっき知ったけどボス部屋が運悪く今戦っている凄く強いキングオークで手も足も出せず僕のパーティーは負けた…。


「おい、あの子じゃないか?闇魔法しか使えなくて組んだプレイヤーの邪魔するらしいぞ…」

「マジかよ、っていうか闇魔法とかないわ〜」


 集会所に行くと私の陰口を言うプレイヤーが増えた。組んだ2人が負けた腹いせに、私が闇魔法しか使えない役立たずだと悪い噂を流しているそうだ。

 この日から僕と組んでくれる人はいなくなってしまった。


「闇魔法しか使えないのに大変だね。良かったら一緒に行かない?」


それでもパーティーに誘ってくれる人はいる。


「ミツハちゃんって歳いくつのな?彼氏とかいるの?」


 でもそれは僕が中学生だからか、下心のある男性プレイヤーばかりだった。だから怖くて断った。


「どうだ、お嬢さん。俺たちとダンジョンに行くか?」


 男性プレイヤーとパーティーを組むのは怖いので、ずっと断って逃げるようになった。

出来れば女の子のプレイヤーが良いな…。


「マリ〜!ここだよ!」


 掲示板の近くで自分をパーティーに入れてくれそうな優しそうなプレイヤーを探していると大きな声が聞こえる。

 声のする方を見ると、小さな妖精と綺麗な長い銀髪に日本人離れした顔をした少女が歩いていくる。


「なあ、エリー。どんな人が良いのかな?」

「マリーのジョブに合ったプレイヤーを見つけたら良いと思うよ」


 あの子は【N–EAW】の掲示板で可愛いって話題になってる、たしか…『妖精の召喚士』とか言われてる子だ。

 会話を聞く限り、仲間を探しているようだ!これはチャンス!マリーって子は最近始めたばかりみたいで私の悪い噂を知らないはず!


「そこの妖精を連れたお嬢さん。それなら、この僕が組んであげようか?」


 勇気を振り絞ってマリーちゃんに声を掛けた。心臓がバクバクしてる。

 マリーと妖精はコソコソと話し始める。話が終わる間、私の心臓が飛び出すほどバクバクする。


「別に良いけど…」


 やった!これで私にも遂に仲間ができた!


「ゲハハハハハハ!…」


 そこから隠しておきたかった事を男性プレイヤーに喋られてしまった。


「くっ…!」


 その場に居られず走って集会所から外に出る。

 最悪だ!せっかく仲間ができたと思ってのに…!

 私は1人で頑張るしかないようだ…諦めてベンチに座っていると、私の側に誰かが来たので顔を上げる。


「まあアレだ、あんなヤツの話なんて気にすんなよ!」


 風で銀髪を(なび)かせながら笑顔でマリーちゃんは励ましてくる。


「……」


私の悪い噂を聞いたのに、私を探して追いかけてくれるなんて!なんて良い子なんだ…!

私は絶対にマリーちゃんに仲間にしてもらおう。だから自分自身でルールを作った。


「…それなら頼みがある。あんな話を聞いて僕の事を信用なんて出来ないだろう。だから、私が『森の石』を手に入れるところを見届けてほしい。僕は自分自信の力で森の石を手に入れてみせるから、君が信用出来ると思ったらパーティーに入れてくれ!」


 私は…いや!僕は!きっと子のこと一緒に…!

 キングオークの攻撃で崩れそうになるダークウォールに更に力を込める。

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