第2章6話 [キングオークの猛威]
「キングオークに見つかっていないようだし準備させてもらおう」
「どういう意味だ?」
ミツハの言っている意味が分からず、コソッと小さな声でエリーに聞く。
「ボス戦はボスに見つかるまで戦闘は始まらないんだよ。前の時言わなかったっけ?」
「…言ってない」
コソコソとエリーと話しているとミツハが動きだす。
「『ダークオーラ』『ダークパワー』『ブラックカウンター』」
ミツハの体から黒いオーラが出たり、黒いキラキラした何かが散っている。
「おい、エリー。あれは何をしているんだ?」
「『ダークオーラ』は5分間VITを50プラスする闇魔法で『ダークパワー』は5分間、闇魔法で攻撃する時だけSTRを50プラスする闇魔法。『ブラックカウンター』は3分間相手が攻撃してきたタイミングで闇魔法で攻撃したらSTRが倍になる闇魔法だよ」
何だか上級者の戦闘みたいで凄いな…。あと魔法の効果を全て知っているエリーも何気に凄い。
コソコソとエリーと話しているとミツハが両手を上げる。
「『ダークジャベリン!』」
ミツハの手から5メートルほどの大きさの、黒いオーラが出ている黒い槍を生み出す。
「おらぁ!!」
両手を思いっきり下に振りかぶると、黒い槍がキングオーク目掛けて飛んでいく。
「おおぉ…」
頭良いな。戦闘始まる前に攻撃をしてダメージを与えるなんて、思い付かなかった。
キングオークに直撃しバシューン!!っと凄い音がし、キングオークがいた場所は煙が立ち込める。
「グオオオオオオオオ!!!!」
煙を払いのけ、キングオークがこちらに走ってくる。
キングオークの頭上に現れたHPバーを見れば、少しだけ減っていた。
あの攻撃を受けて少ししか減っていないのなら、キングオークは思っていた以上に手強そうだ。
「『ダークバレット!』」
キングオークのお腹にミツハの魔法攻撃が直撃するが、気にすることなく真っ直ぐに突っ込んでくる。
「『ダークバレット!』」
もう一度同じ魔法を使い攻撃するが怯まない。
ミツハはキングオークの体当たりをギリギリで避ける。
ハイオークとは違い、キングオークは武器を持っていなくて良かった。
「『ダークバレット!』『ダークバレット!』」
ミツハはキングオークの横から攻撃をする。
キングオークのHPバーは少ししか削れていない。ダークバレットを200回は当てないと勝てないだろう。
「ねぇ、マリー!助けた方がいいよ!」
「まだだ…まだ分からない。様子を見よう…」
俺はミツハが助けを求めるまで手助けしないと、ボス部屋に入る前に決めていた。
「『ダークバレット!!』『ダークバレット!!』『ダークバレット!!』」
ミツハは必死に攻撃を避けては闇魔法を当てる。
「なあ、エリー。闇魔法には、もっと強い攻撃魔法はないのか?」
「あるにはあるけど。ミツハちゃんのレベルだと今使える攻撃魔法は、さっき使った『ダークジャベリン』と『ダークバレット』だけだと思う。最初の方の闇魔法使いは補助魔法と防御魔法しか覚えないから…」
マジかよ…。ミツハ、何か秘策があるのか?
「グオオオオオオオオ!!」
オークキングは頭突きをするが、左にミツハが避ける。しかし、オークキングは右腕で避けたミツハのお腹を殴る。
「ぐぁ…!」
ミツハは、そのまま後ろに吹き飛ぶ。
「ぐあ、あ…」
ミツハは痛みで蹲る。
そこにキングオークが走って向かっていく。
「ミツハ!キングが攻撃しようとしてるぞ!」
ミツハに叫んで忠告する。
ハッと気づいたミツハは何とか座り、左手を前に出して魔法を唱える。
「『ダ、ダークウォール…』」
ミツハの目の前に長方形の大きな黒い壁が現れる。
キングオークは構わずに、その壁に攻撃をする。
「ミツハ!もう無理だ!俺も手伝う!一緒に戦おう?!」
「だ、大丈夫だ…!私1人で戦わせてくれ!」
「どうしてだ?!今回は仕方ないだろ!」
ガンガン!と『ダークウォール』で作られた黒い壁をキングオークが殴る。
ミツハは回復薬を2本飲み、攻撃を耐える。
「はぁ…はぁ…」
もしかしたら、あの黒い壁はナイトと同じで維持するにはHPを消耗しないとダメな壁なのか?
「マリー…私はね、子供の頃から闇の魔法使いに憧れていた」
ミツハは静かに話し始める。