第2章5話 [ミツハとダンジョン]
門から出て何事もなく草原を歩いて森の入り口に到着した。
「森に着いたし、早速ゴブリンでも倒しながらミツハのレベルでも上げていくか。っと、その前に『召喚!』スピカ!ナイト!」
目の前に召喚陣が現れ、スピカとナイトが召喚される。
「うわ!凄い!ツノの生えたスピードラビット初めて見た!それにナイトウルフだ!カッコイイ!!」
「ふふふ。そうだろう、そうだろう」
自分の召喚獣を褒められるのは、めちゃんこ嬉しものだ。
「森に入ったらナイトが弱めに攻撃するから、その後ミツハが攻撃して倒すかんじでいこう」
「うん…分かった」
ミツハは少し緊張しているようだ。レベルが2って言ってたし、戦闘自体そこまでしてこなかったのだろうか?
「ミツハ、回復薬は持ってるか?」
「うん、最初のお金で回復薬は山ほど買ってあるから大丈夫だ」
「よし、じゃあ森に入るぞ」
俺たちは森に入っていく。
森に入ると空気が澄んでいて、日の光で木々がキラキラとしていて相変わらず綺麗だ。
森に入って序盤からゴブリンが1体、茂みから現れる。
「ナイト、倒さないように弱めに攻撃だ!」
「ワウ!」
ナイトはゴブリンのお腹に頭突きをする。ゴブリンはヨロヨロと膝をつく。
「ミツハ、今だ!」
「あ、ああ!『ダークバレット!』」
ミツハが右手を前に突き出し魔法を唱えると、手からバスケットボールほどの黒い球が1つ飛び出す。
ゴブリンの顔面に直撃し、ゴブリンがパリーンと砕ける。
「スゲェ!闇魔法って強いし、カッコいいな!」
「ふ、ふふふ、マリーも闇魔法の良さが分かるようだな」
その後も同じ作戦でゴブリンを次々と倒していく。
「ねぇねぇ、聞いていいのか分からないんだけど。ミツハちゃんって闇魔法がメインジョブでしょ?ならサブのジョブは何にしてるの?」
ナイスだ、エリー。俺も少し気になっていた。
でも、手の内を聞いていいのかと思い聞かないようにしていた。
「ふっふっふっふっふ、サブも『闇魔法使い』さ!」
「え?メインとサブを同じジョブにする意味ってあるのか?」
不思議な事をするもんだと思い聞いてみる。
「だから、さっきの『ダークバレット』は普通のサイズより大きかったんだね」
「エリー、どういう事だ?」
「僕が教えてあげよう。メインとサブを同じジョブにすると能力が倍になり、必要なMPも半分で済むのさ」
そうだったのか!召喚士のジョブの俺は全く意味がない話だ。
「まあ、そのかわり闇魔法しか使えないだけど」
「だから集会所で『闇魔法しか使えない』って言われていたのか…」
その後も中身のない会話をしながら、ダンジョンに向かって歩きだす。
「着いたな、森のダンジョン」
森のダンジョンに到着し、入り口の前に立つ。
『シングルモードでよろしいですか?』
と目の前に文字が表示される。
「マリー、今回はマルチだよ」
「ああ」
『NO』を選択すると強制的にマルチモードに選択された。
ダンジョンに入ると松明のおかげで、相変わらずの明るさだった。
「マリーにエリー、何だかジメジメした場所だ。何か出てくるかもしれない気をつけろ」
「いや、お前が言うのかよ!」
「え?」
エリーが言うのかと思っていたが、まさかのミツハが言うのか!キャラ的に言いそうだけど、ここはエリーに言ってほしかったと心の中で歯痒い気持ちになる俺だった。
エリーを見れば『私の事なら大丈夫だよ』っといった顔をしている。
「マリー。改めて聞くけど、僕がオークに1人で挑んで信用できると思ったら短い間で良いから仲間にしてくれる約束、忘れないでね」
「ああ、分かってるよ」
ミツハのレベルはダンジョンに向かう道中で上がったので、きっとハイオーク程度なら勝てるだろう。
「なあ、エリー。もうボスのいる部屋の扉があるんだが、どうなっているんだ?」
歩いて3分程しか経っていないのに、大きな扉が目の前にある。
なんか、前に見た時より金ピカな気がする。
「マリー、これキングオークがいるよ」
「キングオーク?前に来た時のオークと違うのか?」
「っ!エリー!この部屋が普通じゃないのか?!」
ミツハが取り乱しエリーに質問する。
「う、うん。ダンジョンでは100回に1回くらいでレアなボス部屋が出現してダンジョンの仕様もレアなボス用になるんだよ。ボスは強くなってるけど倒すと経験値も大量に貰えるし、レアアイテムも手に入るけど…」
「そうだったのか…」
「…ミツハ、本当に1人で戦うのか?俺たちも手伝うから一緒に倒そう」
流石にレベルが4に上がったとはいえ、ミツハ1人では無理だろう。
「いや。約束通り、1人でやらせてくれ。それに因縁もあるんだ…」
「……分かった。約束通り、俺たちは手を出さない。だから、ミツハのタイミングでボス部屋に入ろう」
俺は、ミツハが助けを求めたら助けようと心に決めた。
ミツハは目を閉じ、何度も深呼吸をして気持ちを落ち着かせ集中する。
目をゆっくりと開き扉に手を当てる。
「行こう。マリー、僕の戦いを目に焼き付けておいてくれ」
扉を開け部屋に入ると、前回来た時と変わず全く同じ場所だった。
唯一違うのは部屋の奥にある椅子が金で作られているんじゃないかというほど金ピカで、そこには筋骨隆々な金色の王冠を被り、真っ赤なマントを着けた王様のようなオークが頬杖をついて座っていた。