第1章14話[絶望]
「最後のお別れは終わったかしら?」
「くっ…!!」
俺の今の心の中にあるのは目の前で笑っているコイツに対しての怒りだけだ。
俺はコイツに絶対に負けるわけにはいかない!何をしてでも勝つ!
「スピカ!攻撃だ!」
「キュイキュイー!!」
ガーウィの剥き出しになっているお腹に、スピカの角が突き刺さる。
「ぐ‥!」
「お前も不意打ちしたんだ。卑怯だなんて言わないよな?」
ガーウィは痛みで、フラフラと後ろに後退する。
「そのまま攻撃を続けろ!スピカ!」
「チッ、調子に乗るな!」
ガーウィは体制を立て直し、突進するスピカに蹴りを入れる。
「ッキュイ!」
「大丈夫か?!スピカ!」
蹴り飛ばさたスピカは、すぐに起き上がり攻撃する。
それをガーウィが手に持った飛苦無で防ぎ、ガーウィの飛苦無をスピカが角で防ぐを繰り返す。
今は互角だが、このままでは負ける。ガーウィにはアビリティの『俊速』がある。あれを使われたらスピカのスピードでは追い付けず攻撃されるを繰り返されれば負けるのは時間の問題だ‥!何か手はないのか?
そうだ!そういえばスピカにもアビリティがあるじゃないか!何でこんな重要な事忘れていたんだ!
「スピカ!アビリティ発動だ!加速だ!」
「何?!アビリティ…!」
ガーウィが驚く。
「え‥?」
スピカに何も起きない。動いても早さはそのままだ。
「何でだ?何も起きない?!!アビリティ発動だ!!」
スピカに命令するが、やはり発動しない。分からない…何か理由があるのか?こんな時エリーが側にいてくれたら…!
「あはははは!ハッタリだったのかしら?それとも〜、発動しない理由が分からないの?妖精がいないと本当にダメダメね〜、お嬢ちゃん!」
「くっ…」
全く言い返せない。分からないことがあれば、いつもエリーに聞いていた。俺は本当にエリーに頼りきりだったんだと実感する。
「お嬢ちゃん。このままだと、ヤバイんじゃないの?『俊速』発動!」
「キュイー!!」
ガーウィの姿が消え、一瞬のうちにスピカが傷だらけになる。スピカのHPを見ればもう半分程しかなかった。
あと数回、アビリティの『俊速』を発動され攻撃を受ければ負ける…。
頭の中に考えたくなかった未来を考えてしまう。
「くそっ!俺も戦闘に参加する!ナイト、援護を頼む!」
「あら?お嬢ちゃん。前衛職も持ってたの?…でも遅い!!」
分かっていたが、俺とガーウィのAGI(素早さ)には大きな差がある。ガーウィのスピードに付いていけず俺はガーウィに触れることも出来ず思い切りお腹に蹴りを入れられ吹き飛ぶ。
「ちくしょう!」
俺は吹き飛ばされる。倒れた状態で勝てる方法を必死に考える。
このままでは、またアビリティを発動される…!
「アビリティ発動!『俊速〜!』」
「キュイー!!」
またスピカが傷だらけになる。スピカのHPはもう残り僅かだ。
スピカが傷だらけになっているのは俺がゲームの知識もなくステータスも弱いせいだ!傷だらけになるスピカをこれ以上見たくない。四つ這いになり地面を見つめながら謝罪する。
「スピカ、すまない…俺みたいな素人が召喚しちまって…」
俺の頭の前で、キーンという金属の弾かれる音が何度も聞こえる。頭を上げると傷だらけのスピカが、必死にガーウィが投げる飛苦無から守ってくれていた。
「ハァハァ…キュイキュイー!!」
「ウサギちゃん!弱くて馬鹿な召喚主を恨むことね!『俊速!』」
またガーウィが消える。横に居たナイトが俺に体当たりをしてくる。
俺は横に吹き飛び何事かと思いナイトを見る。
「ワウー!!」
何本もの飛苦無がナイトに刺さる。
「ナイト…!」
今回hsスピカじゃなく俺を狙ったのか!それに対して本能的に気付いたナイトが身を呈して庇ってくれたのか…。
俺は本当にお荷物だ!俺にも力があれば。俺に召喚獣守れる力があれば!
「キュイー!」
スピカが俺に飛んでくる飛苦無を角で弾きながら必死に防いでくれている。ナイト傷だらけになりながら、俺の側で守ってくれている。みんなは勝つ事を諦めていない。それなのに!
召喚獣が傷だらけにになっているのに!俺は何も出来ない!俺にも力があれば!
「ちくしょう!俺は馬鹿で弱い!!頼む、誰でもいい!!」
俺は四つん這いの状態で地面を殴り叫ぶ。
「俺に…!!エリーやスピカやナイトを!これから召喚する召喚獣を守る力を!!俺に召喚獣たちの未来を守る力をくれーーーー!!」
「馬っ鹿みたい!そんな事を言っても無駄よ!『瞬足!』」
「キュイーーー!!!」
スピカが更に攻撃を受け残りのHPが僅かになる。
「もう負けるのか…すまない、エリー…」
諦めかけた時…俺の前にテキストウインドウが現れる。
「え?何だこれ…?」
『覚醒条件を満たしました』
テキストウインドウの文字が変わる。
『おめでとうございます。覚醒スキルが覚醒しました。覚醒した第3のジョブ【合成士】が使用可能になりました】
俺の目の前で大きな希望が生まれた。