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VRMMO RPGで記憶を取り戻す為にレアジョブ【合成士】で冒険する  作者: 語黎蒼
第1章【冒険の始まり】
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第1章13話 [約束]

「PvPが始まるまで少し時間もあるわね。何で召喚士が不遇職なのか、私が教えてあげるわ」

「…必要ない。俺は不遇職だなんて思った事ないしな」


 そうは言ったが少し気にはなっている。今まで召喚士を弱いと思ったことがないのだから理由が知りたいのも本音だ。


「まあ、そう言わず聞きなさいよ。召喚士が不遇な理由は4つあるわ。1つ目に召喚獣の運ゲー要素。召喚獣はレアリティによって決まる。そのためレアリティが低いのが出た場合は引き直しも出来ないし最悪ってわけ」


 運ゲーか。俺は初っ端でエリーを召喚したし、その後もスピカとナイトを召喚して運が良かった。

 エリーは俯きながら俺のローブの左肩の部分を掴む。ガーウィの話を止めないって事は、もしかしたら俺に聞いてほしいって事なのか…?


「2個目は信頼度。たとえ強い召喚獣を召喚したとしても信頼度が低いと言うことを聞かない。それに信頼度はレアリティが高くて強い召喚獣ほど信頼度は上げ辛いのよ」


 信頼度か。信頼度も召喚した時からスピカは最初から信頼度高かったな。それにナイトも頭撫でたら上がったし別に信頼度で困った事もないな。


「最後の3個目は効率が悪い。召喚獣の信頼度を上げたり弱い召喚獣で我慢しながら戦闘してゲームをクリアするには膨大な時間と労力が必要なのよ。この効率の悪さを考えると攻略にも向いていないってこと。どう?最悪な職業でしょ?それに4つ目のMPの消費…」

「フッ、もういい!何が不遇職だ!俺には全く関係ない話だったようだぜ!」


 思わず笑ってしまう。本当に…本当に俺は運が良かったようだ。不遇な要素を全ていつの間にかクリアしていたんだから。


「フンッ。全く、面白くないガキね」


『バトル開始まで20秒前』


 運命を決めるPvPの開始のカウントが始まった。


「エリー、勝つぞ!勝って明日からも俺たちは冒険するんだ!」

「うん…!私も覚悟を決めた!絶対に勝とう!」


『10秒前』


「エリー、アイツの情報で何か分かったら教えてくれ。勝つ要因を見つけるんだ!」

「きっと見つけてみせるよ!」


『2…1…バトル開始!』


「スキル『投擲!』」


 ガーウィが開始と同時に何かを投げると俺の右肩に痛みが走る。


「くっ!!」


 頭の中で『ピポーン』と音が鳴る。


「大丈夫!マリー?!」


 右肩を見ると尖った何かが刺さっていた。引き抜いて見てみると15センチほどの大きさの鉄で作られて先が尖った両刃の刃物の様な物だった。肩からキラキラとしたエフェクトが出ているがHPもそこまで減っていない。


「これは…?忍者が使っていた武器だったか?確か…クナイだったか?」

「正解…これは『飛苦無(とびくない)』よ。それにしても運が良いわね。毒属性の飛苦無を当てたのに毒状態にならないなんて」


 笑いながら左手に先程投げたものと同じ飛苦無を持っている。あの『ピポーン』って音は毒になる確率に勝った音だったのか。


「いきなりやられたぜ…スピカ!この中で1番のスピードを持つお前の力見せてやれ!」

「キュイキュイ!」


 スピカがガーウィに向かって走って行く。


「ふーん、AGI600か」

「…まさか」

「エリー?」


 カキンッとスピカの角とガーウィの飛苦無が衝突する。

 ナイトも戦わせたいが、俺の護衛をしてほしいため不用意に戦闘に出せれない。

 スピカとガーウィの戦闘を見れば、スピカが角で攻撃するのをガーウィが飛苦無で防ぎ、ガーウィの飛苦無の攻撃をスピカがギリギリで避ける。戦いは均衡していた。あのハイオークを圧倒していたスピカのAGI(素早さ)とほぼ互角とは…。


「なかなかやるわね!ウサギちゃん。でも私の方が上みたいね!」

「なに?」

「アビリティ発動!『俊速!』」

「キュ?!」


 スピカと戦っていたガーウィが消えた?!


「キュイーー!!」


 一瞬のうちにスピカが傷だらけになり、ガーウィが離れた場所に現れる。


「どうなってるんだ!一体何が起こったんだ?!」

「今のは『暗殺者』のアビリティ『俊速』だよ!」


 エリーが焦った顔で言う。


「どんなアビリティなんだ?」

「『俊速』は3秒間自分のAGI(素早さ)を3倍にするアビリティよ。使った後3分間は使用できなくなるけどね」

「大体分かったよ。ガーウィのセリフと今のアビリティ…もしかしたら勝てるかも」


 エリーは嬉しそうに話し始め、ガーウィはエリーを腹立たしそうに睨みつける。


「ガーウィのメインジョブはスピードを重視した『暗殺者』でサブジョブはプレイヤーやモンスターのステータスを見る事ができる『鑑定士』だよ」

「ッチ…面白い話ね、妖精さん。お嬢ちゃん。一旦戦いを止めて、その妖精さんの推理を聞かせてもらいましょうか?」


 ガーウィは攻撃の手を止め提案する。

 一時的にスピカとガーウィの戦いが止まり、エリーは続けて話す。


「ガーウィの『暗殺者』だっていう理由は簡単だよ。アビリティが暗殺者のアビリティだったから、サブジョブの『鑑定士』だっていう理由はスピカと戦う前に『AGI600か』って言ったの、この数字を知るにはステータスを見るしかない。ステータスを見る事が出来るのは『鑑定士』だけ」

「フフフ、よく分かったわね。だからなんだって言うの?」


 凄い…!さすがエリーだ!ジョブが分かればどんな攻撃が来るのか分かる。勝利に近づいた気がする。


「他にも分かった事があるよ。あなたのEX(エクストラ)スキル『投擲の心得』もね。『決闘の手袋』は【低確率で当たる手袋がプレイヤーに当たった場合、当たった相手と強制的にPvPをすることが出来る】効果。あなたの暗殺者のジョブのおかげで投擲の当たる確率を上げたところで当たるとは思えない。つまり…」

「チッ…」


 ガーウィの表情が変わる。


「投擲の心得は、『投擲したものを止まっている対象に対して高確率で当てる事が出来る』EX(エクストラ)スキル。だから私たちに道を譲った後、動きを止めてから投げたんでしょ?なら今から私達が動いていれば投擲で投げた飛苦無も当たり辛くなる。それに、あなたの加護は …」

「『俊速』発動!スキル『投擲!』」


 エリーが話している途中、ガーウィが突然スキルを使う。何をしたのか分からず、自分の体を確認するが何も刺さっていない。


「なんだ?」


 自分の側でドサッと何かが地面に落ちた音がする。


「え…」


 音の正体を見て頭が真っ白になる。エリーのお腹にクナイが刺さり地面に倒れていた。


「エリー…!!おい!しっかりしろ!」

「人のジョブやスキルをベラベラと喋りやがって!召喚獣ごときがウザいんだよ!」

「自分で戦闘を止めたくせに、不意打ちをするなんて…!」


 ガーウィを睨んだあと、両膝を付いて倒れているエリーを両手で掬い上げる。

  急いで刺さっているクナイを引き抜く。


「うう…」


 手の中にいるエリーの頭上には今まで見えなかったHPバーがゆっくりと減ってきている


「ごめんね…マリー。召喚士が不遇職だって黙ってて…」

「そんな事いいから回復薬だ!」


 持ち物から『上回復薬』を取り出し飲まそうとするがアイテムボックスから回復薬が取り出せない。


「キャハハハ!残念だったわね!このPvPでは回復薬が使えないルールになってるのよ!」

「…クソ!!」

「マリー…最後に私の話を聞いて…」

「最後って…」


 そうか。このPvPにもしも負けたら、エリーに会うのもこれが最後…!


「私…マリーに召喚してもらって本当に楽しかった…だから意地悪かも知れないけど…不遇職って教えたら召喚士からジョブを変えちゃう気がして黙ってたの…」

「バカだな。もし教えてもらってても変えたりしなかったよ」


 エリーのHPが半分まで減る。


「そっか…だったら最初から教えておけば良かった…。私…マリーと少しだけど冒険できて楽しかった。マリーの召喚獣で良かった…。相棒って言ってもらえて嬉しかったよ…」

「大丈夫だ…!俺があいつに勝って絶対に…ううっ」


 心の何処かで負けた時の事を考えている自分がいる。これで最後になってしまうと思うと涙が出てくる。

 エリーのHPが3分の1となり、エリーの体が徐々に光の粒子になっていく。


「ふふ、マリーって泣くと顔が不細工になるんだね…」

「っ!急になんだよ…」


 こんな時でもふざけたことを言うエリーの顔を見ると目の端から涙が流れていた。自分も悲しいくせに泣いてる俺を笑わそうとしてくれたのか…。

 俺は今まで考えていた負けた時の事を考えるのをやめた。袖で涙を拭い、笑いながらエリーに言う。


「安心しろ…相棒!次にお前を召喚した時に俺がアイツにどうやって勝ったか、武勇伝を教えてやるよ!だから少しの間待ってろ!」

「うん…!私…待ってるから…!約束だよ!」


 エリーは笑顔で光の粒子となり、俺の手の中から消えてしまった。

 拳を強く握りしめ、心の中で絶対に勝つ事をエリーに約束し立ち上がる。

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