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儚い存在

 カーテンの隙間から、朝日が差し込んでいる。

 チュンチュンと鳴く鳥。

 やかましくなる目覚まし時計。


「ん……」

 桜は意識しないまま手を伸ばし、アラームを止めた。

 目を開けたその先には、ショウの寝顔があった。


「はぁ⁉︎ ええぇっ⁉︎」

 掛け布団を跳ね除ける。

「え? なんでショウがここに⁉︎」


 ショウが目を覚ます気配はない。

 小さく丸まり、横向きになり眠っている。

 その寝顔を見るうちに、昨夜の出来事を思い出す。


「あ、そういえば……。夢じゃなかったんだ」

 夢だった方が何倍も良かった。

 しかし目の前には、ショウの姿をしたダストがいる。

 しっかりと現実のようだ。


「きれいな寝顔……」

 桜はダストの寝顔を見つめた。

 長いまつ毛、高い鼻、透き通った肌。


「もっと焼けているイメージだったけどな」

 透明感溢れる肌は血の気がなく青白かった。

「つるつるだ」

 男性だというのに髭の一本も生えていない。

 桜は思わず頬に向かって手を伸ばした。


「冷たっ!」

 氷のような肌に桜は驚いた。

「ちょっと、大丈夫⁉︎」

 ダストの体に手を当てる。

 冷え切っている。


 桜は先ほどまで自分が使っていた掛け布団をダストにかけた。


 暖かくなってきたとはいえ季節は春だ。

 朝晩はまだ冷え込む。

 なんだかよくわからない存在だから、勝手に大丈夫だと思ってしまった。


「寒かった? ごめん、ごめんね」

 桜は冬用の布団を使っているのでTシャツでも問題ない。

 しかし羽織るもの一枚もない状態では寒かったのだろう。


 桜は掛け布団の上からダストの体をさすった。

 するとダストが薄目を開けた。


「問題ない」

「問題なくないよ! こんなに冷たくなって」

 桜は懸命にダストの体をさすった。


「寒いのではない」

「じゃあどうしてこんなに冷たいの?」

「わからない。体に力が入らない。昨夜はこんなことなかった」


「力が入らないの? どこか故障してるの? それだとロボットか。どうしたらいいのかな」

 泣きそうになりながら、ダストの体をさすり続ける。


「わからない。元々塵のような存在だ。塵に戻るだけだろう」

「そんな……」

 そんなに儚い存在なら、もっと優しくすれば良かった。

 そう思い、桜は後悔した。


「消えないで。私、あなたに助けて貰ったのに、まだなにも恩返しできていないわ」

 ダストに覆い被さるように抱きつく。

 すると、きゅるきゅるという音が聞こえた。


「ん?」

 桜は身を起こした。

 少し考え、改めてダストの上に覆い被さる。


 きゅるきゅる ぐぐぐ ぐーっ


 桜はゆっくりと体を起こした。

 横たわるダストの顔は儚く美しかった。


「ねぇ、もしかして、お腹が空いているだけじゃないの?」

「わからない。それはどういう状態だ」

「どうしてそんな簡単なことがわからないのよ!」

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