表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/62

理想の顔

 翌日、眠い頭を振り切って、桜はなんとか身を起こした。


「う〜眠い」

「おはよう」

 ラグの上にダストが座っている。


「起きてたの」

「あぁ」

 ダストはなんだか嬉しそうだ。


「また冷たくなってない?」

「平気だ」

 昨日のように冷たくなっては困るが、布団は一組しかない。

 ラグが敷いてあるので下はいいとして、あとは夏用のタオルケットしかなかった。


 仕方がないのでタオルケットの上にバスタオルを何枚か重ねてみた。

 顔色はいいので寒くなかったようだ。


「元気そうね」

「桜は元気ないのか? 顔色が悪い」

 目の下にクマができている。 


「ん〜、大丈夫。ただの寝不足」

 好みの顔を作れることに興奮し、昨夜は調子に乗り過ぎた。


 しかしそのおかげで、ダストの顔は、ショウの面影を残しつつも、完璧に桜好みの顔に仕上がった。


 くっきりとした二重瞼。

 高く通った鼻筋に、大きな口。

 南国系の濃い顔だ。

 男性らしい顔立ちだが、垂れた目元が甘い。


 明るい日の下で見ても、その仕上がりは完璧だ。


「顔洗ってくる」

 制服一式を持ち、ミニキッチンに立つ。

 この家に洗面台などないので、洗顔もここでする。

 制服に着替え部屋に戻る。


「朝ご飯、どれ食べようかな」

 桜は山盛りになった料理を見た。


 料理は空間ごと凍結してあるとかで、カチンコチンになっている。

 広げておくと邪魔なので、部屋の隅に積み重ねている。


「ピラフにしよっと。ダストも同じでいい?」

「ああ」

「んじゃよろしく」


 ダストの手が淡く光り、ピラフから湯気が出る。


「いただきまーす」

 向かい合わせに座り、小皿に取り分ける。

 食べると、自分が作ったものと同じ味がした。

 また母の味がするかと期待していたので、少し残念だった。


「今日も行ってはいけないのか?」

「なにが?」

「学校だ」

「ダメに決まってるじゃない」

「服装のことなら問題ないぞ」


 そう言って、ダストが光る。

 桜の通う高校の男子用の制服へと変わる。


「それも遺伝子の情報?」

「そうだ。これで問題ないはずだ」

「あるある。大ありよ」

「何がだ?」


「だって、他の人はダストのこと知らないのよ? 突然来たらびっくりするわ」

「それも問題ない。記憶の操作ならできることが昨日証明された」


「それでもダメよ。だって学校にいるのは、ひとりやふたりじゃないのよ? 生徒だけでも何百人もいるわ。先生だっている。すれ違う人とどんな関わりをもつことになるかわからない。すれ違う人全ての記憶を操作するつもり?」


「必要ならば」

「だめだめ。リスクが高すぎるわ。家にいて。今日はバイトないし、早く帰ってくるから」


 ダストは不服そうな顔をした。

「それより、食べないの?」

「食べるよ」

 ダストが口に入れたのを見て、桜もピラフをかっこむ。


「ごちそうさまっ! じゃあ行くね。お皿よろしく」

 流しに皿を置き、桜は家を出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ