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【完結】純白の抒情詩《リューリカ》  作者: 黒井ここあ
あとがき(2018)

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41/41

デジタル版あとがき

『純白の抒情詩〈リューリカ〉』上下巻を自費出版・発売したのは二〇一六年九月のことでした。

 この物語は、わたしがはじめて打ったピリオド、すなわち、『わたしのはじまり』でした。

 同人誌製作の経験がおありの方ならばご存知の通り、ページ数イコール費用となるなかで、文庫サイズというのは割に合わないサイズです。

 本よりも情報量の多いゲームや漫画が溢れかえり読書家が年々減りつつある昨今にもかかわらず、友人各位のご支援もあり、ものの数か月で在庫がはけてゆきました。

 とてもありがたいことです。

 ですが、在庫のリスクが高すぎて重版はできませんでした。

 このような形で再び世の中に出せて、新しい出会いがあって、とても嬉しく思います。これをきっかけに、黒井ここあの活動、ならびに既刊と新刊に興味を持ってもらえたら、と願ってやみません。

『リューリカ』の執筆、完結で、わたしは本当にたくさんのリスタートをしました。

 筆をおき、しばらく書き進められなかった箇所が『君に春をみた』です。

 アルフレッドは走りたがっているのに、わたしは手をこまねいてみているだけでした。

 当時のわたしは、たくさんの分岐から正しいものを選び取る力を持っていなかったのです。

 ですから、わたしが書き始めて終えるまで、リュリとアルフレッドは出会えずにずっとすれ違い、アルフレッドとリチャードは不幸な行き違いを治せないまま、ロゼとルロイも始まらない朝に立っていました。

 ジークフリートも悲しみの中で独りぼっち。

 それをやっと、明るい未来へ導いてあげられ、義理を果たせたことは、何にも代えがたい経験でした。

 一波乱乗り越えてやっと、登場人物それぞれの人生の展望が見えるのです。

 だからこそ、読者から登場人物のこれからについて、広がりのある感想をもらえたのだと思います。

 あなたからの「これからの物語」も、ぜひ聞かせてくださいね。


 さて、このピリオドとリスタートをきっかけに『探偵王子とフォルトゥーネ(二〇一七)』、『魔女の煌めき屋(二〇一七)』(いずれも自費出版)と続き、物語を書くことについて学んでまいりました。

 ピリオドの数だけ、わたしは前に、未来に進んできました。

 だって、日付を見て驚くんですもの。わたしが留学していた日々はすでに遠く、帰国後に発表した作品からずうっと追いかけてくださっているファンの方とはすでに三、四年のお付き合いなのです!

 現在は少年王が国を取り戻す王道ファンタジイ『黒獅子物語(旧二〇一四・新二〇一八)』全七巻の刊行に向けて執筆をつづけております。

 この秋には第二巻を刊行予定。

 以降、春と秋に一冊ずつ出せるようにスケジュールを組んでいます。

 そう、コミティア狙いです。

 ですので今後三年はこちらにかかりきりとなります。

 もしかしてご期待いただいているかもしれない新連載の見込みは薄いです。

 ごめんなさい。

 たくさん、書きたいお話があるのですけれども。

 人間の兄とエルフの妹のおはなしとか、ケモミミSFとか、専門性を生かしたジョングルールのおはなしだとか。

 いつかどこかでお目にかかる日が来るとよいのですが。

 また、わたしの本業が音楽家であることをあとがきにてお話ししましたが、今年はそちらのほうがリスタートいたします。

 某本屋さんでのミニリサイタルをはじめ、定期的な音楽活動を再開しております。

 嬉しいことに、わたしの本を読む人がわたしの音楽を、逆に音楽を聴く人が本を読みたいと言っていただける機会が増え、戸惑いながらも嬉しく思っています。

 これまでずっと弄んできた長い長いエチュードはおしまいにいたしましょう。

 新しい物語と新しい音楽は、常に未来でわたしたちを待っていてくれるのです。

 終止線のかなたで。


平成三〇年 傘持て、新たなリスタートを前に

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