最終話 これからもずっと
中学校生活を無事に終えたシロは高校の入学式を迎えた。
かつてマキの手によって終わってしまったシロの高校生生活が再び始まろうとしていた・・・のだが。
「二人ともいい加減に起きなさい!!!」
エプロン姿のマキが寝室の扉を開け、大声で叫ぶ。
すると、布団の中からもぞもぞと二人の頭だけが出てきた。
「おはようマキちゃん」
「おはようじゃないわよ!あなた今日入学式でしょ!!」
「まぁまぁそんなに怒らなくても」
「菜々、あんただって仕事あるでしょ!」
「そう言われてもー」
「布団から出られないんですよ〜」
「いいから早く起きなさーい!!!」
布団を取り上げられると、菜々とシロはようやく動き出した。
洗面所に行き、身だしなみを整えた後、用意されている朝食を三人で食べる。
シロが朝食を食べている間にマキはシロの制服と鞄を準備し、洗濯物も外に干し始めた。シロはそんなマキの姿を眺めていると唐突に「お母さん・・・」と言葉を漏らした。すると、マキの動きが一旦止まったかと思ったら急にこちらに振り向いた。
「誰がお母さんよ!!!」
「いや、でもここまでしてくれるとあながちそう言われても仕方ないんじゃ・・・」
「菜々、あんたには言われたくないわよ!!」
「えぇー、なんでさ」
「私と歳はそう変わらないでしょ?だから呼ばれるならあなたも同罪よ」
「でも私家事できないよ?」
「大丈夫よ、そこは私がみっちり教えてあげるから」
「い、いやいやそこまでしなくても大丈夫だから・・・」
「遠慮しなくてもいいわよ?なんなら今からでも」
「あ、あー!私朝から用事あるんだった!もう行かないと、行ってきます!!」
そう言い残し、菜々は足早に家を出て行った。
マキはため息をつきながらも洗濯物の続きを再開した。
シロが朝食を食べ終わり、家を出て行く時、マキが玄関まで見送りに来た。
しかし、マキの顔は何故か涙ぐんでいた。
「ごめんなさい、私のせいで迷惑かけちゃって・・・私があの時理性を抑えられていれば、あなたはもう一度高校生になる必要性なんかなかったのに」
「何、そんなこと気にしてたの?もう別にいいわよ。私はこれから前の人生で楽しめなかった高校三年分の青春を過ごすんだから!だからさ、私が卒業するまで、待っててくれる?」
「・・・いいの?その時にはもう私の歳は」
「いいの、私はどんなに歳が離れててもマキちゃんが好きだから!」
「シロ・・・」
「それじゃあ、いってきます」
「いってらっしゃい、シロ。気をつけてね」
「うん!」
些細なことがきっかけで私は自分の恋人の命を奪ってしまった。
一生償いきれないほどの罪。でも、そんなことを犯してしまった私なのにあの子は私のことを好きでいてくれて、信じてくれて・・・だから私はもう間違いを犯さない。
これからの人生を過ごす上でも自分の罪は一生拭えないだろうけど、私は私なりの償い方で過ごして行くんだ。
今度こそ、自分の愛している人を守り切るために。
これからもずっと一緒だよ、シロ。
最後までお読みいただきありがとうございました!




