第23話 マキの出張
シロを学校まで見送った後、マキは近くに待たせていた車に乗り込んでいた。車の向かう先はマキ達の住むマンションだった。
マンションに着くと一旦車から降り、マンションへ戻って行った。しかしその数分後に再び車の元まで、今度は荷物を持って戻って来ていた。
そして、そのまま何処かへ向かって行った。
そんなことを一切知らないシロはというと、バスの中で静かに本を読んでいた。周りの生徒達は喋ったり、後ろを振り向いたりと、とにかく元気が有り余っていた。
少しくらい静かにして欲しいと思っていた時、不意にシロは隣の子に話題を振られていた。
「ねぇねぇ、シロちゃんって、好きな人とかっている?」
「!?い、いないわよ!」
「その反応、誰か好きな人いるんでしょ〜!」
「いないわよ!」
「大丈夫大丈夫、まだ誰かに知られたわけでもないんだし」
「そ、それはそうだけど・・・」
「で、誰なの?」
「だから!」
「えー・・・じゃああの反応はただ驚いただけ?」
「そうよ、急に反しかけられたらそりゃ驚くわよ」
「えー、つまんないの〜」
「そういうあなたこそ、誰かいないの?」
「私?私はいないよ」
「あら、意外ね」
「私はまだこう、ビビッとくるような出会いしてないからね〜。いつかしてみたいなぁ、運命の出会い」
「そんなのありえないわよ。現実を見なさい」
「ちぇー、夢がないなぁ」
「勝手に言ってなさいよ・・・」
「みなさーん、そろそろ着きますよ〜」
「ま、この話はまた後で」
あの子のせいで本が半分くらいしか読めなかったわ。しかもまさか恋バナを持ちかけられるなんて思ってもなかった・・・
でまかせを並べ続けてたけど、案外騙されてくれたわね。だけどちょっと心臓に悪かったし、次はボロが出ないようにしないと。
そうこう考えている間に、目的地である京都に着いた。バスから降りると、各班の代表者が先頭に立ち、整列する。
そして人数確認を終えると、いよいよ行動開始となった。まず向かうのは金閣寺だ。まさに代表的と言っても過言ではない。
教科書で見ていたものよりも本物は何倍も迫力が凄かった。マキちゃんとも見たかったなぁ。
次に向かうのは龍安寺庭園だ。ここはきっと先生が来たかったんだろうな。
さっきの金閣寺と明らかに生徒達の態度が変わっている。そして先生のテンションも段違いだ。
まぁここは私も大好きな場所ではある。一度、一人で見に来たこともあった。
今はできないけど昔は良く一人旅とかしてたっけ、懐かしいなぁ・・・
先生が心行くまで堪能した後、いよいよ旅館へチェックインしに行く。
一体どんな旅館なんだろう、みんなと楽しく過ごせるかも不安だなぁ。
でも、マキちゃんに送ってもらったんだし頑張らなきゃ!
一人心の中で決心をつけていたシロだったが、ここで思わぬ出会いが訪れてしまった。
それは旅館に入り、先生が書類の確認をしている時のことだった。
先生を待っている間、不意に後ろから声をかけられた。
「あれ、シロじゃん」
「ま、マキちゃん!?」
「私もいるよ〜」
「な、菜々。あなたまで!?」
マキちゃんの着物、結構似合ってる。洋服もいいけど、着物も悪くないなぁ・・・って、違う違う!
ど、どうして二人でここにいるの!?
私何も聞いてないんだけど!?
お読みいただきありがとうございました。




