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エピローグ 桜木さんとマコト

 私、桜木美月は大学卒業後の進路に悩んでいた。高校1年の時に止まった彼との恋愛にまさかの続きがあった。とはいえ、久しぶりに再会した後すぐに北海道に行ってしまった彼とは遠距離恋愛にならざるを得ず、あまり進展しているとはいえない。


 今日は就職活動のため戻って来る彼を空港で待っている。まだ到着まで1時間以上はあるが、どうにももどかしく結局空港まで来てしまった。


 メッセージのやりとりでは毎日のように連絡を取っているが、どうにも上手くいってないらしく、あまり時間を取らせる訳にもいかず、やるせない思いが続いていた。勉強についてはもう殆どの単位は取得済みであり、ゼミに出席しつつ卒論についてだけ頑張ればなんとかなりそうという事らしい。それでも周りの学生や教授との話を合わせるのに苦労が絶えないだとか。


 就職については更に複雑で、あまり手がついてなかったようだ。マコトとしてはとりあえず、公務員試験でも受けるかと気楽に考えている。私からするとあり得ない話で、一生に関わることにもう少し真面目にやって欲しい。という事で先ずはお説教を兼ねて進路相談会をこっちでやる事になった。


 空港にある大きめのカフェで待ち合わせをしているが、平日の昼間だからだろうか空いている。こうやって時間に余裕があるのも学生時代の特権だろう。もう少しこのモラトリアムを引き延ばすつもりで大学院か留学を考えていたが、彼が帰って来て少し悩み出していた。別に彼がどうしようと自分の事は自分で決めると当然のように考えていたが、心が揺らいでいる。一生彼といると決まったわけではないし、今は女性だからって生涯生計を立てる事を考えるのは普通だ。実際は実家に頼ればどうにでもなりそうだが、自由に生きる為にも自分で考えたい。ただそこにマコトの意見も聞いてみたい。彼に重いと思われ、引かれるかもしれない。そう考えてしまうと、また悩んでしまうのだ。




 到着時刻が近づいてきた。彼に会う前に気持ちの整理はつけておきたい。今日は彼の相談にのるのが目的だ。私より彼の方が問題だ。今日だってこの後、離れ離れになった、あの観覧車に乗ろうと言っていた。あそこからもう一度やり直したいらしい。……もちろんそれはいいのだけども……

 

 飛行機の到着のアナウンスが流れている。私は待ち合わせの場所だったカフェの精算を済ませ、到着ロビーに向かう。まるで一秒でも早く逢いたいみたいで、バカにされたらどうしようと、一瞬思ったが脚は止まらない。


 別にそんなことどうでもいい。


 そうだ。


 就職だって、留学だって、将来だってどうにかなる。あの苦しかった二度と会えない状態ではないのだ。時間だってある。幸せは決まりきったものからよりも、自分達で本気で迷いながらも辿り着いた先により大きなものがあると今は信じている。



 彼の姿を見つけた。あっちも私の事を見つけて喜んでいるようだ。走り出して来た。……全く。別にここから逃げたりしないのに。


 ああ、なんてだらしのない笑顔でこっちへ来るのだろう。手を振って向かって来る。いろいろ考えたが最初に何て言うかはだけは決まっている。そのあとは流れに任せよう。


 ――待ちくたびれたわ!


 ……でも、おかえりなさい。

エピローグは残り二つです。

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