終章 6節 ファンタジー
ミツキさんは自分の分かる範囲でこれまでの経緯を説明してくれた。
「私達が二人の前から最後に消えてしまった瞬間、私達は別の場所に移動していたの。金属で――後でわかったのだけど銀で――出来た大きな屋敷。その一室にいたの。魔法陣のようなものが足元に描かれていたわ。そして目の前にはマコトがいた。」
「ああ、そうだったね。」
マコトが肯定する。ミツキさんは話を続ける。
「結論から言うと、私とマコトはある意味予定通りこちらから向こうに飛ばされたの。最初に、たまたまマコトが選ばれて作られた後、その恋人ということで私が次に選ばれたの。そして同じように作られて、飛ばされた……」
「……作られた?……どういうこと?あと、向こうってどこなんだ?!」
間に口を挟まないで聞いて欲しいと言われていたが、どうにも理解が追いつかない。僕は口を挟んでしまった。
「……私達の知らない技術で、それが出来るところよ。今、固有名詞を並べたところでちんぷんかんぷんだから、あまりそこには拘らないで?後で説明するから。まぁ分かりやすく言うと魔法と異世界と思えばいい。」
ミツキさんは、私も同じだったと話す。
「まるでファンタジーの世界だね。」
僕が最初に感じたのはそんな言葉だった。
「まぁね。……ただこれらには法則がある。だから、あまり、そういう言い方をしたくないの。話を続けるためにいったんそれでいいから、今は軽く考えていて。二人とも生きているし、また会えたんだから。ね?」
僕と桜木さんは頷き、ミツキさんの話を聞く。
「で、ここに出入りしていた二人についても調査していたなら知ってると思うけど、――だってここに来ているものね――あの二人の片方の女性が異世界人でもう一人の男性は、なんと私達みたいな二重存在の第1号なの。で、もともと同じようにこちらから向こうに呼ばれた人が自分と同じ彼を作ったの。そしてその人は向こうの世界で暮らしている。その人は偶然、奇跡的に呼ばれたみたい――」
「――ちょっと待って……頭が追いつかない。なんで、そんな人を簡単に作ろうとしたり、作れるんだ?倫理的、技術的にもおかしくない?」
今度は桜木さんが口を挟む。
「うーん、そうなんだけど。最初は偶然だったみたいだし、必要なのは確かなの。クローンみたいにバカスカ増やせる訳でもないし。とにかく、もともとは偶然の産物だったから、向こうからこっちに戻ってくる時は一人で帰ってきたの、混乱の元だし。他にも用事があったみたいだけど。……やっぱり難しいわね、説明。」
「俺からも補足するとさ、その異世界でやばい戦争みたいな事が起きてるんだ。で、こちらから異世界に行った人が勇者みたいになってる。で、ここからが俺たちの話だが、彼らは戦力として、こちらの世界の人間を連れて行こうとした。けど、友達もいない人だったらしく、適当に俺が選ばれた。二重存在にしたのも当人や周りに迷惑かけないようにするつもりだったみたいだ。そんでしばらくしてから、一人は可哀想だし、彼女も連れて行こうと言う話になって、ミツキが選ばれたんだよ。……まあ実際は思惑通りにはなってないがな。まさかお互いが逆の方の恋人になるなんてな……」
「なんで説明しないんだよ?急にいなくなったりするのも最悪だろ。」
僕はマコトに食ってかかった。
「知ってると思うが、俺たちもこっちにいる時は分からなかったんだよ。それにこっちに戻って来たのも数日前だ。すぐに説明しに会いに行く予定だった。話をするつもりだったんだよ!……話をまとめてから、どういう風に話しをするかちゃんと決めてから行動する予定だったんだ!だけど、そこのミツキさんがこっちに着いた途端に会いに行っちまった……」
ミツキさんは顔を赤らめて下を見ている。どうやら何も言い返せないらしい。
「とりあえず、だいたいはわかったけど、これからどうするの?何のために戻って来たの?何でこんなに何年もかかったの?私はそれが知りたいわ。」
桜木さんはとうとう怒り出した。話は理解出来ていても感情は抑えきれない。
「それは明確なの。私から話すわ。」
ミツキさんが凛として答え始めた。




