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8章 6節 再会

 僕とハルちゃんは大型のスーパーに食材を買いにきた。ハルちゃんはよくここに来ているらしく、手際よくカートや籠をセットして迷う事なくズンズンと進んでいく。


 「ハルちゃん、今日は何作るの?」


 「まぁまぁ、この子ったら、意地汚い事。普通のカレーよ。」


 ハルちゃんは、(まぁまぁ)と話し始めるよくわからないお母さんキャラクターになっていたので、適当に、「ママこれ買って!」とか適当に合わせていたが、周りの目線が痛くなって来たので、この遊びは辞めることにした。ハルちゃんは他にも自然にごっこ遊びを唐突に始める事があるから、油断は禁物だ。


 このお母さんと、妹、お姉さん、お医者さん、辺りは見たことがある。




 「はい、ここが我が家です。靴を脱いで上がってください。ズボンは脱いではいけませんよ。」


 スーパーを出た後、割とすぐに彼女の家に着いた。小さめのマンションだが、まだ新しく、防犯もしっかりしているようだ。


 僕はハルちゃんのへんなボケは無視して、家に上がった。1DKの奥の部屋はドアが閉まっており、開けてみようかと思って近づいた途端、ハルちゃんの激しい抵抗を受けた。


 「ここは寝室だから、寝る人だけー」


 「いや、ちょっと疲れたから寝ようかなーって」


 「――ダメです。お帰りはあちら……」


 「わかったわかった。冗談だよ。」



 僕はハルちゃんが料理をしている間、手持ち無沙汰だったから、ついキョロキョロしていたが、そんな僕に不安を感じたのか、手渡されたハルちゃんの特選アニメを観ながら料理の完成を待つ事になった。第3話

にしてかなり衝撃の展開で続きが気になる。後で続きを貸して貰おう。


 「はい、出来たわよー、お腹ぺこぺこでちたねー」


 もうそのキャラいいから、と言おうとしたが、カレーの匂いがして、どうでもよくなった。確かにお腹ぺこぺこだ。


 「「いただきます!」」


 僕はがっついてカレーを頬張ると、予想以上に辛い。スパイスももうなんだかわからないぐらい効いていたが、癖になる味だった。身体が熱くなってくる。何より美味い。やはりカレーは奥深い。


 「良かったね。」


 ハルちゃんは、嬉しそうにカレーを一緒に食べていた。彼女の得意料理なのか、料理自体が上手なのかはわからないが、また食べたい味だった。女性に胃袋を掴まれるとはこういう事だろうかと、少しわかったような気がする。



 カレーのおかわりをしたり、デザートのアイスを食べたりしている時にハルちゃんと今度はどこに行こうかと話しは盛り上がった。次は特製ナポリタンを食べさせてくれるらしい。楽しみが出来て良かった。



 食事の後、ハルちゃん特選アニメの布教活動と宿題ビデオを持たされ、僕は帰る事になった。元々続きが気になって借りようと思っていたから丁度良い。


 まだ早い時間だし食後の運動をしたいからと、途中まで一緒に帰る事になった。



 ハルちゃんは、もう少し、もう少しと言いながら、結局僕の家まで一緒について来た。僕らは下らない冗談を話しながら歩いて来たが、うちの前に着いた時二人とも、言葉と笑顔を失った。



 僕の家の玄関前に、桜木美月がポツンと立っていたからだ――


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