8章 4節 卒業したら
朝、目が覚めると、僕の横にハルちゃんが寝ていた。そういえば昨晩は先に寝てしまったんだった。ハルちゃんは良く寝ている。起こさないように静かに布団から這い出た後、着替えて外に出る。朝飯でも買ってこよう。
「おかえりー」
コンビニから戻ってきたら、ハルちゃんは起きていた。サンドイッチと飲み物を渡し、二人で遅い朝飯にする。
「そういえば、マコちんは大学卒業した後はどうするの?院とかいく?」
「いや、戻って就職するつもり。……ハルちゃんは?院目指してるの?」
僕は大学院に行く予定はない。ハルちゃんは少し残念そうにしたので、気になって聞き返す。
「ううん、行かないけど。じゃあ、こっちにいる時間もそんな無いなーと思って。……どんな仕事するの?」
「地方公務員試験を受ける予定だよ。……そういえば、そろそろ勉強しないとなぁ……」
「じゃあ、地元のY市?」
「ああ、Y市もいいけど、多分隣のK市を受けるつもり、多分。……ちょっと思うところがあってね。」
「ふーん、公務員かあ。何か意外だなぁ……もったいないというか何というか。私が一浪してまで入ったからかな……」
「いや、親にも同じようなこと言われたよ。でもやりたい仕事も、行ってみたい会社も業界もないんだよ。寧ろ公務員になったら、やってみたい事はあるんだけどね。」
「えっ、どんな事?福祉とか?」
「いや、えーっと、……街づくりみたい事かな。再開発とかね。まぁ、まだ詳しく説明できるほどまとまって無いから、今度話すよ。」
「……そっか、……わかった。」
今日のハルちゃんは、真剣な表情をしている。まあ、大学3年にもなっていて、まだこんな感じでは心配にもなるか。
「ハルちゃんはまだまだ時間があるから、いいね。羨ましいよ。」
「そんな事無い――もうすぐだよ!……あっ、ごめんなさい。なんか急に……私、何言ってるんだろ……」
僕はハルちゃんの勢いにたじろいだ。やっぱり今日のハルちゃんはいつもと違う気がする。
「――私、帰るね。朝ごはんありがとう。」
ハルちゃんは、そういうと走りさるように帰ってしまった。――僕は彼女を追いかけて駅まで送っていった。彼女は口を開いたのは、駅に着いた後だった。
「ありがとう、送ってくれて。……帰ったら、連絡するね。」
僕が彼女から連絡を貰ったのは、その日の夜遅くだった。その間に何があったかはわからないが、彼女からのメッセージには、デートの予定が書いてあった。
文章やスタンプが、いつものハルちゃんの感じだったので、僕は普通に返事をして特に彼女に何かあったのか敢えて聞かなかった。
――僕はこの時もっと彼女気持ちを考えるべきだったと、後で後悔することになる。




