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8章 3節 白い恋人

 僕はアニメの脚本を読んだ事はないがとても短い話で直ぐに読み終わった。アニメは好きだったから、わかるがおそらく5分から長くて10分といったところだろう。


 簡単にまとめるとこんな話だ――


 事故で家族を失い記憶も失った主人公は、単身雪国に引っ越してきた。


 主人公は働くだけで精一杯の生活を何年も続けていて、寂しくて仕方がない。そこで雪で人型の女性を作って、寂しさを紛らわしていた。


 ある夜、ドアをノックする音がするので開けてみると、肌は透き通るように白く、輝くような銀髪の美しい女性が立っていた。彼女は何故自分がここにいるかも分からないし、自分が誰かすら分からないという。主人公は、自分も記憶失った事あったもあり、心細く不安な心情は痛い程わかる。彼女を進んで家に泊めてあげた。


 二人はしばらく一緒にいるうちに恋人同士になっていた。二人の相性は素晴らしく良く、仲睦まじく幸せな日々を送っていた。


 春も近付いてきたある晩の事、二人の家をノックする音がする。扉を開けると、家の前に立っていたのは生き別れになった主人公の記憶をなくす前の恋人で、やっとここにたどり着いたらしい。主人公は戸惑うものの、今の自分には恋人がいる事を正直に伝えて、彼女を紹介しようとしたが、部屋から忽然と消えていた。


(さようなら、ありがとう。)


 と書き置きだけをを残して。


 急いで玄関の外に出ると雪は溶けて、もう外は春になっていた。その瞬間、昔の記憶を思い出す。


 外はとても綺麗な景色が広がっていた。主人公は今やって来た彼女に声をかけた。――思い出した彼女の名前で。


 ――だいたいこんな話だ。


 …………


 僕は本を閉じてテーブルに戻ろうとした時、突然手首を掴まれた。


 「ハルちゃん、起きちゃった?ごめんね。」


 「……感想ききたい――どうだった?」


 「うーん、映像観ないとわからないけど、悲しいお話?」


  ハルちゃんは急に起き上がり、全然わかってないと、身振り手振りで全力に表現しながら、


 「これは、ハッピーエンドなの!分からないかな、 二人の気持ち。」


 ハルちゃんはすっかりお説教モードで、夜更けまで話の設定やら、二人の気持ちの推移や結末で表現したかったことを説明してくれた。一応理解したと思うが、どう表現したらそう視聴者に感じさせることができるか、甚だ疑問だったが、睡眠時間が無くなりそうなのと、いつか現物を見せて貰ったらまた話す約束をした後、僕は眠気に勝てずに寝てしまった。


 だんだんと朧げになるハルちゃんの声を聞いていると、何故だか僕はぐっすりと眠れる気がしている。

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