1章 6節 変化の兆し まこと
マコトは学校の成績も、陸上のタイムもどんどん伸びていった。そんなマコトの周りのクラスメイトもマコトに対して好意的だった。いろいろな事が上手く行くから今やることに集中できるし、頑張れる。頑張ると、結果がでる。好循環だ。今までもサボってはいなかったが、結果にはあまり結びついてはいなかった。ここにきて、何でも上手くいく。マコトは幸せだった。楽しかった。
マコトが思い切って桜木美月にアドレス交換を申し込む迄にそう時間はかからなかった。その間他の女子に告白されたり、友人を紹介したい、等いろいろあったが、マコトにとってはそれも自分の運気のようなものを確信させる材料になり、好きな人がいるからと、自分を後押しさせる。
結果はあっさりとしていた。アドレスの交換に美月の抵抗は無く、寧ろ恥じらいのような雰囲気を感じられた。ここ何人かの事だが、女子の態度を多少は学んだマコトには、明らかに照れている、好意的な態度と感じとれた。
「桜木さんて、金澤と付き合ってないでしょ?」
マコトは、思い切って聞いた。確信がある。もし金澤と付き合っていたら、興味の無い男子とアドレス交換ぐらいであんな顔はしないだろう。
「―――――、そうね。付き合ってないわ。」
何故か怒ったような、恥ずかしがっているような複雑な顔芸をした後、桜木美月はさらりと答えて、そそくさと立ち去ってしまった。
マコトとしては、アドレス交換と金澤の件が聞けただけで十分だった。これから少しずつアタックしていこうとマコトは思う。同時にもう一人の自分に、最近の唯一のストレスに今晩向き合う事を決めた。