7章 2節 K市
県の北東部に位置するK市は政令指定都市であり、人口も多い街だ。その工業地帯近くのある座標でミツキさんの形跡は途切れている。発信機のログを見ると、突然そこに移動して一回だけデータを発信して以降消えているようだったらしい。
僕と桜木さんはスマホの地図アプリを確認してからこの座標あたりに到着した。地図の記載と違いは無く小さな古い一戸建ての住宅街だった。
最初にこの辺りだと分かった時は、廃工場跡地とか廃ビルとかそんなイメージを勝手に抱いていたが、どうにも普通の民家しかない。
GPSの精度ではこの家とは確定なども出来ず、おおよそこの辺りの10数軒のどれかとしか分からない。
「ざっと不審者扱いされない程度に一回り見て周ってから、近くのファミレスで作戦会議にしましょう。あまり、キョロキョロしないでね――」
桜木さんの指示どおりに、見たポイントは、
1.住人の気配や構成。
2.表札と名前。車やその状態。
3.窓や玄関周り、カーテンの開閉。
という感じで手分けをして注意してみて周った。
ファミレスで日替わりランチを注文した後、お互いに気づいた事などを話し合った。
表札自体ない家も多く、名前等で整理は出来なかった。とりあえず除外出来そうな家は明らかに普通の生活をしている家にした。先ず犬がいるとか、子供がいる家、カーテンが開いていて堂々と生活している家は除外することにした。そうやってみると残った家は僅かに3軒だった。
「正直、最初にこの辺りに来た時は、調査会社に頼むしかないかなと思ったけど、なんとかもう少し調べられそうね。この3軒は、どれも怪しいわ。どの家も中に死体くらいあってもおかしくないわね。」
「……それは少しばかり失礼過ぎだな。まぁ、言いたい事は分かるが。」
確かにこの3軒のどの家も生活感がない。カーテンはしまり、ポストに広告やら何やら溢れていた。車や自転車なども無く、庭の雑草も伸び放題で手入れされた形跡はない。
「で、どうする?僕としては、昼間から侵入とか無茶な事出来ないし、絞れたといっても3軒ある。二軒は隣合わせだから、この二軒ともう一軒を手分けして見張るのはどうだろうか?夕飯ぐらいまでに誰も出て来ないなら、踏み込むのもありかなと思う。」
「案外大胆な事言うのね。それ犯罪だからね?それに居ないのを証明するのは難しいわよ?そもそも時間に無駄が多過ぎね。」
桜木さんは、首を横に振りながら、呆れたように僕の提案を却下した。
「じゃあ、どうするのが良い?何か考えはあるのかい?」
平然とドリンクバーの紅茶を飲んでいる彼女に、僕は少し苛立って言った。
「簡単よ、チャイムを鳴らして、玄関扉を叩いてこういうの、すみません、宅配便です。って。」




