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6章 4節 冬

 ミツキさんはいろいろな曲を聴かせてくれた。初めてピアノに触った時から、今の自分が出来る最高の曲まで順になぞるように弾いている。自分がこれまでに練習してきたものを思い出しながらゆっくりと弾いている。


 片手だけでの演奏、そして両手を使って音を重ねていく。だんだんとタッチが増え、リズムもテンポも変化していく。素人の僕でも音楽が豊かさに溢れていくのがわかる。彼女は微笑しているように見え、楽しそうに弾いている。


 けれど、まるで「もうこれで終わりね。ありがとう。」と言っているかのように、一曲ずつ、「さようなら」と、お別れするような寂しさを感じた。……僕は自分が泣いているのに気づいた。それはピアノの演奏に感動しているのか、彼女の気持ちを勝手に解釈して、そんな彼女と曲のお別れを感じたからだろうか。


 途中から僕でも知っているクラシックも弾いていた。ビバルディだったろうか、「春」から「冬」を続けていく。最後の「冬」はとても印象的で、知らずにあのソファから立ち上がっていた。せき立てられるようなメロディも、それを弾いている彼女の演奏も何もかもが、僕を引き寄せる。


 ……最後の音律が響いた。きっとこれで終わりだ。今までの演奏がここまでたどり着くためだったような、全てが収束した音が鳴り響いた。


 その響きと自分の中で鳴り響いている余韻が終わらない。いつまでも……






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