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6章 2節 学校

 次の日の夕方、ミツキさんから電話がかかってきた。彼女と電話をするのはまだほとんどなかったから、ちょっと楽しい。実家に帰って来たため、彼女と会えず寂しかったところだ。


 「もしもーし。明日、私学校行くから、よろしく!……」


 「もしもし、えっ、えええええっ!!!?」


 僕は予想外の彼女の言葉に、戸惑ってしまったが、考えてみれば、桜木美月と話さえ通しておけば何の問題も無かった。


  「ちょっと、どういう……もしもし? 切っちゃったよ、ミツキさん………まぁ、いいか。」


 彼女の家にピアノを聴きに行く話しになってはいたが、学校に来るとは思ってもいなかった。まぁ、それはそれで楽しみかもしれない。



 朝になり、玄関を出るとそこにミツキさんがいるかもしれないなんて思ったが、もちろんいなかった。ただ、学校で、表側で彼女と会えるのはかなり楽しみだった。



 学校に着くと、ミツキさんはもう教室の中で友達とおしゃべりをしていた。久しぶりにきた学校が楽しいのかもしれない。あまり自分から話さないミツキさんとはちょっと違う感じがした。……まさか桜木美月の方か?と若干不安になったが、あのリボンは彼女に僕があげたものだ。間違いないだろう。ただ、彼氏面して気安く声をかけるのは、憚れた。久しぶりの学校だし、気長に待つか……僕は授業が始まるまで、軽く一眠りしようと机に突っ伏して、目を瞑る。



………………


 「ねえ、もうお昼ですよ?」

 「………昼うっ?…………って、え?やば、寝過ぎた。何で誰も起こさない優しい人ばかりなんだ?午前中無駄にした!くっ……」


 いや、ミツキさんは起こしてくれたじゃないか?

彼女はやはり優しい。僕は、ミツキさんの授業をうける風景を目に焼き付けておくんだと、昨日の夜は寝つきがどうにも悪かったため、寝坊してしまった。

 ――まぁでも声をかけてくれたし、まあ、いっか。


 僕らは、二人で話しをしながらお昼をとることにした。


 「ねぇ……私はいつまでここにいられるかな?」

 

 たった今までは、たわいもない話をしてたはずなのに、急に彼女は僕の触れたくない場所を抉ぐるように話を変えた。


 「マコトの出現時期と消失までは、凡そ半年だ。予兆が出てから1カ月程度の猶予があった。ミツキさんはその三カ月後ぐらいに出現したが、その時間間隔が、そのままスライドして当てはまると仮定した場合、少なくともまだ三カ月程度の猶予があるはずだ。」


 僕の予想というか、事実関係をもとにした推測だった。そう、三カ月。長いようできっとあっという間に過ぎてしまいそうだ。


 せめてその間、桜木美月にお願いして、また一緒に学校に来たいと思う。


 やはり学校は楽しい。だからこそ今はそれを二人で楽しみたかった……


 放課後まで割と一緒にいたが、特に冷やかしてくる人は居なかった。そろそろ帰るかとミツキさんにいうと、


 「何言ってるの?本番はこれからでしょ?」


 ミツキさんは、僕の手を握って駆け出した。確かにそうだ。僕らにはやりたい事が山ほどあった。一分だって無駄にしたらいけないんだ……



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