5章 8節 美月の決心
ひとしきり泣いたあと、美月は小杉真にお願いをした。恥ずかしいとかそんな気持ちはなかった。
「お願い。マコトの代わりに抱きしめて。」
小杉真は、えっ?と一瞬たじろいだが、彼なりに気持ちを察したのか、そっと美月を抱きしめる。言葉にされると驚いたが、彼も頼まれなくてもそうしてあげたいと感じていた。
美月は抱きしめられる身体に温もりを感じつつも、ときめきはなかった。その束の間の安堵感も虚無感に変わっていく……この人とマコトは全くの別人だと改めて気づいた。――バカな事を頼んでしまった。
「ありがとう。……もう、いいわ。」
小杉真から離れ、美月はもう一人の自分の方を向いた。鏡を見ているように似ているが、彼女もまた、全く別の人間だ。今ははっきりと理解している。彼女には、彼女の幸せと選択がある。
――この子もいつか消えてしまうのだろうか。そんな不安でいっぱいのはずだ。自分はなんて無神経だったのだろうか……美月は悔いた。
「せっかくの二人の時間をお邪魔してごめんなさい。……でも二人のおかげで、今日でいろいろ区切りがついたわ。もう遅くなって来たし、帰るね。」
美月の心は久しぶりに平静だった。まだ胸が痛いし、頭のどこかでもう一度マコトに会いたいとか、会える手段が無いか考えている。それは素直に認めよう。その気持ちをただ大事にしたい。
――今は目の前の二人をサポートしよう。
美月はそう決意して、二人のアパートを後にした。




