表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/93

5章 5節 マコトの秘密

 夕方駅前のカフェで、美月は小杉真と待ち合わせをしていた。期末試験前の休みで、陸上部も休みだ。もし美月がここに誘わなかったら、彼から声をかけてきたのだろうか。そんな事を考えていたら、入り口にあるドアのベルが鳴った。小杉真がこちらに来る。


 「ごめん、……待ったかな?」


 小杉真は美月のテーブルに向かい合うように座ってから、声をかけてきた。


 「少しだけ。別にいい。」


 美月はマコトが消えてから、何事にも無気力になってしまった。学校や予備校も惰性でやっている。何をやっても上手くいかない気がして、友達や家族からの誘いも断っているような状態だった。だから、時間なんて気にしてはいない。


 「それよりも、何であなたが学校に来たの?」


 美月が小杉真に聞きたかったのはこの事だった。

――なぜ、マコトがいないのがわかったのか?


 「僕らは以前から、出来る限り自分達の状況や居場所などについて共有するようにしてきた。僕がスマートフォンを買ってからは、チャットアプリで必ず一回は連絡していた。3日前の夜、君とベイエリアに行った後から、連絡が途絶えた。だから、昨日自宅に戻ってみたら、親にこの2日間何処に行っていたのか問い詰められた。……とりあえず、家にそのままいて、学校に来たんだよ。いろいろ勝手が違っていて、遅くなったけどね。」


 ――小杉真は気づいたんだ。そして元の自分の居場所に戻ったということか……美月にもわかってきた。


 「桜木さんに、まず聞きたかったんだけど、君は直接あいつが消えてしまったのを見たのか?」


 ――小杉真が真剣な面持ちで聞いてくる。それはそうだろう。私と会っている時から自宅にいないなら、私がその瞬間を目撃した可能性は高い。


 「そう。私と観覧車に乗っている時に消えてしまった。前兆もなく、跡形もなく、突然に……」


 美月はその時の事を出来る限り説明した。


 小杉真は、言いにくそうに口を開いた。

「前兆はあったんだ。君も知っていたんじゃないか?あの池のほとりであった事を。」


 ――それは敢えて誰にも言わなかった事だ。何故今目の前にいる男が知っている?美月が思った疑問を問いただす前に、小杉真は話を続ける。


 「実はあの時、僕はあのすぐ側の芝生広場にいて、あの瞬間を目撃してたんだ。そして君と同じ行動をした。――マコトに直接聞いたんだ……お前は今日消えなかったか?って。……そしてマコトはそんなこと知らないと答えた。だから、僕と君は、無かった事にしたんだ。見間違えか何かだとね。」


 美月はそれを聞いて驚いたが、それよりも気になる事があった。二人の別の人間に同じ様な事を言われたら、マコトはどう思ったのだろう……


 「マコトは、マコトはもしかして知っていたかもしれない、という事?」


 美月は自分の疑問をぶつける。小杉真は質問される事を待っていたかのように答えを返す。



 「うん。……実はかなり前から、そう考えていたらしい。彼は僕のアパートにあの後来たんだ。君には話さないで欲しいと言われていてね。……この先は、緑虫さんもいた方がいい。彼女も既に知っている。……賢い君の事だから、彼女の気持ちを考えてくれたんだよね?だから、このカフェで話をしてくれた……本当にありがとう。」


 ――美月は、マコトが何を考えていたのか知りたくて、居ても立っても居られなかった。小杉真の手を力強く引き、店を出た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ