4章 13節 会議の後
マコトと美月が帰った後、緑虫さんは疲れた、と言って寝てしまった。今日一日でいろいろなことがあった気がする。あと、緑虫さんのことで少しわかった事がある。僕が思うより、物凄く僕達の事をたくさん考えていたのだ。そしてそれは彼女の不安や希望の裏返しだとも思う。けれど僕はそれに気づいてあげられなかった。
僕は緑虫さんが寝ている間に彼女に対して何か出来る事がないか考えていた。――ご飯も作れないし、マッサージなんてしたら殴られる。髪の毛を切ってあげるなんて出来たらいいがそんな技術はない。――彼女がしたい事は何だろう……
………………
「うーん、よく寝た。やっぱりお昼寝って最高……」
緑虫さんは、バタリとまた寝てしまった。彼女は昼寝なんてしないタイプの人間だったと言っていた。だから、ここで暮らすようになってから、昼寝が趣味のようになっている。本を読む時間が無くなるからとダラダラと長い時間寝たりはしないが、今日は余程疲れだのだろう。
やっぱり夕ご飯の支度は自分がやろう。煮込みうどんなら、自信がある。麺が続いて申し訳ないが、安くて美味しいのは、うどんぐらいだ。その点緑虫さんは、味だけで無く、予算も含めて評価するタイプだから、安く作ればそれはかなり高評価に繋がり易い。ネギと卵はあるので、ササミと油揚げだけ買いに行こう。早速、僕はスーパーに出かけた。
家から帰ると緑虫さんは熱心に何かをノートに書いていた。たまに何か書いているが、聞いても内容は教えてくれない。邪魔をしないようにして、僕はうどんを作り出した。
緑虫さんは、案の定うどんに高評価を付けてくれた。特に小さめだが、餅を入れたのが良かったらしい。餅に気づいたときの、――あっお餅だ。という顔が本当に可愛らしかった。
「緑虫さん、日曜日に三ツ池公園に散歩に行かないかい?芝生広場で昼寝したら気持ちいいかもしれないよ。」
ふと口から出ていた。
「……散歩でお昼寝ね?別にいいけどね。」
緑虫さんは、NOと言える女性だ。嫌ではないだろう。少なくとも僕は楽しみだ。
――この時はあんな事が起きるなんて思いもしなかった。




