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4章 11節 緑虫さんの考え

 話がだいぶ進んで来た事もあり、僕も含めて皆が意見や感想を言うようになった。とはいえ、話の続きを確認したいとまた緑虫さんに視線が集まる。


 「うん、そうね。自分の考えを話し切ってから、ディスカッションした方がいいよね。もうすぐ終わりだから。」

 緑虫さんは、皆と話せて嬉しかったように見える。


 「他にも考えたのは、私立探偵とかフリーのジャーナリスト、大学の研究室……でも彼らではたりない。彼らが裏切った時、言い方を変えると私達の事を切り捨てたとしても彼らにはペナルティがないのよ。私達にとってこの方針はハイリスクハイリターン。上手くいけばいいけど、失敗した場合どうなるかわからない。そもそもこれら第三者をどう納得させる?お金?……お金で始まった縁はお金で終わるわ……人は打算的な生き物だから。」

 緑虫さんの話は理解出来る。その通りだ。だけど、それならこの方針は破綻してないか?無理なのか?他の皆も同じように思っていたが、話の続きを待つ。


 「じゃあ、誰ならこの話を信じて、かつ私達を裏切らない第三者を務められるか?」

僕は、ゴクリと喉を鳴らして彼女の言葉を待つ。


 「……親よ。――私達がこれまで隠してきた。非当事者。ただ彼らなら私達をみれば信じるしかない。自分の子供が双子でない事を一番……ある意味では私達よりも良く知っている。そして切り捨てはしない。まぁこれは絶対じゃないけどね。」

 緑虫さんは苦笑いをする。


 「まず、親を説得して社会的に立場のある人達、しかも、1家族ではない、2家族から別々に当局に相談を持ち込んで貰う。別々にする事で少しでも安易に処理されない、無視出来ない状況にするの。」

 ――確かにお役所は、隠れた被害を見過ごすようなイメージがある。DVや虐待、いじめの自殺など、枚挙にいとまがない。もちろんニュースになる前に大多数の人達が、行政のセーフティネットに救われているのだろうが。


 「ただし、念のため両親達の安全を確保するために、別の保険としての第三者も立てる。弁護士辺りが一番だと思っているわ。」

 ――ここで第三者か。しかも弁護士は良いだろう。彼らも客商売。社会的にしっかりとした人達から糾弾されたくはないだろう。しかも弁護士も別々に雇うことで、それも牽制できる。


 「あと、この作戦なら親の理解も得られて長い目で考えてもお得でしょ?1番身近な人達に嘘をつき続けるのは大変だしね。」

緑虫さんがそこまで考えていた事に驚きを隠せない。


 「……凄いよ、……もうヘラクレスオオカブトムシだよ。キングオブムシだよ……」


 ――僕が褒め称えているにもかかわらず、彼女は僕を渾身の力でヘッドロックする。どうも人前での虫扱いは恥ずかしいようだった……

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