4章 10節 ランチミーティング
――焼きそばと、餃子が湯気をあげてテーブルに出てきた。朝から何も食べずに話しこんでいた僕らは、料理に釘付けになる。
「冷める前に食べよう。食べながら話をする事も出来るでしょう?」
緑虫さんは手際よく、焼きそばと餃子を盛ったお皿と箸を渡していく。――彼女に指示された僕はお茶を出している。最後にお好みで使う辛子マヨネーズと付け合わせのザーサイを提供して完了のようで、彼女も自分の場所に座る。
桜木さんはビックリして何か言いたそうだったが、いただきます、と言われて食事に手を伸ばす。見慣れたメニューかもしれないが、緑虫さんの中華はアツアツで提供されて、しかも美味い。特別なレシピなどはないだろうが、焼き具合や水をしっかりと切ったり、丁寧に作っているからだろう。僕は大好きだ。
僕らは、黙々と食べることに集中してしまったが、緑虫さんは話を再開する。そうだ、話が気になっていたんだっけ。餃子をホクホクと食べながら、彼女に耳を傾ける。
「――えっと、そう、なので私達も表側に立つためには、オープンにしなければいけない訳で、その過程の考えられるリスクやデメリットを回避するようにオープンしていくの。――そう、私達のペースで。」
緑虫さんは、お茶を飲んでから、話を続ける。
「まだ完全な計画がある訳ではないし、あまりあてにされても困るから、最初に言っておくけど、より具体的なアクションは皆んなにも協力して考えて欲しい。公な場所やデータは本人じゃないと入手出来ないかもしれないし。」
「先ず避けたいことは、然るべき機関――総理官邸なのか、厚生労働省なのか、警察なのかは、わからないけど、とりあえず当局と呼ぶわね、――当局に隠密裏に処理される可能性は避けたい。君がいつも言っている人体実験とかね。」
緑虫さんは僕の方を見て優しい目でウインクする。――その眼差しはアイシテルのサインですか?
「実際、検査自体は私は受けた方が良いと思っている。ある意味この状態に不安もあるし。健康が一番!だから、当局に単独で引き渡されないように、私達に協力的な第三者に監視してもらうの。最終的に私達が貰うのは戸籍だけ。大騒ぎになるリスクを考えれば、戸籍を二枚用意するなんて簡単でしょ?」
緑虫さんの言いたい事がだんだんと分かって来た。
「なるほど、その第三者は……そっかマスコミとかになるのかい?」
食事を食べ終わったマコトが最後のザーサイを名残り惜しそうに噛みながら問いかける。
「うーん、それは私も考えたけど、リスクの方が大きいの。権力からの独立とか言っても担当者の欲や、マスコミの性質上最終的には大ごとになるリスクが高いわ。彼らにとってそこまでしないとメリットは無いでしょう?」
緑虫さんは当然それは考えた上で話をしているらしく、マスコミという線はないようだ。
では、どんな考えを彼女は持っているのだろうか?




