4章 9節 二つ目の考え
――手慣れた手つきで中華鍋をカンカン鳴らして料理をしている。今日の緑虫さんは、二品同時に作っているようだ。
「で、次が二つ目。戸籍の問題を真正面から受け止めて、乗り越える。これが出来て戸籍さえあれば、もう普通の生活よ、大学だって就職だって問題ない。まぁ就職に関しては苦労するかもしれないけど、そんな企業や組織はこっちから願い下げという事で。
……つまり、こっちの方針は先程の案と比較して、普通の生活が堂々とできるメリットがある。貴方達の苦労も必然的に減るか無くなるわよね。」
「でも、どうやって?」
桜木美月が口を挟む。彼女が言わなくても、僕かマコトが聞いただろう。緑虫さんが、まぁまぁと手振りで落ちついてと伝えてくる。今料理に集中して話せない?まぁどちらでもよかったが、緑虫さんはすぐに話を続ける。
「……そう!それなんだよねー。……下手に記憶喪失とかそんな感じで難民申請しても、直ぐ日本の警察組織に暴かれてしまうと思う。そうなったらどうなる?」
「現代のドッペルゲンガーか!とか言ってニュースになりそう。最終的には人体実験?」
僕は思った事を話す。
「そう。……あまり良い感じには行かなそう。周りにも大変な迷惑をかける。」
「二つ目の案のポイントはここからなの。つまり、最初から、私達に都合の良い状態で事実を公に持ち込むのよ。」




