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4章 8節 一つ目の考え

 「じゃあ、私の今考える二つ考えは最終的な行動指針とか決定事項でもない。あくまでも例えばということで話のたたき台になればいいと思っているから、そのつもりでいて。……他の考え方もあればいつでも言ってね。ただ、あまり細かい話はしないで、そこまでは考えてないから。いえ、とてもいっぱい考えてきたけど、方針が決まってからにしようと中途半端な事ばかり。」


 「簡単なお昼を作りながら話していくから、意見交換は食べながらしましょう。」

 緑虫さんは今度は台所に立つ。桜木さんが代わりにやるよ?と申し出るが、緑虫さんはやらせて欲しいと断った。――お客さんは座っていて、と言っていた。それを聞いて、なんだか少し嬉しかった。


 「先ず一つ目ね。……これは割と今の延長線上の考え方ね。問題である戸籍については立ち向かわない。現状を受け止めて、問題が起きないように生きる。最初に話したように人として生きるには、衣食住があればいいの。今のような生活はある意味ではその完成形の一つかもしれない。」

 ――これはマコト達には解せないかもしれない。ただ僕には分かる。豊かさはない。ただ何げない一つ一つを大切に出来る生活だ。簡単に手に入るから見過ごしてしまう日常に振り返ると幸せは沢山あった。僕と緑虫さんはそれを知っている。学校生活はその最たるものだろう。


 「で、これを続けるためには、さっきも言ったけど、戸籍にまつわる課題を回避する必要がある。病院やその他のサービスを受けるだけなら、二重存在が問題にならないケースは大抵回避出来る。本人の協力でね。回避出来ないのはマイナンバー制で芋づる式に辿られ問題視される納税や就職ね。子供が出来た場合の出生届けなんかもそう。まぁこれも代理申請だけしてもらえれば何とかなるかもしれないけど……」

 ――緑虫さんは顔を赤らめて話題を変えていく。


 「で、早速極端な例ね。例えば、地方の限界集落、もっと極端な例は無人島ならどう?会社なんてないし、地域のコミュニティに緩やかに所属していれば衣食住の確保に専念できる。多少の金銭を用意すれば農業者としてやっていけるんじゃないかしら。ある程度問題が発生したら転々としていればそのうち住みやすい場所はきっと有ると思う。」


 「それつまらなくないか?基本的人権で保証される必要最低限の文化的生活か?」

 マコトは、不安げに問う。本当に心配しているようだ。


 「それについては、インターネットが使えればコンテンツには事欠かない。それが厳しいなら、せめて電気さえ通っていればアニメのBDやゲームができればOK。オフラインでもやりきれないわ。本当に最悪の最悪、電気すら無いなら本がある。ここのところそんな事を彼からしっかりとしこまれたわ。第一、一人ぼっちじゃないのよ、話だってできるし、自然を散策するなんて楽しみだわ。

 それに、そもそも基本的人権なんて今の私達にないから。」

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