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4章 5節 二人で四人

 「……鏡で毎日自分の顔って見るじゃない?だから、そんな感じかなぁ〜なんて漠然と想像してたんだけど、全然違った……」

 桜木美月は、感心した顔で緑虫さんを観察している。正面から、はたまた真上から、横から、後ろから……あー、ふむふむ、なんてブツブツ言いながら眺めている。緑虫さんも同じ様なもので、相手を観察しては、交代で自分を見ているようだ。


 「思ったより、小さいよね。……あとなんか気持ちが悪い。鏡とかビデオで撮った自分とも違うのよね……。自分が別の意思で動いているのが変。……きっと幽体離脱したらこんな感じよ。」

 「そうそう。そんな感じ。知らない服着てるのが、もう不思議。」

 緑虫さんと桜木美月は同調している。

 ――まぁ、同じ人なんだから、感性はかわらないよな。


 僕ら二人で四人は、初めて顔を合わせた。僕と緑虫さんの狭い部屋に四人が揃った。


 二人の桜木美月は、初めてお互いを見た時の反応は普通の女子高生だった。これは普段の彼女達からは程遠い振る舞いだと僕は思う。ただ悪い気はしなかった。彼女の普通じゃないところが魅力的だとばかり思っていたが、これはこれで新しい発見だった。


 「で、どうする?話す事は幾らでもあるけど、とりあえずの認識合わせというか、方針みたいなものを決めないか?」

 マコトが話を進めてくれた。あいつの言う通り、雑談で一日終わりかねない。それはそれで良いのだが、今日の目的はそれじゃない。


 「それについてなんだけど、桜木さんにも僕とマコトがしているような協力関係を持って欲しいんだ。この間みたいに病院や、些細なことだけどレンタルビデオの会員になる時の本人確認みたいに保険証や学生証を借りたり出来ると助かる。連絡手段はチャットアプリのグループ会話で事前に伝える条件で。」

僕は先ず最優先で困っていることを話した。


 「そんなことは問題ないわ。OK。それよりも二人が同時に親や友達に見つかったり、同時じゃなくてもありえない齟齬が発生しないようにしないといけないと思うのだけど……」

 桜木美月は冷静にリスクを列挙していく。


 「その辺りは、僕とマコトの方でも良く話したから、対策はあるよ。生活拠点や活動範囲、服装や髪型等を気をつければまず問題ない。要は事前の取り決めと、突発時の連絡だね。とりあえずはそれで十分だと思う。」

 桜木美月に現在の緑虫さんの生活をきちんと話しておけば、かち合う事は無いだろう。緑虫さんには普段外出時はマスクをしてもらっている。髪型と服装も全然違うから、マコトでも気づかなかったぐらいだ。

一番の問題は粗野な格好をしても、彼女の外見は男の目を惹くので、じっくり見られてしまうのが課題だ。


緑虫さんには、普段のみすぼらしい格好から、いつか素敵な服を着て、おめかしして出かけて欲しい……


 ……それは蝶のように羽を広げ、自由になって僕のところから飛び去る時なのかもしれない。

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