4章 1節 病気
僕は緑虫さんとの今の生活を気にいっていた。だから将来の事や今の生活を彼女がどう思っているのか、聞くのは怖かった。もしそれがきっかけで変化が起きるのは本意ではない。
しかし、とうとうこの話題に言及しなければならない時が来てしまった。彼女が熱を出してしまったのだ。今回は解熱剤を飲んでも熱が下がらなかった。
「……明日の朝、僕は家に行こうと思う。桜木美月に保険証を借りるんだ。」
僕は彼女に切り出した。病院に行く事になったら、本人に話をするしかない。この生活や緑虫さんの事を桜木美月が知ったらどう思うだろうか。マコトに関しては何とかなる。僕と同じでこの二重存在の事を知っているからだ。
「……とりあえず、……保険証は無しで行くのはだめ?……お、お金ならいつか返すから……」
緑虫さんは、朦朧としながら、そんなことを言ってきた。
「……不安なの。……何もかも。病院の検査も、桜木美月がどう思うのかも、この生活が変わってしまうかもしれない事も!」
――予想外の彼女の言葉に、僕は驚いた。でもそれ以上に、彼女も今の生活を悪く無いと思っていてくれたのが嬉しかった。おかげでこれから言うことが、少しいい出し難くなったと思う。
それでも僕は前に進まなければいけないと思った。彼女の事が大切なら、余計だ。
「大丈夫。マコトは理解して協力してくれる。桜木さんは、実はとても優しい人だと僕はもう知っている。最悪、お金を払えば病院にも行ける。……それに、遅かれ早かれ避けては通れないんだ。」
「……でも不安なの。……私どうなるの?」
彼女は泣き出してしまった。僕には上手く出来るなんて言えないが、絶対に何とかする。いつか僕が彼女を幸せにする。
「――大丈夫。……弱虫さん。」
僕は、子供を寝かしつける母親のように彼女を布団の上からトントンとしてあげる。
強がりじゃない。全力で彼女を守ると誓った。




