3章 12節 ゲームセンター
追加ぶんです。
駅前にある大きなゲームセンターに僕と緑虫さんは来ていた。ゲームセンターが嫌いな以前だったら有り得ないだろう。
メダルゲームやクレーンゲームなどのコーナーを一通り説明しながら奥さんへと進む。この日の客はそれ程多くはなく、どれもじっくりと見て回れたが、緑虫さんがそれ程興味を持ったものはなかった。
予想外な事にメダルゲームについてはかなり厳しい見解で女の子なら喜んでやりそうなマシンにも惹かれない。何かに交換できるならねー、と不満げだ。クレーンゲームの景品も欲しいものがないらしい。
「アーケードゲームのコーナーに行ってみよう。」
僕は少し拍子抜けしつつも、もう少しだけ彼女を連れて回ることにした。
結局のところ対戦ゲームが意外にも一番本気になったようだが、コストパフォーマンスが悪いのが納得いかないらしく今日は撤収することになった。まぁ、無理して付き合わせるのは本意ではない。
散歩がてら駅に行った時にスタンプラリーのポスターが貼ってあった。緑虫さんは何故かそのポスターを凝視している。僕は気になり声をかけた。
「スタンプラリーしたいの?それとも景品かな?」
「……うーん、分からない。でも目的のある旅行がしたいかなって思う…… 思い出作り……」
彼女はポスターを見ながら、でも何か考えごとをして頭の中がいっぱいなのか、心ここに在らずという感じだった。僕は彼女のこういうところをあまり見た事がない。しばらく黙って待っていた。
「あ、ごめんね!そろそろ帰りましょうか。」
「うん?いやいいんだ。でも旅行に行くのはいいね。僕はあまり旅行した事がないから、行ってみたいところもあるし。」
「え!どこどこ?」
緑虫さんが予想外にえらく食いついてきた。
「いや、別に絶対こことかじゃないんだけど、静岡にあるらしいプラモデル工場の見学とか、名古屋の味噌カツを食べてみたいとか、琵琶湖を見てみたいかなとか、あまりにもざっくりしたものですが……」
「…………東海道線…… ……ちょっと時刻表買って帰りましょうか……」
駅前の本屋で時刻表と旅のガイドブックを買ってから、彼女は帰宅するまでぶつぶつと独り言を言っていたが、家に帰ると時刻表を早速開きノートに何か書き出した。凄い集中力だったので、僕は邪魔にならないようにしつつも彼女が立てているだろう旅行の予定が気になり時折覗こうとするが、ギロッと睨まれるので、漫画でも読むことにした。一緒に行くつもりは無いのか不安になった。
しばらくして、彼女の方から声をかけてきた。
「ねー、ちょっと見て?」
そこに記載されていた綿密な計画に僕はびっくりした。分単位の予定と食事や行き先、予算まで書いてある。しかも随所に予定外の遅れが発生した場合のバックアッププランまである。スタートからゴールまでには僕が話した行きたいところ以外にも、ピアノ工場やら鰻の有名なお店など彼女の行きたいところも入っている。概ねの道順は東海道線に沿っている。
「……凄いね!これは凄い旅行になる。楽しそうだなぁ〜」
僕は率直に感想を言うと彼女はニヤニヤしながら、とても満足げに自分の予定をみている。
「ねぇ、絶対いきましょうね?」
「あぁ、もちろん。ありがとう。」
「ウフフ……フフフ……フガ……」
緑虫さんはちょっとだけ気持ち悪く笑っている。
「でも、まだまだ決めないといけない事や、どっちがいいかで悩んでいるところがたくさんあるから、相談して一緒に決めましょう?で、早速ここなんだけど……」
それから僕らは夜遅くまで旅行の計画を話しあった。行ってもいないのに、時刻表を見て乗り換えの電車を探したり、空いた時間で行ける場所を探したりするのはとても楽しかった。
ああ、緑虫さんと二人でこの計画通り旅行が出来たらきっと楽しい。いや、絶対に行くんだ。僕はその日がどうしようもなく待ちきれなかった。
この後、エピローグ製作に戻ります。




