3章 11節 歯医者と完全犯罪
歯磨きは大切だ。虫歯予防に口臭予防、一番大事なのは習慣になる事だ。毎日のルーチンワーク。大したことの無い積み重ねが大事だ。ダラダラしていたら、あっという間に人生終わってしまうかもしれない。
ただ筋トレや勉強はどうも続かない。必要性や希望はあっても僕のメンタルはそこまで強くないし、自分に優しい。まぁそのうち頑張ろう。
そんな事を考えていたら、ふと思い着いた事がある。深く考える前に緑虫さんに相談しよう。
「あのさ、よく推理小説とか現実の事件でさ、遺体の歯の治療履歴とかから人物を特定する話しあるじゃない?あれって僕らみたいな二重存在だったら、完全に騙せるんじゃない?」
「……うん?あー、私虫歯とかなった事無いし、治療履歴とかもないから無理よ。第一あなた焼死体にでもなるの?」
緑虫さんはゲームに夢中であまり相手にしてくれない。今は超王道RPGの第一作目をクリアしたあと、二作目をスタートしたところだ。仲間が入って感動している。このシリーズはまだまだ続くし、きっと第5、6作目辺りで更なる感動シーンに遭遇するだろう。僕はそんな事を思いながら彼女のプレイを良く見ている事が多い。人のRPGのプレイ見て何が楽しいのか?と思うかもしれないが僕は割と好きだった。
「いやいや、そんな事は無いけど。……そうだ、例えばさ、指紋とか遺伝子情報とかも同じ何だから、それなら焼死体にならなくてもアリバイ作りとかに使えば完全犯罪とか出来ないかな?」
「……うん?ごめん。聞いてなかった。」
「いや、だから遺伝子情報とか同じ何て有り得ないから完全犯罪に使えないかな?って思ってさ。」
「使って何したいの?」
「いや、その何か特に目的があるわけでは無いんだけどさ……」
ああ、何で分かって貰えないのか。せっかくの特徴を有意義に使う方法を考えるのは楽しいじゃないか。結果では無くプロセスを重視してはいけないのか。
例えばゲームだって、結果も大事だが過程を楽しむものだ。彼女はそこを分かっていない。まだまだゲームの本質がわかってない。
ダンジョン攻略を観ていても、僕ならわざと本筋じゃなさそうな方から進めていき、マップを全部踏破するのだが、彼女は目的だけ最短でクリアを目指す。無駄がない。
「やった!お姫様も仲間なったー!」
緑虫さんは楽しそうだ。そんな彼女を見ていると幸福を感じる。
――そうだ。ゲームなんて好きにやればいいじゃないか。プレイスタイルの押し付けはよくないだろう。
僕は歯磨きが終わった後、ずっと彼女のゲームプレイを楽しく見続けていた。
もう一節、3章に追加予定です。




