3章 8節 勉強
「……うーん、解説読んでも解らないな……」
数学の発展問題になったところで、行き詰まってしまった。
僕は最近、勉強をするようにしていた。学校に行かなくなって勉強からは遠ざかっていたし、あまり時間もない。参考書や問題集はとても高い。だから恵まれた環境とはとても言えないが、毎日コツコツやっていた。本ばかり読んでいた時に見かけた問題集を買ったのがきっかけだ。近くの私立大学に給費制というものがあり、授業料免除に加えた年間100万円ほど給付されるのだ。もちろん、マコトも進学するはずだから、入学は無理だろう。ただ勉強はしておきたいと思っている。
チラチラと緑虫さんの方を見る。食事の後片付けもお風呂も全て済まして、後は寝るだけの状態にして読書に没頭している。
昨晩驚いた事に僕が勉強していると、――何してるの?と声をかけてきた。たまたま切りがよかったようで、勉強を教えてもらった。彼女の教え方は解りやすかった。近くで教えてもらっていると仲良くなれた気もしたが、今日は見向きもしてくれない。手に持つ本の残ページ数はまだ多く、今晩は無理かもしれない。
「こんな問題誰が解けるんだよ?……解ける人は本当に天才だろうな。憧れるなぁ……」
わざと聞こえるように呟いたとき、彼女がピクッと反応した気がした。――よし、もう一押しだ。
「もうダメだ。諦めて参考書を買おう。高いけど。」
「ちょっと、待った。……わたしに訊きなさいよ。」
緑虫さんがぴたりととなりに座ってきた。僕は、ドキリとするが彼女はもう問題を解いている。
「貴方、図形苦手よね……中学数学の解法が身に付いてないからよ。……いい?ここは――」
やはり緑虫さんの教え方は上手だ。進学校の中でも本当に上位の成績優秀者は違う。模試の点数や偏差値も凄かったのだろう。さらに予備校まで行っていたなんて、この点取り虫は――とか言ったら教えて貰えないだろう。
「――って、聴いてる?」
「――う、うん、次の問題で試してみるよ。ありがとう。流石です。」
僕は彼女を褒めると、少し嬉しそうに微笑んだような気がした。次の問題を自力で僕が解けたのをみて、彼女はまた読書に戻っていった。




