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1章 2節 状況整理
しばらく同じような挙動をお互いに繰り返したあと、あまりにも同じことを言うので会話が成立しなかった。
じゃんけんで話す順番を決めること自体はすぐ決まったのだが、始めてみるとこれも少し時間がかかってしまった。思考回路が同じだからか、数回程度あいこが続いたが勝負はついた。最初は向こうだ。
「君は、誰だ?――僕は小杉 真だ。」
こいつは、僕の名前を言って来た。
「俺が、小杉 真だ!」
焦った。嫌な予感がしていたからか、つい怒鳴ってしまった。相手も全く同じ様相で困惑しているのがわかる。
しばらく同じようなやりとりを続けた後、疲れた僕らは、諦め半分で現状を認めた。
―― 僕は、今二人いる。――
自分との会話は、思った以上にストレスが溜まった。考えや行動、何もかも同じというのは、こんなにも話し難いものか。唯一の救いは、声が違うことぐらいしかない。もちろん、ここに第三者がいたら区別はつかないだろう。自分の声は自分で聞こえるものとは違う。録音した声、あれだ。
その夜は、結局明け方まで話が終わらなかった。