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2章 4節 美月の変化

 「桜木さん、日曜日に水族館に行かないかい?」

 小杉真に誘われた。つい先日、映画を断ったばかりだ。彼はニコニコしている。


 「あいにく、その日は模試があるから無理。――ごめんなさい。」

 美月は事実を伝えた。小杉真は、わかったとまたスタスタと行ってしまった。


 美月は二つのことに、驚いていた。まず、自分が再度誘われた時、いや声をかけられた時に嬉しい?と感じた事。もう一つは断った後に、少しだけ残念だと思った事。

 ――嬉しいと感じたのは、きっと彼が自分の思った通り、簡単に諦めなかったからだ。残念だったのだって、他の男子と同じで彼のことを知るチャンスを無くしたから?


 美月はそれ以上、自分の気持ちを考えるのは、やめておく事にした。何故なら自分の感情と、言葉にして考えた理解に少しズレがある気がしたからだ。ストレスは溜めたくない。また誘われたら考えればいい。


 それから暫くしても、一向に小杉真からの誘いはなかった。今度こそ諦めたのか?



 「小杉くん、今日の放課後空いている?」

美月は思い切って、こちらから誘う事にした。話をすれば、直ぐにこの苛立ちは解消されるだろう。美月は時間を非常に大事にするタイプだ。無駄な時間な浪費は罪だとすら思っている。


 「あっ、ごめん。部活……」

小杉真は、申し訳なさそうに断ってきた。


 「……あっそうよね。部活頑張ってね……」

美月は逃げ出すように、立ち去った。猛烈に恥ずかしい。誘いを断られるのは、こんなにも恥ずかしく、淋しいのか……。今後、断るときは、誰にでも優しくしよう。そう美月は誓った。



 次の日、美月は非常に困っていた。昨日断られて、また、同じように断られるのは辛かった。ただ、今日は陸上部の練習は休みのはず。部活はない。放課後空いている可能性は高い。


 しかし、美月は誘えなかった。小杉真が自分に対してしてくれた事は、凄く勇気がいる事ではないか?好意を持っているわけではない自分が、ここまで悩むことを彼は普通にやってのけた。もしかして、好意を持っていると思ったのは、自分の勘違い?

 ――考えてみたら、なんの確証もないじゃない……


 そう思うと、もう余計に誘いにくい。結局、今日は無理だと美月は諦めた。

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