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ヤクと魔法のファンタジー  作者: 衣太
課外授業
95/133

8

「あぁ~生き返るぅ~」


「せんせ、おじさんくさい」


「うっせ」


 貸切風呂に浴槽は二つあった。ちょっと熱めの湯と、ちょっとぬるめの湯だ。時間はまだまだあるので、とりあえずぬるめの湯の方に浸かっている。

 どちらも広く、頑張れば30人くらいはまとめて入ることができるだろう。

 泳ぐことができる広さだ。流石にこの歳になったらやらないけど。


 結局、時間になってもユリアとノーラは来なかった。なのであえて呼びに行くこともなく、いつもの三人で貸切風呂を満喫している。

 自分の身体をさっと洗って、イルマと二人がかりでリリーの身体を髪を隅々まで綺麗にする。毎度のことながら僕が髪担当で、イルマが身体担当だ。

 リリー的には自分でも洗えるというのだが、これに関しては目が見える僕らが適任ということで数年間ずっとこのスタイルでお風呂に入っている。


 空でも飛んでるかのようにお湯に全身を投げ出してぷかーとお湯に浮かんでいるリリーを見るに、満喫しているのだろう。屋敷の浴槽は個人宅と比べて広いといっても限度があるので、ここまでリラックスした姿を見ることは少ない。

 身体を洗ったタオルを頭に乗せた日本人スタイルで肩まで湯に浸かっていると、このまま寝そうになってしまう。いつもよりちょっと温度が低いのがまた、長時間入っていられそうだ。

 お風呂上がりはやっぱりコーヒー牛乳かなぁと考えていると、脱衣所からガタリと音がなる。

 ……鍵掛けてたはずなんだけど? と一瞬泥棒を疑うが、目を瞑ってお湯に浮かんでいたリリーが「来てるよ」と小さく言ったので、僕とイルマは顔を見合わせ「あー」と一言。


 「失礼します」の声と共に入ってきたのは、ユリアとノーラの二人だ。

 二人は僕の視線に気付くと、恥ずかしそうに顔を赤らめる。換気はされているはずだが浴場には大量の湯気が発生しており、洗い場に向かう後ろ姿からはタオルを身体に巻いているということくらいしか分からない。


「タオルを湯につけるのはマナー違反ですからねー」


 イルマが二人をガン見しながらそんなことを言うと、「分かってます!」とユリアから反論が上がった。

 僕らがここに来て、もう20分以上は経過している。のんびり身体を洗っていたらあまり湯に浸かれる時間はないだろう。

 二人は洗い場の椅子に腰かけ、身体に巻いていたタオルを外すので、僕は慌てて目を逸らす。後姿とはいえ、いくらなんでもガン見してたら怒られそう。

 チラリとイルマの方を見ると、縁に顎を乗せて洗い場を凝視しているイルマの姿があった。ああはならないでおこう。リリーは二人が入ってきても特に変わらずぷかぷかと浮かんでいるが、さっきと向きが逆で、うつぶせだ。桃みたいに可愛いおしりがちょっとだけお湯からはみ出ている。

 普通にうつぶせになると顔面がお湯にダイブして溺れるとは思うのだが、リリーは自分の顔の目の前のお湯だけ器用にレビテーションスキルで動かすことで、溺れないでいられている。これ活かせば海でも割れるんじゃないか?とか考えたが、それはどこの聖人だよ。僕がやったら溺れるけど。


 時折横回転して上を向いたり下を向いたりするリリーを眺めながら、脱水症対策で買ってきた飲料水を口にする。僕が水を飲んでいることに気付いたリリーが、仰向けになったままぷかぷかとこちらに近づいてきて「ん」と言うので、水を飲ませてあげる。イルマも飲むかなと隣に居るイルマを見ると、姿勢を変えないまま洗い場を凝視していた。どんだけだよ。


 ゆっくりと身体を洗い終わった二人は二つの浴槽の湯の温度をチェックし、僕らの浸かっている方が温度が低いことを確認すると、二人で顔を見合わせて黙って頷いた。

 二人は意を決してタオルを外し、こちらをチラチラと見ながらお湯に浸かった。


 あれ? 目潰しされない? イルマのことだから「何見てるんですか!」とか言って目潰し掛けてくると思ったのに、僕に攻撃が飛んでくる気配はない。

 それどころか湯に浸かるユリアを見ながら「おぉ……」とかオッサンみたいな声出して鼻息荒くしてる。何この子……。


 ユリアとノーラは長方形の浴槽の、僕から対角線上に居る。距離はそれなりに離れているが見えないことはない。ただ凝視していると今後の付き合いに支障がありそうなので視界から外すようにはしているが。

 それでも、視界の端に映るユリアはとんでもないことになっていた。

 いやあれ、本当に頭より大きいんだよ。それが二つ。脂肪は水に浮くって言うけど、本当に浮くんだね。ノーラは隣の巨大メロンを見ながら「はぁ……」と深い溜息をついている。仕方ないね、諦めよ……。

 最初はこちらを睨むようにしていたユリアだが、1分もすると気にならなくなったのか、浴槽の縁に頭を乗せてくつろいでる。その姿勢になると頭が三つあるみたいだよあれ。本当に凄いね……。


「さっき、どうして口付けをしていたんですか?」


 ふと思い出したのか、ユリアがそんなことを言う。声は大きくないが浴室は反響する作りなので、彼女の声はよく聞こえた。


「さっき?」


「その、リリーさんと……」


「うん? 水飲ませてあげてただけだよ?」


「……そうですか」


 今更何を言っているんだろう。三人の時、リリーは割といつもこんな感じなんだけど。

 まぁ三人が五人になってからはあまり人目があるところでねだられることはなかったけど、それでも今みたいにリラックスしていたら別だ。今のリリーにとって、ユリアとノーラは意識の外に居るのであろう。


 ユリアは僕の視線に気付くと恥じらう様子はあるが、身体を洗ったタオルは胸の上に載せており、隠そうとはしていない。見られて恥ずかしい身体じゃないとか? うぅん、まぁ凝視するのも失礼なので見ないようにはしたいけど、たぶん一番離れた位置に行こうとした結果の対角線上なんだろうが、言い換えれば真正面だから割とよく見えるんだよね。そこに気付いてないのかな?


 互いに不可侵領域があるかのごとく、三人と二人は離れた位置で湯に浸かる。

 時折イルマの悪戯を回避しながら貸切時間は少しずつ終わりに近づいて来、残り10分程度になったところで僕らは熱い湯に移動したが、ユリア達が移動して来ることはなかった。

 僕らがギリギリまで湯に浸かっていることを察したのか、二人は終了の5分ほど前に風呂から上がり脱衣所へ消えたが、僕らは1分前くらいまでは湯に浸かったままだった。


「それにしても物凄い乳でしたねー」


「ぶふっ」


 風呂の鍵を受付に返し売店へ向かい、コーヒー牛乳を手にしたところで突然イルマがそんなことを言い出した。


「見てました? あれ、ほぼ浮いてたじゃないですか」


「イルマちゃんのも、浮いてたと思うけど……」


「リリーは全身浮いてたけどね!」


「沈まないようにしてたの!」


「あはは、せんせはなんとか耐えてましたねー、うりうり」


 僕の股間あたりに手が伸びてきたので慌ててガード。こ、こいつ……!


「変な事しないの!」


「なんでですかー。減るもんじゃないし」


「精神力は減るよ……」


 うんうん、ゴリゴリ削れるよ。最近は魔力を使い血液の流れを操作することで下半身の不貞を阻止する術が身につき始めているが、かなり集中してないといけないし、心が休まるお風呂の時間や睡眠時間にまでそれをするのはかなりキツイ。もうちょっとイルマの性的アピールが減れば良いんだけど……。


「せんせが必死に我慢してるもんだから、ちょっと楽しくなっちゃいました」


「え? エミリオ君、何か我慢してたの……?」


「シテナイヨーシテナイヨー」


「めっちゃしてましたよね! ふふふ」


 うぅん、不敵に笑うイルマの表情を見るに、たぶん僕が血液操作してるのもバレてるよなぁ……。魔法の形にしなければバレないかなと思っていたけど、露骨に魔力を操作するとすぐに感づかれてしまう。今後はもっとステルス性を高めなければ。


「んで、これからどうします? 夕飯には早いですし」


「あー、確かに。お風呂上りだからあんまり外出たくないんだよね……」


「じゃ、部屋でごろごろ乱交パーティでもします?」


「しねえよ!」


「え? パーティ?」


「そうそう、楽しそうじゃない?」


「楽しそう!」


「ウチのリリーに変な事教えないで下さいー!」


「えぇー」


 イルマはぶーぶー言いながら僕の腰に腕を絡めるようにして後ろから抱きつき、べったりくっついてくる。

 なんかいつもよりアピール激しい気がするけど、気のせいじゃないよねぇ。旅行効果?


 売店で飲み物や軽食を購入して部屋に戻ると、扉の前に見知った二人が立っていた。


「あれ? 部屋の鍵でも失くしたんですか?」


 絶対そうじゃないと分かっていながら、イルマは二人に向かって、煽るような声を掛けた。

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