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ヤクと魔法のファンタジー  作者: 衣太
生活基盤
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7

 翌日、最新の教科書類をとりあえず1セット買ってきたアルの本気度にちょっと引きつつ、話し合いがスタートする。ウチの給料、よそと比べてどんだけ高いんだよ。まだ1円も払ってないのに!


 教育方針は大体任せるということで話は進み、後は子供達とのスケジュール調整の話になる。

 サロート運輸の業績は悪くない。リピーターが増えてきて正規料金を貰えるようになったので、上り調子の今、頻繁に休むのは避けたいところではある。

 港に行って手が空いた子供に勉強を教えようにも教師のアルは一人しか居ないし……。


 とりあえず現状は屋敷に残っている子に優先して教えることにし、港で働いている子でも勉学に興味がある子は屋敷に戻し、こちらを優先して教えることに決める。


「ところで、魔法はどこまで教えます?」


 何を教えるかピックアップしているアルから、そんな質問が飛んでくる。


「適正はまとめてるんですけど、まぁ見事にバラバラなので……どうぞこれです」


 書類を引っ張り出しアルへパス。子供達の魔法適正と、僕から見た大体の知識レベルを記したものだ。


「30人も居たら、そうなりますよねぇ。魔法学はエミリオさんもイケます?」


「あー、教えるの苦手なんで……。あと僕の適正、毒に偏ってるんで、子供に教えられることなんてほとんどないんですよね」


「……薬学科行けば滅茶苦茶モテますよそれ。最近毒適正高い人少ないみたいで、生徒も教員も減りまくってるって聞きますし……。ていうか高次幻覚24時間通せる癖に、毒に偏ってるって言えるの、どういうことなんです?」


 一度子供の姿は見せたが、あれはあの場にリリーしか居なかったからだ。会議室の机は狭すぎるということで食堂に移動して話しているので、ここで子供に戻った日には誰に見られてもおかしくはない。


「ま、色々あるんですよ」


「そうですかー、色々ですかー」


 こちらに目も向けず書類を読みながら生返事をするアル。なんか適当に流されるようになってるなぁ。深く聞かれないのはありがたいのだが。

 年齢バレてここまで何も聞かない人、逆に珍しいんじゃない? 信じてないだけという可能性もあるが。


「とりあえず、基本科目5割、一般教養3割の魔法2割って感じで組んじゃいますかね」


「そのへんは、お任せします」


「指導要領も裁量で決めれるとか、この職場凄すぎません……? この給与と労働条件、普通に求人出したら王都中の現役教員が申し込んじゃいますよ」


「……それは困るので、徐々に増やしていこうかと」


「ま、それがいいですね。雇い主は相当世間知らずみたいですし……」


 グサッと刺さる言葉を言われて蹲る僕。うう……これでも色々頑張ってるつもりなのに……。リリーが無言で背中を撫でてくれて泣きそう。好き。


 リリーは僕がアルと話している間も特に何かをするでもなく隣に座っているが、まぁそれが普段通りだ。港で働いていない子供達は割と屋敷内で自由にやっているし、リリーもその中の一人でしかない。

 他の子と遊びもせず僕と一緒に居てくれるのは嬉しいのだが、何かやりたいことない?とか聞いても「ううん」と返すばかり。

 嬉しいには嬉しいし、今はやらせることもないから別に良いのだが……。


「魔法に関しては専門的に教えるとなると属性ごとに雇った方が良いとは思うんですけど、子供達すからねぇ」


「そうなんですよねぇ。魔法のスキルレベルが100超えてる子もほとんど居ないし、専門知識は後々でも良いかなって」


「え、ほとんどって言いました? ってことは、少なからず居るってことですか? 平均年齢12歳くらいですよねここ?」


 これまで見ていた書類を落とし、慌てるアル。うん、実はそうなんだよ……。


「ええ。ラウの火属性、ニッカの水属性が150くらいだったかな? あとはさっき挨拶してたジェンナが土属性、ジェンナの後ろに居たイルマの光属性が100超えてるはずですよ」


「……あれ、皆さん、元々孤児だったんですよね……?」


「そのはずなんですけどねぇ……」


 二人して呆れる有様だ。

 うん、スキルレベルを聞いて回っていた時、さらっと100超えを言われて驚いたものだ。その4人以外は魔法を使える子でも多少使える程度でしかなかったので、4人が異常なだけのはずだが。

 うん、僕? 知らん知らん! 年季が違うんだよ年季が!


 とは言え、多少使える子もサロート運輸でエアクッション艇の操作を続けていれば、自然と風属性だけは育ち続けることだろう。適正次第では、半年もしないで100の壁を超える子も出てくると思われる。


「ただ皆、学問として覚えたわけじゃない感覚派ばっかりなので、1からちゃんと教えてもらえると助かります」


「了解です、そのあたりは初等部向けって感じで良さそうすね。ところで、聞いちゃ悪いことかもしれないけど、一つ聞いても良いです?」


「うん? どうぞ」


「や、エミリオ君じゃなくて、リリーになんすけど」


 申し訳なさそうな顔をするアルを見て、言いたいことは察した。けれど、遮ることはしない。


「私?」


「そうそう。……言っちゃうと、初等部の授業は板書と筆記が主なんですけど、そこんとこリリーは……」


「え? 字なら書けるよ?」


 捨てる書類の中から一枚紙を取り出したリリーは、僕の持っていたペンを使い、綺麗な筆記体ですらすらと文字を書いていく。

 えっ僕もビックリ。普通に書けるの!? 目、見えてないのに!? ていうか僕より字、上手くない!?


「え、メチャ上手いじゃないすか……」


「私、元々は見えてたからね? あと今は、熱魔法である程度は文字も読めるし……」


「「なるほど……」」


「なんでエミリオ君まで驚いてるの……?」


 いや、驚いた。どうやら、熱魔法で赤外線探知ができるようになる前から、盲目の状態で筆記をすることはできたらしい。

 今では書いた文字を読むこともできるようだが、……うん、僕の知ってる赤外線探知はそこまで高性能じゃないよ!? どこまで育ってるのソレ!? ちょっと輪郭が分かる程度の探知魔法だと思っていたのに、どうやらそれどころではない視界を得ているようだ。順応性高いなぁ……。


「教科書も、このインクなら読めるよ? 色の違いが大体しか分からないから、絵はちょっと難しいけど……」


「「す、凄い!」」


「だからなんでエミリオ君まで驚いてるの!?」


 だって! 赤外線探知魔法はそんな万能の魔法じゃないはずだもん! 驚くでしょ!

 今リリーの視界にはどのように世界が映っているのか、純粋に気になってしまう。今度見せてもらおっと。別にセクハラじゃないからね。


「な、なら、リリーも同じように教えて良さそうすね」


「そのつもりだったのに……」


「ご、ごめんっす! 目が見えてない子は初めて受け持つから、心配だったんすよ!」


「もう……!」


 あれ、この二人、横から話聞いてるとどっちが年上か分からんな?

 ぷんぷんするリリーも可愛いよ! 可愛い可愛いと思ってじっと見つめてると頬を染めて顔を逸らすあたりも可愛い。うーん、ひょっとしたら天使かな?


「あーあーそこそこ、ラブ空間作らんで下さい。話し戻して良いすかー」


「あ、どうぞどうぞ」「ら、ラブ空間!?」


 テンパるリリーも可愛いね! とりあえず手近なところにある頭を撫でておこう。なでなで。


 その日は朝から晩まで、今後の教育方針についての話し合いが、所々脱線しながらも続くのであった。今日分の給料、出した方が良いよね、これ……。

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