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復讐者の英雄譚  作者: 琴道はこで
2章・少女の激闘編
7/18

5・クエスト

やっとバトルシーンです。

 『クラフトダイアス』に着いて二日目、朝早くに起きたユキア達は、昨日とは違い静かなメインストリートを歩いている。

 本当は晴信と別行動を取り、この町が隠しているものを探したかったのだが、今はそれよりも大事な事がある。

 そう。資金の確保だ。


 「晴信、一応言っておくが、いきなりドラゴン的なのが出てきたりはしないぞ。間違っても変な期待はするなよ」

 「分かってるって、でもやっと戦う時がきたんだよ。さっきから興奮が止まらないよ! はあ、どんな強敵と戦えるんだろう」

 ユキアは注意を促すが、晴信は全く理解していないようだ。ユキアは溜め息をはき、腕に付いている時計を確認する。

 「まじか!」

 ユキアは思わず驚きの声を上げてしまう。時計は、八時半を過ぎうすぐで五十分を指そうとしていた。

 「ヤバい! 走るぞ!」


 ギルドの前には、まだ開店の十分前にも関わらず、既に数人の冒険者が、扉の前で待機している。

 

 この町の周りのモンスターは、この国でも一番低ランクなことから、冒険者の練習場と言われており、駆け出しの冒険者や、一度挫折した冒険者が沢山いる。

 その為、簡単にクリアでき、その上報酬もいい低ランククエストは、開店から一時間もあれば受注が出来なくなる。


 そんなこんなで十分、閉ざされたドアがゆっくりと開き、それを合図に、ドアの前で待機していた冒険者達は物凄いスピードで中へ入っていく。

 ユキア達も混雑の中、受付テーブルへと足を進めるが、自分達より前にいた冒険者達が次々とクエストの受注を済ましている。ユキア達はなんとか受付までたどり着き、残りのクエストを確認する。


 「どのクエストを受注しますか?」

 昨日とはまた別の女性が、ユキアに向かってクエストを尋ねる。

 「では、ゴブリンの討伐で」

 ゴブリンの討伐クエストを受注し、ユキア達は早々とギルドを後にする。いくらクエストを受注出来ても、ゴブリンが全滅してしまえば意味がないないのだ。ユキア達は急いでゴブリンの討伐へと向かう。


~~~~~


 町外れの小さい森にて、ユキア達はゴブリンの探索を行っていた。

 ギルドのクエスト報酬には、クリア報酬と討伐報酬があり、クリア報酬は、受注したクエストの条件を満たすことで貰える報酬だ。今回で言うと、ゴブリンを十体討伐することが条件である。


 討伐報酬は、モンスターを倒すことによって得られる報酬で、報酬の額はモンスターによって異なり、希少なモンスターや、強力なモンスター程、報酬は上がっていく。


 今回討伐するゴブリンは、一体につき百ペリの為、十体討伐で千ペリ、討伐報酬も合わせて二千ペリが、最低でも手に入る。


 ゴブリンは集団で行動するため、三~五匹でよく発見される。

 ゴブリンには、剣や弓を持っている者もおり、ゴブリンの方が自分よりいい武器を持っていることもあるらしい。


 モンスターは、低位、中位、上位、最高位に分類されており、ゴブリンは当然低位モンスターに位置する。


 「ユキアあれ!」

 晴信の指した方向を見ると、黒い人の形をした影が、微かに見える。

 「行くぞ! 晴信!」

 ユキア達は戦闘体勢を整え、影の方向へ走り出す。


 黒い影はやはりゴブリンだった。ユキアの半分ぐらいの伸長に、緑色の体、長い耳が特長の七匹のゴブリンが、集団となって敵意を向けている。


 ユキアは右手を突きだし、魔法を唱え……る必要はなかった。聖剣を持った晴信が、ゴブリンの集団を一撃で凪ぎ払う。


 倒れたモンスターが、白い塊へと変わる。

 この白い塊は、モンスターの魂と言われており、この塊をギルドの職員に渡すことで、報酬を貰うことが出来るのだ。


 ユキア達は塊を全て集め終え、残り三匹の討伐へと探す予定だったが、運が良いことに、すぐ近くの茂みからちょうど3体のゴブリンが飛び出してきた。


 「晴信! ここは一気に蹴りをつけ……」

 そこまで言ったとき、ユキアは怪しげな気配に気ずく。


 「晴信! 回避だ!」

 ユキア達が横へ回避した瞬間、ゴブリンの後ろの茂みから、何かが高速で飛び出してきた。その何かに吹き飛ばされたゴブリンは、一瞬にして塊に変わる。


 銀色の鬣を揺らし、こちらを睨み付ける三m程の大型狼。

 「ライトニングウルフ!」

 ユキアは驚きの声を上げる。だがそれも仕方ないことだろう。

 ライトニングウルフは、足が異様に速く、攻撃が全く当たらない大型モンスター。


 本来ならもっと魔王城に近い所に居るはずのモンスターで、こんなところで現れるなんてことはあり得ないのである。

 ライトニングウルフは、ユキアに向い音速とも思えてくるスピードで突進してくる。


 ユキアは寸前の所で横へ回避し、晴信に、攻撃、防御、スピードの補助魔法を順に掛ける。

 「晴信! 少し相手を惹き付けろ!」

 そう言ったユキアは、晴信に補助魔法のフードエキスを掛け、一旦木の上に息を潜める。


 フードエキスは、魔物に狙われやすくなる魔法で、因みにエキスと付いているが、特に汁的なのは出てこない。


 ライトニングウルフの攻撃を、寸前の所で晴信が防ぐ。そんなやり取りが続く中、ユキアは晴信とライトニングウルフを囲うように補助魔法のバインドを放つ。


 バインドは、本来なら魔方陣から出てくる四本の鎖で、相手の両手足を拘束する魔法なのだが、今は別の目的で使う。


 ユキアはバインドを続けて使い、いつしかライトニングウルフの周りに、簡易的な柵が出来上がる。

 だが、ライトニングウルフ程の力があれば、バインドで出来た柵など、一秒あれば破ることが出来る。


 だが、その一秒が大事なのだ。

 ユキアは、ライトニングウルフ後ろの木々に闇魔法のインジビブルを使い、木々を透明にする。


 インジビブルは、対象とした物の、姿を消すことが出来る。ただ、よく目を凝らせば見えるので、逃げる時には使いずらい。


 しかし、今のライトニングウルフには晴信との戦闘で目を凝らす余裕はない。

 案の定、鎖を引きちぎったライトニングウルフは、透明化した木の前に立つ晴信に突進を仕掛ける。


 それを晴信は素早く回避し、ライトニングウルフは、透明化した木々に衝突した。


 「今だ!」

 ユキアの合図で、晴信はライトニングウルフに鋭い一撃を与える。その一撃に呻き声を上げたライトニングウルフに、素早く二撃目を加え、今度は一刀両断にした。


 ライトニングウルフは上位モンスターだが、足が異様に速い分体力はあまりない。聖剣で二回も斬れば、容易に倒せる相手だ。


 晴信がライトニングウルフの塊を拾っている間に、ユキアはゴブリン三体の塊を回収する。

 回収し終わり、ユキアはさっきの戦闘について考える。ライトニングウルフが出てくるなど、前代未聞の事態である。いくつか仮説が浮かんでくるが、どれもしっくりこなかった。


 疑問は残っていたが、ユキア達はギルドへと戻り受付の女性にゴブリン十体とライトニングウルフの塊を渡す。


 「ライトニングウルフ!」

 女性が驚きの声を上げる。

 「ああ、森で戦ったんだ」

 本来なら明らかに怪しい言葉ではあるが、女性は疑うことなく受け取る。


 普通なら、誰かから高額で買い取ったと考える。こんな駆け出しの町に、上位モンスターが居る筈もないと。しかし疑いもせずに受け取ったとなると、やはり最近、こういうことが多発しているとみて間違いはないだろう。


 「もしかして、最近似たようなことがありました?」

 ユキアは確認を得るため、女性に質問をした。そんなユキアの言葉にはいと答えた女性は、最近の出来事について話してくれた。


 どうやら最近、三日に一回のペースで中位モンスターが出現していたらしい。

 だが、前回からちょうど三日目なので、腕利きの冒険者を集めていたのだが、クエストから帰った冒険者が見たのはライトニングウルフ。

 まさかの上位モンスターにギルドは慌てているらしい。


 俺達はゴブリン分の二千ペリと、ライトニングウルフ分の三万ペリを受け取り、ギルドを後にし……ようとしたのだが。


 「なあ、どうやってライトニングウルフを倒したんだ?」

 逃げ帰ってきたであろう冒険者から呼び止められる。体つきはガッチリとしていて、身体中に傷がついているその姿は、確かに今までこの町でみた中でも熟練に思えた。

 ユキア達はライトニングウルフ討伐の経緯を話すと、新米なのに大したもんだと笑って見送られた。


 出てきた時は驚いたが、懐が潤ったのも確かである。

 ユキアはライトニングウルフに少し感謝し、ギルドを出ようと思ったが、お腹から何やら音が聞こえたので、ギルドの食堂で昼飯にすることにした。


 にしても謎は深まるばかりである。ユキアは豚カツ定食を食べながら今回の件について考える。

 三日に一回のペースで現れる中位モンスター、今日になって出てきた上位モンスター、考えられるのは召喚魔法ぐらいである。


 召喚魔法は、限られた貴族にしか修得出来ない強力な魔法で、呼び出せるモンスターも、召喚魔法専用のモンスターしか呼び出せないので、どちらにせよ無理なのだが……


 「ユキア、手が止まっているよ。」

 「ああ、すぐ食べる。」

 晴信の言葉にユキアは答えると、皿に盛られた豚カツをペロリと平らげる。


 色々疑問は残っていたが、ここで考えていても意味がない。ユキア達は料金を支払うと、ギルドを後にした。

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