ユーステッド学園
ユーステッド学園
大陸一にして、唯一の教育機関であり世界で一番様々な種族が集う場所でもある。
そして、創立者にして九百年間校長を務めているジジイの学園でもある。
「まあ、学校に通えば魔法を解くのなら大人しく通うけどね」
「ユーリ様なら問題ないかと思います。瞬く間に全ての生徒の頂点に立つものかと」
「いや、私は番長みたいな位置は目指してないわよ」
無事に卒業すればいいのだから、大人しく問題を起こさないようにする予定だ。
門の前に長時間立ち止まっているのも周りの邪魔になるので、そろそろ移動しなければ。
「さて、そろそろ行きましょうか。立ち止まっていても邪魔になるしね」
「かしこまりました」
巨大な門を潜り、門の外以上にいる色々な種族を見回しながら歩いていると、俺と目が合った生徒達が顔を赤くしながら顔を背けるのが気にかかる。
「何故、私と目が合うと皆目を逸らすのかしら」
目をそらす割に、俺とユエラに向けられる視線はかなりの数になる。
「分かりませんか?」
「分からないわね」
そらす意味も分からないし、ユエラが何故かドヤ顔しているのも分からない。
「それはですね、ユーリ様が美人だからです。オマケにプロポーションも完璧、長く艶やかな黒髪も好印象ですね」
ユエラがキリッとした顔をしているが、俺はいまいちピンと来なかった。
何せ、姿が変わってから千年近くたっているしもはや見慣れている。
それに、本来の姿では無いのであまり好きではないからだ。
「私が美人ねぇ…特に嬉しくないわね」
「ユーリ様はもう少し自分の容姿を正しく認識するべきです。このままでは何人の殿方が心に傷をおうことか」
ちなみに、ユエラが俺の名前をユーリと読んでいるがユリウスだと問題があるため、ユリウスをもじってユーリと呼ばせているのだ。
「まあ、私の容姿も後三年で元にも止まるわけだから今更認識する程でもないわね」
「私のせいでユーリ様に不便な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした!」
直角に頭を下げるユエラに視線が集まるのを感じ、慌てて頭を上げさせる。
「あれはあなたのせいではないわ。私達があんな所で戦っていたのが悪いのよ」
今思うと俺も若かったと思う。
今思えばもっと頭のいい方法があったはずだが、あの時の俺はあんな方法しか取れなかった。
「さあ、顔を上げて。むしろ、貴方を長い間私のそばに拘束させてしまって謝りたいのは私だわ」
「私がユーリ様にお使えしているのは私の意志です。ユーリ様に謝っていただくようなことではありません」
このままじゃ話が終わらないな
ユエラは頑固だ。俺に仕える時も、俺からの了承を得るために百年粘ってきた程だ。
…仕方がない、やりたくは無いがユエラに素直にいうことを聞いてもらうことにする。
「私がこうなったのはユエラのせいなのだから、私の命には従いなさい。顔を上げなさい、ユエラ」
「はい!かしこまりました!」
バッと顔を上げるユエラの顔は嬉しそうである。
昔から俺に命令されたり、キツイ言い方をされると喜んで従うのだ。
……Mなのだろうか
「人目がかなり集まってしまったわね。早くこの場を離れましょう」
「かしこまりました」
自分たちを興味深そうに見つめる多数の視線を無視して、俺達は新入生たちが集まる体育館に向かうのだった。