昔の話と今の話
「流石にやるじゃねえか」
「お主もの」
俺も神のジジイもボロボロだった。
戦いは三日三晩続いたし、この戦いのせいで世界の地図が変わったほどだ。
「じゃが、環境破壊が心配じゃからの。そろそろこの戦いも終わらせてもらおうかの」
「同感だ。そろそろ暖かい布団で寝たいからな」
決着をつけるためにお互いに力をためる。
しかし、いざ決着をつける瞬間俺の視界に魔族の子供がうつる。
(何でこんな所に子供が!?)
その一瞬の同様を見逃すジジイでは無かった。
「隙ありじゃ!」
そして、ジジイの一撃を受け敗北した俺は意識を失ったのだった。
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「…随分昔の夢をみたな」
暖かい布団で寝ている俺は、布団を払い長い髪を鬱陶しげに思いながら起き上がる。
襖を開けて、長い廊下を歩きつつ今朝の献立を考える。
「パンでいいかな。でも、ジジイがうるせえしな」
「お米ならすぐに炊けますよ」
俺のつぶやきに突然割り込んでくるのは、二本の角を生やした小柄な女の子だった。
「おはよう、ユエラ。今朝も早いな」
「おはようございます、ユリウス様」
小柄な影の正体はユエラ。悪魔族で、昔から俺の世話係を自称して何かと世話をやこうとするのだ。
そしてユエラは、俺がジジイとの決戦の時にいた魔族の子供だ。
俺がやられた原因が自分にあると思い、この場所までついてきて今の今まで俺に仕えている。
「今から米炊くなんて面倒だろ、パンでいいよ。ジジイはシカトしとけばいいんだ」
「しかし、朝から拗ねられると面倒です」
「拗ねんわ」
そんな会話しながら歩いているとジジイが現れた。
白ひげを偉そうに伸ばし、実際に偉いのだが…
目の前のジジイは神様と呼ばれる存在で、夢に出てきた俺にトドメを指した人物だ。
ここはジジイの家であり、俺とユエラは長い間具体的には千年ほどの期間居候とかしていた。
ちなみに、ここは代々神様の称号を継いだものが住む家で、時の流れが極端に遅いため中々歳をとらないのだ。
「飯は後でいい、大事な話があるから付いてきなさい」
ジジイらしくない真剣な表情に、ただならぬものを感じた俺とユエラは
………
……
…
「で、大事な話って?」
「うむ、他でもないお主の体の事じゃ」
「何だ、解いてくれんのか?」
視線を下に移し、視界に映る胸を見る。
見事に盛り上がっていて、立つと足元が上手く見えないほどだ。
もちろん、胸筋が凄いのではなく紛うことなきおっぱいであり、俺の体は長いこと女になっているのだ。
あの時、ジジイの一撃には色々な効果が乗っていたらしく対象の力を封じる魔法と性別が変わる効果が大きく出たらしい。
今の俺は、全盛期の百分の一程の力しかなくオマケに女になっているのだ。
「うむ、条件次第では解いてやってもいい」
「まじ?」
「まじじゃ。そして、お主を外に出してもいいと思っておる」
「まじかよ!」
驚きすぎて語彙力が極端に下がってしまった。
かれこれ千年近く女の身体で、ここで退屈に暮らしていたのだ今すぐにでも戻りたい。
俺はジジイに詰め寄り、鼻息荒く問い詰める。
「でっ、で?その条件は!?」
「近いわ」
詰め寄る俺をグイと引き離し、咳払いを一つ。
「まあまて、理由も聞け。」
ゴホンと咳払いを一つ
「まず、あれから千年が経過してお主を直接見たものがつい最近寿命で亡くなった。これにより、お主の姿を知るものはワシとユエラだけになった事じゃ」
「あぁ、竜王のドライグだろ。この前あいつの葬式が魔法ビジョンで流れてた」
魔法ビジョンは箱型の魔道具で、遠くの光景を写せるのだ
「うむ、そうじゃ。二つ目は、元々お主は悪意があって戦争した訳では無いが、まあ形だけの服役期間が終わったと思って貰えれば良い。」
「以上のことからお主を自由にしてもいいと思ったまでじゃ。そして、お待ちかねの条件はじゃが」
「「条件は?」」
俺とユエラの声が綺麗に重なる。
「学園に通うことじゃ」