その手
小さい頃から 苦手だった 何かを形にして 人目に晒すこと
小さい頃 柔い手に乗った赤い折り紙 いつの間にか みんなと違う 紙切れになった
羞恥も混ぜて 掌に隠した
二度と人目に触れぬよう 固く潰した
けれど あの人はそれを赦さなくて
貸してごらん きっと大丈夫
現れた 大きな手 両の手の平は光を包んで 待っている
色とりどりの 光が手から放たれている
色んな事を知り 創り 傷付き 包んだ 手は とても美しくて
真似て両手を差し出したけれど その手の平は 未だ何も得てはいなくて
うずくまる 気の毒に諦められた紙切れが 私そのもののようだった。
くしゃくしゃと モヤモヤを 広げて延ばす
両手を被せて 折っていく
伝わる 温度が 呼吸が その命の瞬きが
ほら できたよ
その手に乗るシワ模様の鶴は とても美しいと思った
その手がなくなり 何れ程の時が経ったのか
その手を忘れ どれだけのことを 手にできたのか
きっと大丈夫。と言い聞かす なのに求めるのは何故だろう
孤独と自意識を握り締めて
一人きり うずくまる 少し広くなった両の手で 握り込めるように肩を抱く
この手はあの手に及ばない あの手を見つける事もない
だけど その手は ここにある
上手く生かなくなったとき 鶴の折方を思い出す。
読んでいただきありがとうございました。