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7. 戦利品とその後

 いざ出発、というところで、脳内で謎の効果音が流れた。

 ついでに、後ろからボフンッて音も聞こえた。

 条件反射で振り返ってしまったんで、こちらから確認していこう。



 どうやら、さっきの魚型魔物が消えたようだ。どういう構造になっているのかはよくわからないけれど、俗に言うドロップアイテムという物を残して。

 橋の上に。直に。


「とりあえず、魚肉…げっと。」


 衛生面が心配であるそれを手に取り、そこで気がつく。

 これ、どうしよう。

 当たり前だが、アイテムバックなんていう便利な物は持っていない。

 興ざめ感はあるが、持って戦うのもあれなので、1回ダンジョンに戻り、倉庫を作った。ポイントで買った巨大冷蔵庫に今さっき手に入れた魚を詰める。どこかの部位のようであるそれは、俺の頭のてっぺんから胸元まである大きさで、中々に運ぶのに苦労した。


「食べなくてもいいけど、なんか食料は貯めておきたいよな。…でもこれ、食えるよな……?あ、鑑定…。」



 ・デビルフィッシュの背肉

 デビルフィッシュを討伐した際の基本ドロップアイテム。

 背の肉で、赤身の部分。生でも食べられるが、焼いたり蒸したりする調理法が一般的。



 つまり、見た目と説明的に鮪の赤身と思えばいいのか。

 そうだなぁ...、折角の初ドロップだし、簡単にご飯でも作るかな。

 刺身もいいけど、ふむ……。

 (衛生面を考えて)焼くか。



 ~キッチンを作成中、しばらくお待ちください。~



 よしっ、よーし!準備はできたぞ!

 え?食事は必要ないのにポイントの無駄遣い?

 いや、まあ、そうなんだけどさ……、なんか、せめて人間の生活はしておかないと、その内元々は人間だったことも忘れちゃいそうで怖いんだよねー。

 そうなったら、本当に化け物だよなー。コア破壊されないと死なないし。



 フライパンに切って塩コショウで下ごしらえをしたデビルフィッシュの背肉を入れ、焼く。

 鮪のステーキって美味しいよねー。マグロの味かわからないけど、見た目鮪だし。

 表面に薄く焼き色がついたらひっくり返す。

 なんか、嗅覚が今までよりもよくなったみたいで、凄く、凄くいい匂いがする。

 両面が程よく焼けたら、お皿に盛る。彩りはー、……今は置いておこう。




 ゴシックな部屋で魚料理食べる制服の元女子校生。

 …凄い絵面だ。

 いや、しかし美味しいわー。作り方、雑だったけど美味しいわー。鮪だ。The 鮪。うん、いける。これ、あと40切れは作れる量があるんだよねー。




 ここで、側でプルプルしているスライムに気がつく。

 ……。

「君も食べるか?」

「?…………!(プルプル)」

 そーかそーか、食べるんだな。全く、可愛いやつだ。

 もう3枚焼いて部屋に戻る。

「ほい、どーぞ。作り方雑だけど。」

「(プルプル)」

 スライム君は皿に乗り出すと、魚を包み込ん…え、えっ、体で包み込んだ。いや、うん、そうだよな。スライムだもんな。口とか無いよな。

 スライムの中で溶けていく魚。なんだろう、すごく、何とも言えない光景だ。

「美味しい?」

「……?」

 あれ。これは。もしや、味わかんねーぜフラグか…?



 そんな感じで2人でモグモグ(片方はジュワァァッだけど)してると、突然スクリーンから「うわえぇぇえぇっ!?」っていう声がした。

 うるさいなあ、なんだよ、と思って顔を上げると、スクリーンに魔法使いが映っていた。


「えっ、ちょっ、お嬢ー!それどうした!?何めっちゃ優雅にスライムと食事楽しんでんの!?……え、スライム!?」

「よー、魔法使い。ダンジョン制作は終わったか?」

「うん、終わった!鍵はちゃんと金属じゃなくて熱された石と氷の地面の下に埋まった氷の鍵にしたよ!……じゃなくて、そのご飯とスライムは何!?」

「何それエグい。」

 フォークを加えたまま、ご飯が終わったスライム君を両手で抱えあげる。

「可愛いだろ。召喚のスキルで出てきてくれたんだけど、めっちゃ強いんだぜこの子。」

「あ、うん。可愛い…凄くプルプルしてるけど。」

「ご飯はこの子と狩ってきた。いや、正確に言えばこの子が狩ってくれた。」

「うわつよい。え、狩ってきたって、外出られんの?」

「ダンジョンから半径2.5km以上の場所は1ヶ月72時間が限界だけどね。」

「うわマジか行くわ。」

「橋では気をつけろよ。あと、凄く視力良くなってるから。」

「フラグ建設いらねー。視力は確認しておくわ!」



 接続が切れ、部屋に静寂が戻る。

 手元で激しくプルプルしてるスライムに目を落とすと、ジトっとした目で見られた。心なしか焦っている気がするけど、くそぅ、ジトっとした顔でも可愛いなぁ。




 ここで謎の効果音の存在を思い出す。あれって、レベルアップですよね。そうですよね。

 少しワクワクしながらステータス画面を開く。



 リン シマイ Lv.3

 種族:ダンジョンマスター(闇・無)

 職業:【メイン】ダンジョンの主


 生命力:600/600(+100)

 体力:110/110(+15)

 筋力:45(+15)

 魔力:70/70(+10)

 防御力:35(+5)

 スピード:40(+5)

 魔攻:60(+10)

 命中率:50(+15)


 スキル 【鑑定】【魅了】

【ダークネス】【ダークネスアロー(NEW)】【ロスト】【魔物召喚】


 称号:【異世界より蘇りし者】




 ふむ、2上がったな。

 ステータスの上がりに差があるのは、昨日の筋トレと、個人の相性かな?例えば、俺は魔法特化型ー、みたいな。

 しかし、筋トレがもしも原因で体力と筋力が大幅に上がっているのだとしたら、この体、効果が出るの早すぎな気がするんだけど。



 スキルは、…またダークネスか。これはもう、そういう系統なのだろうか。

 それも気になるし、どうせだからこの際に色々と詳細を見ていくとしよう。鑑定は流石に名前の通りだから、それは飛ばすとしてー…。



 ・魅了

 誘惑の上位スキル。

 常時発動型のスキルで、耐性持ちは基本的に存在しない。同じスキルを持つ者同士では効果はない。異世界人だけが取得可能。

 このスキルを保有する人を見た人は、保有者を絶世の美男美女にしか見えなくなる。


 あの願いはこういう形で叶えられたのか……。


 ・ダークネス

 闇系統の初歩魔法。闇の魔力を放出させる。

 炎のように噴き出させたり、相手を包み込んだりと使い方は様々だが、特定の形を作ることはできない。

 魔攻が上がれば上がるほど威力は強くなる。



 ・ダークネスアロー

 闇系統の魔法。闇の魔力で弓矢を形成し、敵に向かって放つことができる。

 当たった人は、体の中から徐々に闇の力に蝕まれていき、清水を使わないと治らない。

 魔攻が上がれば上がるほど弓矢が大きくなり、清水を使っても解呪が難しくなってくる。



 ・ロスト

 無系統の初歩魔法。相手の攻撃スキルを打ち消すことができる。しかし、相手の魔攻が自身の魔攻より高いと打ち消すことができない。

 魔攻が上がれば上がるほど打ち消すことのできるスキルが増えていく。



 ・異世界より蘇りし者

 何の因果か異世界よりこの地に蘇る事となった者に与えられる称号。

 これを持つ者はこの世界で生まれた人間よりも全てのステータスが高く、レベルアップ時に上がるステータスの数字が大きくなる。

 また、レベルアップに必要な経験値が3割減る。

 さらに、魔法を放つ際の魔力量が5分の1になる。




 うわぁぁぁ。つよいわぁぁぁ。

 神様が「余裕で生きられるよ(キラッ)」って言ってたのってあながち嘘でもなかったんだね。

 これはレベル上げるしかないなあ。

 そう思いながらステータスに再び目をやった時にそれに気づくとこになる。



「……魔力が、全快している……?」

 そう、先程10消費した筈の魔力が全回復していた。なにそれ。まって、さっき10しか消費してなかったのに…もったいないことしたうわぁぁぁぁ!

 確かに、レベル1で自分より数レベル上の魔物倒したら上がるわ!



 無言で立ち上がった俺にスライム君が(多分)不思議そうな顔をする。

「…レベルアップしやすい今、魔力は多めに使用しないとね。という訳で、もう一体召喚するわ。」


 ……ちょっとショックを受けたように見えたのは気のせいだろうか。

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