11. 状況報告
俺は今、非常にぐったりとしている。
そもそも初対面の人とそんなに話せるかっていうんだ。いや、いい人だったけどさ。
だが、内心怪しまれないか心配で若干半泣きになっていたし、名前とか本名にしちゃうべきか偽の名前言うべきかわからなくて遠回しに拒否をした。
こんな直ぐに人と会うとは思っていなかったし、まさかここまで話しかけられるとは思わなかった。おそるべし、魅了。
国に来いとか言われたときはどうしようかと思った。
なんだよ、野宿しなければいけない決まりって。
あの人も人がいいみたいで何故かあっさり信じていたけど…いや、もしかして、内心は疑ってる?で、情報収集のために国に呼ぼうとしたとか……?
…………あり得る。
えー、面倒なことになったかもしれないなー。
やってられない、と溜息をつきながら、周りに人がいないかよく確認する。
人に会ったからにはダンジョンの出入りは特に注意しなくては。
誰もいないことを確認して内部に入る。はー、疲れたー。
部屋に戻ると、スクリーンに四人が映っている。
『おーっす!!お嬢、お勤めご苦労様です!』
「うっす……魔法使いは元気だな…。レベリングできた?」
『もうびっくりだよ!フラグは回収されたよ!海からのご登場には笑うしかなかったね!』
「そうだろうそうだろう。」
『炎で丸焼きにしたんだけど、まさかドロップアイテムがあんな形で手に入るとはな!』
『魔女ちゃん簡単に言ってるけどさぁ〜、橋燃やしそうになったこと忘れないでよぉ〜?』
『うげっ……!?』
「何やってんだ君は。」
軽く雑談をした後にミリさんが『とりあえず、今日の活動報告でもしてみませんか?』と言うので、全員この大陸ではこんな魔物がいたよー、とか、今日これぐらいレベルアップしたよー、とか、アイテムにこんなのあったよー、とかの報告をした。
「あー、ところでさー。大陸で狩りをしていた時なんだけどさー。」
『非常に嫌な予感がするのは僕だけかな?』
「はいフラグ回収ー。人に会ってしまった。」
『うわまじか、え?平気なの?』
「イケメンの門番」
『イケメンはどうでもいいけど、門番かぁー。』
「生まれとか嘘八百で乗り切ったけど。」
と言って、生まれ故郷(仮)についての説明をする。
『あ〜、うん。咄嗟にその話ができて良かったわ〜。
ちょっと無理はあるけどぉ、それだったら自分に不利なことがあっても全部村のせいにできるわなぁ〜。』
「しかし、よく話しかけてくる人だったわ。あとさ、名前ってどうすればいいと思う。聞かれたとき、言いはしなかったんだけど。」
本名言うと、ダンジョンマスターとして会ってしまった時に厄介だし、かと言って嘘ついても、もし鑑定持っている人に会ってしまったら怪しまれる。
「ん〜、鑑定というスキルがある以上嘘は止めておいた方がいいかもねぇ〜。とりあえず〜、街とかに行く時は職業欄からダンジョンの主は外しておけば問題ないんじゃないかなぁ〜。」
「うん、そうだな。サブの職業をメインに入れておこう。
ところで、皆はサブの職業開放された?」
『僕は道化師。何だろう、嘘ついてもバレにくくなるんだって。あと、投げナイフ系の攻撃力が上がるらしい!』
「うわ、それ絶対に魔法使いのいつもの変なテンションのせいじゃん。」
『まあねー、あと僕魔法特化だから正直困っている。一応、ステータスはスピードと防御力は捨てて遠距離から狙う方針で行こうかなって。』
「じゃあ、それに合わせてダンジョンも変えていかないとな。
因みに俺は魔法料理人。熟練度上げていけば料理に好きな効果を付けていけるようになるみたい。」
『ほぉ〜、それは便利ですなぁ〜。
俺はバトルシスターだってぇ〜。
光がそもそも回復系統でぇ、俺はその回復スキルをあえて敵に重ねがけしたら相手の肉体が崩壊したからぁ、多分そのせいじゃないかなぁ。』
「君がシスターとか何事かと思ったけど、納得。」
『ひどい〜っ。城之内さんこんなに純粋で心優しいのにぃ〜。』
「どの口が言ってんだ。」
『私はアートサモナーだって。絵に描いた生き物を具現化することができるっぽい。ただ、具現化できる時間は制限されてるし、具現化された物の強さは絵心に依存するらしくって……。』
『……。』
『…あ〜。』
『どんまいだね!』
「乙でーす。」
『うん、そんな気はしてた!
取得できたのは、ダンジョンの魔物作成をひたすらやっていたからだと思うけど…。
一応その場で描かなくても絵の保存機能はあるから、皆私の絵が上手くなるように協力してね!』
絵が苦手な自覚はあるけれど、絵が人の精神に揺さぶりをかけている自覚はないみっちゃん。
『最後は私ですか。私は普通の職業で格闘家だそうで。
でも、おかしいですよね、ミリさん、こんなにか弱いのに。』
『襲いかかってきた自分よりもデカい熊の魔物投げ飛ばした人が何か言ってるー。』
『ちょっとみっちゃん!』
「投げ飛ばしたんか…。」
一番違和感のない職種な筈なのに、知らない人からしたら、ミリさんの見た目では一番想像つけない職種だよな……。
というわけで、ステータス云々の話はまとまったのだが。
「ねえ、これもしかして俺一人で国に行く感じ?人見知りの激しい俺が?緩和されたとはいえコミュ障の俺が?」
先程は演技と割り切って乗り切れたが、多分一人で国なんか行ったら怖すぎて逆に目つきが悪くなっちゃいそうだよ!道行く人にガン飛ばしちゃうよ!
『うーん。さっき言ってた”転移の陣(ダンジョン用)”とかどう?これを全員のダンジョンに行き来できるように設置するとか。』
ミリさんの言う転移の陣(ダンジョン用)とは、名前の通りで他のダンジョンに行き来できるようになる代物である。
しかし、条件として、移動先のダンジョンのマスターが自分か契約をした相手でなくてはならない。
契約の内容は簡単で、自分と移動先のダンジョンのマスターが互いに互いのダンジョンに移動することを許可するだけなのだが。
また、転移の陣は設置した者(とその仲間はOK)と、使用を許可した者しか使うことはできない。逆に言えば、敵などに使われる心配はないのだが…。
「…高いんだよな。」
10000ポイントするのだ。1つ。
行き先は4つなので、計40000。半分近くもってかれる。
『あー、そうなんですよね。提案しておいてあれですが、私のダンジョンはボス級が何体も必要なので既に結構ポイントを使っちゃっているんです。
頑張っても1つでしょうね。』
『でもさ、僕達見た目人間じゃん。種族同士のいざこざとかあるし、今のところ行けるのは人間界だけでしよ?
だったら、面識のある人がいるお嬢のダンジョンの近くの国に最初に行くことになると思うから、まずはお嬢のダンジョンにだけ設置すればいいじゃん。』
…それもそうである。何だろう、魔法使いに正論を言われると何とも言えない気持ちになる。
『……お前っ…天才か……?』
『ふふふ…谷崎よ。もっと褒めるがいい!
……あと、気のせいかもしれないけど、お嬢にひどいこと思われてる気がする。』
「きっと正解。」
『そこは気のせいって言ってよ!?』
俺のところに転移の陣を設置することになりました。
……これって、今更だけど俺だけ40000ポイント使わなきゃいけなくなってる気がする。いや、正確には必要ポイントDownのおかげで36000ポイントだが。
逆に言えば、俺だけ皆のダンジョンに自由に行けるようになるんだが…。くっそ、ハメられた!
1つの転移の陣に全員が出てくるようにすれば?とか思う人もいるかもしれないが、そんな簡単にはいかないんだよな。
簡単に言えばこうだ。
・魔法使いのダンジョンの転移の陣 と 俺のダンジョンの転移の陣
これが繋がっているのはわかると思う。
でも、これらは言い方を変えれば、
・俺のダンジョンへ行くための転移の陣 と 魔法使いのダンジョンへ行くための転移の陣
ということになるんだ。
つまり行き先は1つしか指定できない。設置する際には1つ置く毎に行き先のマスターと相互許可をする。
まあ、もし同時に4人が俺のダンジョン行きの転移の陣使ったらどうなるんだとか考えたらそういう結果になるのは目に見えてはいたんだけど。小さいし。
「はぁ…まあ、一緒に来てもらうんだし、しょうがないか。いつかはどうせ皆も全員分設置することになるんだし。」
そうなってもらわなければ困る。
ひとつひとつ「そっちに行くよ!」「了解、君のとこにも行くから。」「オッケー!」とか会話しながら設置していく。おいこんなんでいいのか、契約。
36000という多大な犠牲は払うことになったが、まあ、うん、背に腹は代えられない。
もし俺が殺られそうになった時には助っ人として参上していただこう。
「じゃあ、皆試しにこっちに来てみてくれ。」
そう言うが早いか、直ぐにシュンッと音がして、振り返ると後方に設置した転移の陣の上には4人の姿があった。
「うんうん〜、移動時間のロスとかは少ないねぇ〜。」
「あ、お嬢!そういえばさ、魚、なーんか上手くいかないんだよね。今度作り方教えて!」
今それを言うか。
「お嬢、ポイント今多く使わせちゃったので、せめてものお礼。今日倒した熊のドロップアイテムです。」
「あ、どうも…。逆にわざわざすまない。」
ミリさん……できる子……!
貰ったものは、
・ギガンドベアの肉
ギガンドベアの基本ドロップアイテム。
臭みがあり、そのまま加熱すると硬くなるため、調理には注意が必要。
味はいいのだが、調理に手間がかかるため、あまり好まれない。
・ギガンドベアの毛皮
ギガンドベアの基本ドロップアイテム。
とても暖かく丈夫なため、鞣して防具にすると、まあまあの値段で売ることができる。
・ビーソルジャーのハチミツ
ビーソルジャーの基本ドロップアイテム。
凶暴で取得が難しいのと、大部分がギガンドベアに狩られること、甘味料の貴重性故に高価に取り引きされる。
「……。」
まあ、加工は大変ではあるが、あって損はないし、むしろ今後結構使える気がするギガンドベア。(巨大な肉の塊3つ、皮1枚。だが、毛皮は1体丸々分なので、とても大きい。ミリさんよく投げ飛ばしたな…。)
そして、高価であり、且つ甘味料であるハチミツを俺が貰っていいのだろうか。(250ml容器になみなみと入っている。)
「ビーソルジャーは私が倒したギガンドベアが既に倒しちゃっていたものですし。毛皮は私の分はちゃんとありますし、お肉は持っててもまともに加工できる気がしないので。上手く調理できそうなお嬢に渡した方がいいと思います。」
そして、相変わらずミリさんは相手が断らなくてすむように説得するのが上手である。
「そういうことなら、ありがたく頂いておこうかな。でも、とりあえず今は保存しておいて、材料が手に入ったら皆で食べよう。ちょうど皆俺のダンジョンに自由に行き来できるようになったことだしさ。」
アイテムボックスに入れている間、アイテムの品質は落ちない。つまり、食べ物は腐らない。冷蔵庫ぇ。
まあ、しかし今更そんなこと言っても仕方がないか。
貰ったドロップアイテムを見ながらメニューを考える。
…………作るとしたら熊鍋とはちみつクッキーかな。




