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短編

天才作家の孫2

作者: oga

ダザイは作家になることをようやく諦めた。

それからある出来事を得て、コンビニでバイトをするようになっていた。

来る日も来る日も、ひたすらレジを打ち続け、弁当をレンジで温め、フライヤーで冷凍のナゲットを揚げ続ける日々だ。

先輩からは、「ダザイ君はいつになったらまともに仕事覚えてくれるの?もう30だよね?」

と嫌味を言われ、歯を食いしばって仕事をしていた。


作家を諦めたダザイを更に追い詰めた出来事、それは半年前の就活だ。

自分ならそこそこの企業に就職できるだろう。

そんな謎の自信を持って、マイ○ビに乗っている、企業の中途採用枠に応募した。

しかし、10社受けても不採用。

面接官からは決まってこう言われる、

「大学を出てから10年も何をしていたのかね?職歴なしじゃ、うちじゃ使えないなあ。うちは即戦力を求めてるから」


そして3か月の活動も実を結ばず、土砂降りでスーツが水びだしになったのを機に、就活をやめた。

そして流れ着いたのが今のコンビニであった。

その時のダザイの心理状態は、とてもここでは書くことができないほどに、荒んでいた。


毎日働き、ののしられ、帰宅しすぐ眠る。

そんな日々だった。

ある時、突然むなしくなった。

腐った先輩に対する、頭の中にこだまするののしりの言葉。

「くそったれ、死んじまえ、もうこんなバイトやめてやるよ」

俺の頭の中は、それだけだ。

考えたくないのに、考えてしまう。

「うわああああああああああっ」

ダザイはアパートから身を投げ出そうとし、すんでのところで踏みとどまった。

「う、うぐ……」

涙がとめどなく流れ、地面を濡らした。


その日から、ダザイはストーリーを考えるようになった。

何か適当な題材を見つけて、キャラを考え、ストーリーを考える。

その時だけは、嫌いな職場の人間のことを考えずに済んでいた。

ダザイの考える話には、次第に、主人公の苦難や、試練が盛り込まれることが多くなった。

今までは流行りのストーリーをパクるだけだったが、そこに読者を引きつける「共感」の要素が生まれた。


ある日、ダザイは友人と会う機会があったため、近くの居酒屋で一緒に飲むことになった。

「お前まだ話作ってんの?」

「ああ、気が向いたらな。今はもう作家は諦めたよ」

「見せてくれよ、笑わねえから」

友人にそう言われ、まあいいか、という気持ちで携帯から自分のページにアクセスし、スマホを渡した。

他人の評価なんて今はどうでもいい。

馬鹿にされようが、今度はそれをネタに話を書いてやる、くらいに思っていた。

だが、友人の顔は真剣そのものだった。

「ダザイ、お前の話、読めるわ」

初めてそんな風に言われた。

かつて、「才能ないわ、やめちまえよ」と言って来た親友がだ。


ダザイは気が付いた。

売れる話はなんで売れるのか。

それは、たとえ異世界に行こうが、そこで作者が体験した苦難をそのストーリーにうまく組み込んでいるからだ。

そして、それが読者の共感を呼んでヒットにつながるのだ。

今までのダザイの作品は空っぽだった。

自分が感じることを小説に組み込んでなかったからだ。


帰り道、友人にこう言われた。

「お前、少し大人になったよ。これからも頑張れよ!」

何か、胸の中で熱いものが込み上げてきた。

職場の人間関係や、仕事がうまくいかず、自分自身が許せなくなったり、

そんな辛い日々ばかりだった。

でも今は、どんなにつらいことがあっても、ストーリーを考えれば乗り切れる。

ダザイにとって、作品を作ることは名誉を得るためではなくなった。

人生を乗り切るために、ダザイは今日もストーリーを考える。


終わり

ほんとはそっこー消すつもりだった天才作家の孫の続編でした

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