俺様とやかん製造工場〜誰の為のやかんなのか〜
この小説は、グループ小説第十六弾「視点の変わる小説」に参加して生まれた作品です。
第十六弾におけるこれまでの作品は、【第一話】は南風 十羽さん、【第二話】は亜月 聖さん、【第三話】は湖唄さん、【第四話】及び【第五話】は菜乃葉さん、そして【第六話】は私、アンカーの【第七話】は春野天使さんへと続きます。
まだ他の先生の作品を読まれていない場合は、先に他作品を読まれる事をお勧めします。(作品コードは後書きにも書いてあります。)
それでは、どうぞご覧下さい。
――某国やかん製造工場にて――
「オラオラ、おめーらもっと働かんかーい!」
「ひ……ひぃぃっ!? はははは、はいっ! 分かりましたっ、手下どもにはそう言いまくっときます、てゅっ、テュルル様ぁっ!」
ふぅ、世話の焼ける奴らめ。とっととやかん作りまくらないと、女王様がうるさいんだっつーの。とにかく作りやがれってんだ、この、豚野郎!
そう思ったのも束の間、たった今命令を伝えたばかりの部下がドタドタと俺様の所に走り寄ってきた。
「テュルル様! テュルル様ぁっ、ご報告が!」
「あん? 何度も呼ばんでも聞こえてるっつーの。ジョニー、てめぇ俺様の事を馬鹿にしてんのか」
「い、いえ。あのう……製造マシーン一号と製造マシーン二号が」
「あいつらがどうかしたのか、はっきり言え」
「故障しました」
そうかそうか一号と二号が故障したのか、そりゃ大変だご愁傷様だな……って、えぇぇぇ! ななな何ぃっ!? 奴らが故障!? マジでか、こんなにクソ忙しい時にかよ! ただでさえ女王様に文句を言われたら面倒臭いんだっつぅのにヨォ!
あーあ、どうしてくれんのさ。目の前が真っ暗になりかけてんじゃねーか!
それに何より、“女王様のお仕置き”は何よりも怖いんだぞ!? 口じゃ言えないあんな事やこんな事が沢山起こるんだよなー。(遠い目)
チッ、仕方ない。今から何か対策を練るとするか。
……お? そう言えば俺様の紹介が遅れていたな。
俺様の名前は“ぷるるタッタカター王家 第一〇七世・テュルル”だ。読み方は“ぷるるたったかたーおうけ だいひゃくななせい・てゅるる”だ。
そんな俺様なんだが、どうだ? 凄いだろう。羨ましいだろう?
なんつったって、あの“ぷるるタッタカター王家”だぞ? 王家だぞ、王家! 俺は代々続いている王家のご子息、一〇七代目なんだぞ!?
俺様の事は通称『テュルル様』と呼んでくれたまえ。気軽にそう呼んでくれたまえ! ワハハハハ!
……ん? 何なんだ? 何故だか冷たい視線を画面の向こう側から感じるんだが。
ふむ……ま、まさかなぁ。いやでもまさかそんな訳が無い、よな? ……多分。
……。
……あ! ちょー待てコラコラコラコラァッ!
まさかまさか、この俺様の名前がダサいだなんて思った奴がいるんじゃねーだろうなぁ!?
……。
ぐすん。誰も何も言ってくれない。
っていう事は、や、や、ややややっぱりそうか、そうなのか!? 皆、俺様の名前がダサいとか思っているんだな!?
……。
うわーんっ絶対にダサくないもんダサくないもんダサくないもんっ! 僕ちゃん絶対ダサくないんだもんっ!
「……様」
ぐすんぐすんグスン……。うわーんっ!
「……ュルル様?」
いいもんいいもんっ、どうせ僕ちゃんは王家のくせにやかん製造工場で働き詰めの毎日なんだもんっ、どうせ僕ちゃんはモテモテじゃないんだもんっ、どうせ(以下略)。
「テュ、テュルル様っ!? 聞こえていらっしゃいますかテュルル様っ!? どうなさったんですか、しっかりなさって下さい!」
「! おわっ!? ジョニーか、おおおお前いつからここに」
「んー、いつからと言われましてもー」
ジ、ジョニーの奴め、何でそんなに困った顔をしているんだ? まさかさっきの独白を聞いていたんじゃ。いや、でも心の声だし……なぁ。
まあその、“他人の心の声を読む力”は本来女王様が持っている力なんだが、俺様は以前その力を女王様から頂いた事があるんだ。女王様は滅多に他人に力を授けたりしないから、こいつがその能力を持ってるわけが無いよな。……無いと良いな。
恥ずかしいから、もし聞かれてたら困るんだよ。
「えーとですねー、『俺は代々続いている王家のご子息』だとほざ……仰られている辺りからですねー、はいー」
「お前、今『ほざいて』って言おうとしてなかったか?」
「……全くもって気のせいです、はいー」
い、今の間は何だったんだ!?
ってか、俺様の独白を殆んど聞いていたんじゃねーか! そして心の声を読むなーっ!
「そ、そうか……_| ̄|○」
「テュルル様、読者の方々やその他作者の方々に大変迷惑なので|『_| ̄○』とかいう顔文字は使わないで欲しかったです、はいー」
うるせー! オメーが余りにもうざい喋り方をするからだろーが! (と、開き直ってみる)
「その喋り方っつうか語尾、どうか止めてくれ、気持ち悪いし」
「はいですー……じゃなくて、承知致しました」
あーあ、口癖が抜けなくなっちまったみてーだな。
「それにしても! テュルル様、ご自分の独白だけで三点リーダを使いまくったり、無駄に記号を使いまくったりしないで下さいよ! それに、スペースをきちんと考えて下さらないとなかなか話が進まな」
――ポカッ!
「痛っ! ちょっ、いきなり殴らないで下さいよ!」
「フン、どうせお前自身の事も紹介して欲しいんだろう? ようし、いいだろう。この俺様が代わりに紹介してやるよ」
えっとだな。俺様の目の前で、殴られた頭を、目に涙を浮かべながらさすっているコイツはジョニー・ヘムロックっていう奴だ。俺様の直属の部下だ。
認めたくはないが、なかなか、結構なイケメン……だと思う。まっ、俺様よりは劣るがな。ワハハハハ。
――ポカッ!
「うぐぅっ……おいコラ痛いじゃねーか何しやがんだコノヤロウ!」
ジョニーがいきなり殴り掛かってきた。奴め、涙目でこっちをきつく睨んできやがる。手下のくせに、随分と妙に根性がありやがるんだな。
何て奴なんだ。どうしてやろうかねぇ。
「上司に拳をお見舞いするなんて、こりゃまた」
――ポカッ!
「痛っ! お前二度も何してん……えぇぇぇ!?」
またしてもジョニーに頭を殴られたもんだから文句を言おうとしたのだが、今迄ジョニーと関わってきた中で一度たりとも見た事がない“怒りのオーラ”みたいなモンを纏っていたもんだから、思わずビビっちまった。
「テュルル様? 分かっておられますよね? 女王様から“滅茶苦茶調子に乗った時”に何が起こるのか、お聞きになられた事はありますね?」
表情は笑顔なのに目の奥が全く笑っていない。奴の背中に見えない炎が見えてるよぉ。ちょ、ちょー怖ぇぇぇ。ど、ど、ど、どーしようヤバイよヤバイよ、ジョニーがマジでキレると超怖いんだったよー。
あ! 変な呪文を唱えだしやがった! こりゃあ女王様から授かったっつう“例のアレ”か? アレなのか? 何だったっけ、手下が上司を教育する為のかなり理不尽なアレなのか!?
「テュルル様、覚悟っ!」
「うぉぉぉやーめーてーくーれー! ぬぉっ――」
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【※良い子の皆様へ大切なお願い※】
現在、テュルル氏とジョニー氏との間で見るに耐えられない場面が繰り広げられていますので、その場面を省く事をご了承下さい。
その代わり、美しく綺麗なお花畑をご想像される事をお勧めします。
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「お母さんゴメンナサイ」
「よろしい」
目の前のジョニーは笑顔だった。俺様もとい俺は涙目だ。
何が起こったのかは……言えませんゴメンナサイ。そして俺の口調が変化している事はどうか気にしないで下さい。
「ところでジョニー、さっきお前さんが使っていた“他人の心の声を読む力”、前から使える力だったっけ?」
「えっとですね、女王様が『ランプの精第一三番 花の舞い散る里のピーターパン号』を手放され、代わりに新入りのランプの精を迎えるという話はご存知ですよね? その『ランプの精第十三番 花の舞い散る里のピーターパン号』が持っていた力というのが“他人の心の声をちゃっかり読む力”なんですよ。ですから、どうせ使われない力ならと思ってメイファさんを通じて交渉して、結果的に頂く事になったんですよ」
「へー。“ちゃっかりな力”、ねぇ。『ランプの精第一三番 花の舞い散る里のピーターパン号』の力だったのか。……それにしても長ったらしい名前だったな」
「そうですね」
女王様の趣味は、俺には全く理解出来ん。しかし“新入り獲得作戦”なるもののお手伝いをしているのが俺の王家なんだ。本当は、正確には『準王家』と呼ぶんだとさ。
俺の所だけじゃないんだが、準王家に属する皆が、国家のトップで本家王家の王様の、娘である女王様の「あれが好き♪ これが欲しい♪」という言葉を叶える為に、それぞれが何かしらの工場で日々陣頭に立って指揮しているんだ。
んで、「新しいキャラが欲しいから頑張ってやかん……じゃなくてランプを沢山作って欲しいの☆」という何ともお茶目な一言で、何故か俺の所で請け負う事になったんだ。
やかん……じゃなくてランプを、だ。どう見ても、っつうか工場名自体に“やかん”の名が刻まれているが、女王様曰く「そんな細かい所を気にしてたらお仕置きだからね☆」との事なので、何も言えない。
「そう言えば、ラルクさんから今回の新入りの名前が決定したと聞きましたよ。また長ったらしい名前なんだそうですが」
ジョニーは、そう述べると一旦大きく息を吸った。
「『ランプの精第一〇八番 スペシャルゴシック様式のスーパージョゼフィーヌ号』だ、そうで、す」
息を切らしながら見事に一気に新入りの名前を言い切った。入れ替わりの割には『一〇八番』って事になってるんだな。
「……」
「……」
「……またか」
「……またですね」
俺達はため息をついた。
「『ジョゼフィーヌ』って女性の名前だよな」
「ですよね、ナポレオンが愛した女性の名前と一緒ですよね」
「『ランプの精第一〇八番 スペシャルゴシック様式のスーパージョゼフィーヌ号』って男だよな」
「ですよね、決してオカマではありませんよね」
女王様って、本当に何を考えているのか分からないな……。
「ダサいな」
「ダサいですね」
『そうなのよー、ダサくて困ってるのよー』
「確かに困るな」
「困りますね」
『そうよねー、困るわよねー』
女王様の趣味は変だ。絶対変だ。
アレッ? そう言えばジョニーの顔色が少し変だぞ? 気のせいだろうか。
『ねー、絶対変よねー』
「だよなー」
「えっと、はい、変……ですね」
『どうせ私の趣味って変よねー』
「そうだな、変態で悪趣味だよな――って」
そこで初めて俺は言葉を失った。ジョニーの顔色がおかしかった理由が分かった気がしたからだ。
「……なあジョニー、お前、一度後ろに振り向いてみろよ」
「嫌です、絶対嫌です、僕は一度も『変態で悪趣味』だなんて口にしていませんから」
丁寧にあっさりと断られた。
そして俺とジョニーは震え上がる。
「ねーねー、だ・れ・が、変態で悪趣味、な・の・よ?」
「……」
「……」
「黙っていないで私にも教えなさいよー、ねっ?」
ヤバイよヤバイよ。(再び)
怖い、怖い、こわい、K・O・W・A・I……!
「私は女王様なのよ!? 教えてくれたっていいじゃない! そう、そうなのね!? 私の悪口なんでしょ! それ位分かってるわよ! ――こうなったら」
かなりヤバイって! いつの間にか女王様がいた事に気付かずに逆鱗に触れちゃった感じ!?
ア! ジョニーの時みたいに変な呪文を唱えようとしてる!? どどどどうすれば……!
「ABURAKATABURACHICHINPUIPUI」
『ひぃぃぃ……! ぐぅぉ――』
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【※良い子の皆様へ再び大切なお願い※】
現在、女王様の妙な呪文の効果によりテュルル氏とジョニー氏の身に、見るに耐えられない事態が勃発しておりますので、その場面を省く事をご了承下さい。
その代わり、美しく綺麗なお花畑をご想像される事をお勧めします。
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『お母ちゃまごめんなちゃい』
「気持ち悪いけれども、まあ、いいわ」
ふぅ。
皆様、どうか何も聞かないで下さい。(泣)
……そう言えば、何で女王様がいるんだ? 何か用があってここに来たんじゃないのか?
「そうそう、私ね、ここには用があって来たのよー」
え? 何だ? まさかまたとんでもない用事を押し付けてくるんじゃ……?
「こないわよ!」
こりゃまた失礼。いつもの事だから、つい。
そう言えば女王様も“他人の心の声を読む力”を持っていたんだったっけな。
あの力は元々女王様が持っていた力なんだよな。
「そんなどうでもいい説明なんか要らないわ。私の話を聞きなさい」
はい、すいません。
「ある“旅人”が……いや、“私の大切な人”がさっき久し振りに城にいらしたの。だからね、お願いがあるのよ」
「えっと、はい……何でしょうか」
何何何? 何なんだ? “大切な人”って何なんだ? それって一体誰なんだ?
「あのう、それってもしかして。僕、以前ラルクさんから聞いた事があるんですけど、『女王様に大切なメッセージを残して城を去った』という、あの旅人さんの事なんでしょうか?」
「そう! そうなのよジョニー! さすがジョニーね! ○ョニー・デップに似ているイケメンなだけあるわね!」
どんだけ褒めてんだよ!
ってか、ジ○ニー・○ップに似てるのかコイツ!? ジョニーも、言われたからって照れてるんじゃねーよ!
女王様。さっさと用件を済ませませんか?
「それでね、私、その戻ってこられたその方――デイビッド・ヘミングウェイさんと結婚する事になったから、祝杯の為の伝説級の“黄金のランプ”と呼ばれるレベルのやか……ランプを作って欲しいのよ」
あっさり言うなー! そして今、はっきりと「やかん」と言いかけてなかったか!?
「け、け、結婚!? しかも黄金のやか……ランプを!?」
俺もつられて人前で言い間違いそうになっちまったじゃねーか。
「そうよ、明後日に招待状を発送して明々後日には式を挙げる事になってるから、今すぐ準備を宜しくね」
何てこった! その戻ってきた旅人やらと結婚するだとか言い出すなんて!
その上にあの伝説級の黄金のやかんもといランプを作れだなんて無理だよ! あれは作るのが難しいんだぞ! あっさり「宜しくね」と言われて簡単に作れる代物じゃないんだぞ!?
手下獲得用のやかんもといランプとは違ってただのやかんだしお祝い用ってだけの事だが、だからこそ想いを込めて作らねばならんのだ。
「女王様、それは絶対無理ですよ! “黄金のやかん”は簡単に作れるものではありません!」
あーあ、俺、とうとう「やかん」ってハッキリ言ってしまった。
「……“やかん”じゃなくて“ランプ”よ」
わざわざ言い直したか。さっき女王様も言い間違いかけてたくせに。
「分かってますよ! そして今すぐは無理です!」
「今すぐ宜しくしくね」
「はい分かりました」
俺はあっさり了承してしまった。
「そうだ! ジョニー、アナタも結婚するわよね?」
「……は?」
「だーかーらー、アナタも結婚するでしょ?」
「……は?」
「だーかーらー、結婚するでしょ? メイファと」
「なっ!? ぼぼぼ僕が結婚!?」
何だ何だ、ジョニーもか! そう言えばジョニーは侍女のメイファさんとやらと長年付き合ってたんだったっけな。噂でラルクとやらがメイファさんを好きだと聞いた事があったが、そいつは二人の関係を知らないらしいんだよな。ジョニーがその事を知っているかは知らん。
ラルクとやらには申し訳無いが、二人の事を後押ししてやろうかな。
「ジョニー、俺が後押ししてやるからメイファさんと結婚しろよ」
「そうよ、しちゃいなさいよ」
「で、でも……」
ジョニーは困った顔で黙った。もしかして、実はラルクとやらの気持ちに最近気付いていたから複雑な気持ちで過ごしていた……とか?
いきなり言われてどうしたらいいのか分からない気持ちは分かるが、長年付き合ってるんだから、今結婚してもいいかと思う。
因みに俺は、独身生活を謳歌している。彼女の有無は……空しくなるから聞かないでくれ。
「それに、とっくに『招待状にジョニーとメイファの結婚の事も書くように』って頼んじゃったわよ」
「ハァ!? そんな勝手に……!」
さすが女王様。手を回すのが早かったか。ジョニーは言葉を失っているらしい。そりゃそうか、いきなりだもんな。
「いいじゃない! ……ね? それとも、私の大事なメイファとじゃ結婚出来ないとでも言うのかしら!? ――それなら」
げっ! 女王様が怒り出した!? しかもさっきの変な魔法みたいなのを掛けようとしてるじゃねーか! いくらなんでもそれは理不尽でしょう!
「ちょっと待って下さい、確かに、僕はメイファの事は大好きです、愛してます! ただ、僕自身がまだ一人前の男だとは思えないのです! だからすぐには結婚出来ません!」
「……そう。でもね」
女王様は落ち着くと、ジョニーに言い聞かせる様に語り出した。
「何故私がアナタの上司のテュルルと同様にアナタにも特殊な能力を授けたのか、分かる? ――それはね、アナタを一人前の男として認めるに値すると感じたからよ。一人の男として、メイファという一人の女性を愛しているじゃない。違う? 違わないでしょ? それはテュルルも気付いていると思うわ……ね、テュルル?」
「ああ、そうだな」
「女王様、テュルル様……」
ジョニーは感極まって泣き出した。俺と女王様ももらい泣きをしそうになりながらジョニーを宥めた。
「さあ! 明々後日には挙式よ! 張り切るわよ〜。テュルル、“黄金のやかん”の件、宜しくね」
あ、その事忘れてた。ってか、結局“やかん”でいいのか。
でもまあ、めでたい事が起こるんだ。可愛い部下の為だと思い込めばどうにかなるかな。……ならないか。ならないよな。女王様の為だもんな。
俺は結局、“黄金のやかん”を一日で作る事にした。そのやかんは許された者しか作る事が出来ないのだが、俺にはそれが可能なのだ。一晩中作り続ける事になるだろうが、もういい。最初は面倒臭いと思ったが、気分が盛り上がっているから良しとしよう。
ん? 手元の携帯電話が鳴っている。ジョニーからか。もしかしてメイファさんに正式にプロポーズをして成功したのかな? フフフ、少しからかっちゃおうかな。
「おー、ジョニーか? どうした? プロポーズは成功したのか?」
『はい! お陰様で成功しました! もう何て言ったら良いのやら……』
「おいおいまた泣いてるのか? めでたい事じゃないか! な?」
『は、はいそうですよね……ありがとうございます!』
良かったじゃねーか。こっちまで嬉しくなってきやがったぜ。
『ところでテュルル様』
「ん? もしや何か頼み事か? 何だ、何でも言ってみろ」
『はいっ!』
嬉しそうだな、羨ましい奴め。でも……嫌な予感がするのは気のせいか。
『僕達の為にも女王様と同様にお祝い用の“銀色のやかん”を作って下さい!』
ズコーン! 予感的中……。
「一般的には祝い事には“銀色のやかん”だったな。忘れていたが、やはりそうきたか……_| ̄|○」
『テュルル様、まさかまた|“_| ̄○”を浮かべていま』
「浮かべておらん! 断じて浮かべておらん!」
『必死ですね』
うぉぉぉ……! “銀色のやかん”も作らなきゃいけないのか、俺に寝る時間というモンは無いのか!?
『じゃ、宜しくお願いしまーす!』
――……ツーツーツーツー……
「あぁぁぁー! 強引に電話を切られたー! 何なんだよー! ふざけるなー! 誰か俺に癒しの時をプリーズぅぅぅ!」
俺の精神は崩壊した。
そして俺は、一晩中かけてやかんを作り続ける羽目に陥った。――俺のプライベートは、ジ・エンドさ。
さらば、俺の青春よ。
――終わり――
皆様おはようございます、こんにちは、こんばんは。初見の方は、初めまして。祐里子と申します。
今回の作品は、交流サイトの掲示板で春野天使さんが企画された事から生まれた作品です。私にとって初のオリジナル作品なので緊張しています。
――グループ小説第十六弾におけるこれまでの作品――
【第一話】
強引なランプ(N1277D)/南風 十羽先生
【第二話】
女王様の側近の日常(N1420D)/亜月 聖先生
【第三話】
心は今もあの人の元に。(N3335D)/湖唄先生
【第四話】
女王様の涙(N3435D)/菜乃葉先生
【第五話】
あなたに贈る花(N3523D)/菜乃葉先生
まだ他の先生の作品を読まれていない方は、是非読まれる事をお勧めします。
企画への参加を表明した当初、自分の番が回ってきたら出来るだけ早めに続きを書こうとしていたのですが、ものの見事に遅れてしまいました。他の参加者である南風 十羽さん、亜月 聖さん、湖唄さん、菜乃葉さん、企画された春野天使さん、本当にすいませんでした。そしてお待たせしました。何とか投稿する事が出来ました。
初の“ほぼ”オリジナル作品という事もあって、出来具合はイマイチだったかも知れませんが、とりあえず投稿出来て良かったと思います。
アンカーの春野天使さん、後はお任せします。ラストがどの様になっていくのか、楽しみにしています。
それでは、またどこかでお会いしましょう。
2008/02/19 祐里子