7話:出会い
この世界には“精霊”と“聖霊”の2種類存在している。
“精霊”とは世界の存在する元素そのもので火や風、水といった自然そのものを言う。意思もほとんどないが影響があると形となる事もある…
そして“聖霊”とは、精霊が明確な意思と自我と姿形を得た、上位の存在である。
普段は聖霊界と呼ばれる場所にて暮らしている。
人間界にも住んでいる者もいるが聖魂と呼ばれるエネルギーを消費する為ほとんどが聖魂のあふれる聖霊界に戻る……
“聖霊”の体の大半は聖魂で構成されて維持されている。
構成されている聖魂を失った聖霊は消滅してしまう為、人間界では消費を抑える方法として眠りにつくか、他の聖魂で溢れるモノから聖魂を提供して貰う事である。
そう……人間との契約という形で聖魂を得る。その代わりに、聖霊は人間に力を提供する。
それが、聖霊使いの人間と聖霊との関係なのである。
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【ルミナside】
(ふぅ、さて…うん、ここまでは順調に来れたな。あの人の情報通り警備しているって言う学院の生徒にも出くわさないし…)
闇夜に紛れながらヴェストレア学院に潜入に成功した俺は依頼してきたあの女性の情報通りに歩を進めていた。
聞いた話では学院には学生騎士と言う、学院の秩序や警備を行っている集団がいるとの事だった。
ただ、今現在その学生騎士に所属しているらしい学生には遭遇していない。
あの人の情報では今の時間、歩を進めているルートに学生はいない、となっていた。
そして実際此処まで一人も出くわす気配はない。
一体どこで知り得たのだろうか?と思ってしまう。
(…うん、ここの先に進めば、依頼を受けた【剣】が封じられている場所に行ける筈。……ん?この感じは聖霊の波長?…誰かいるのか?)
気配を殺しながら目標に向かっていた。そしてあと少しで依頼の【剣】とやらがある場所に近付いたその時だった。
聖霊の持つ人の気配がしたのだ。物陰から学院の広場と思われる場所の様子を確認してみた。
(この時間は警備している騎士団の学生もいないと言っていたのに、あの人……)
そう思いつつ気配を消しながら辺りを探る。
するとそこにいたのは遠目にであるが夜の空間で分かる艶のある瑠璃色の腰まで伸びた髪とヴェストレア学院の学生服を纏った少女だった。
(“―綺麗な娘だな”)
と、ルミナはその少女に対して素直にそう思った。
無論外見だけではない。
ルミナは感じ取っていたのだ。
目に映るあの少女の内に秘められた聖魂の輝きに。
そんな風に目を奪われていると、その女の子が何やら口遊むと右手甲が光る。そして無手であったその右手にはレイピアの様な武器が握られていた。その女の子が握っているものを見て(“まさかあれは…”)と思っていると、少女のレイピアの様な武器が光る。少女の周囲に大きめの種子の種の様なものがいくつも現れた。
そして少女が何か、恐らく発動した術に対しての何かを呟いたその瞬間だった。種子の種の様なものが爆発し周囲に飛んでいった。
おそらく制御に失敗したのだろう。そう思う間もなくその失敗した一つの種子弾が俺のいる方向に向かって飛んできた。
彼女に見惚れていた俺は反応に送れて、俺に着弾はしなかったのだが、思わず「うわっ!」と声を上げてしまった。
「!?…誰?誰かそこにいるの?」
当然、俺の驚いた声に少女も気付かれたようだ。
俺が感じた聖魂の輝きを表すかのような朱色の瞳で、俺に警戒し睨んでいた。
次話ヒロイン視点。