5話:とある親子の一幕~リナSide~
某ギルドの宿にて一組の、男1人女2人の3人家族の親子がいた。
【グラード・クイナ】。
短めの茶髪に鋭い目をしているが優しさを持つ、そんな眼差しをしている。服装は黒いジャケットにズボンと黒ずくめの出で立ち、そして腰には二振りの短剣が収められている。
この一家の父である。
【エルシスネ・リア・クイナ】。
夫であるグラードやルミナからは『エル』の愛称で呼ばれている。
容姿は、薄い水色の髪を腰の辺りまですらっと伸びており、エルシスネの故郷であるカナン帝国の衣装を身に着けており、首からは一つの青い宝石のペンダントをかけていた。病弱な為あまり体が丈夫な方ではない。
この一家の母である。
【リナ・クイナ】。
父親であるグラードと同じ茶髪で、その長い髪を左右に花の髪飾りでツインテールに纏めている。そして母親であるエルシスネと、同じ色違いの衣装を身に着けていた。
リナは、今年で14歳となった女の子。
生まれながら聖魂をリナは有している。本来ならリナの年齢なら聖霊使いとして機関に所属し聖霊使いとして学ぶのであるが、リナには生まれた時からある特異体質を持っていた。
それは聖霊との契約を拒絶してしまうと言う異能だった。
異能と言うより呪いに近いものである。
グラード一家は“何でも屋”と言う些細な依頼でも、何でも依頼を受ける事で報酬を得る事を生業としていた。数年前までは色んな地域で活動していたが最近ではこの地域にあるギルドを拠点としていた。
そのギルドの宿泊施設の一室。グラード一家が間借りしているその場所にて、グラードの娘であるリナの叫びが上がっていた。
「えー! 兄さんてば、もう次の依頼に行ったの!?兄さんが久々に帰っているって聞いたから、急いで帰ってきたのに! もー!父さん、兄さんに会ったのなら引き留めておいて欲しかったのに!」
リナは昼間にルミナと出会っていた父であるグラードに不満をぶつけていた。
リナは自分と近い歳のルミナの事を、5年前に出会ってから異性としても、兄以上の感情で慕っていた。
しかしここ最近は、ルミナが独立した事もあり、ルミナが一人で依頼を受けたりするようになって一緒に過ごす時間が減っていたのだ。依頼が被ったりとリナはルミナと1週間程会う事が出来なかったのである。
「しょうがねぇだろ。あいつが依頼を受けたのは、俺が出た後になんだから」
夕方、依頼を終えての帰りにエルシスネとリナと合流したグラードは、昼間に依頼を終えたルミナがギルドに帰って来ていた事を伝えた。伝えた後、二人とも、特にリナは最近会えなかった為寂しげな様子が多かったので嬉しそうにしており帰りを急いだ。
しかし、ギルドに急いで帰った3人だが、その当人であるルミナその姿はなかった。
3人が受付嬢に確認した所、グラードがギルドを出て暫くしてルミナに依頼をしに来た人がおり、ルミナはその依頼を受けてすぐにギルドを出発した。と、受付嬢に聞いたのだった。
その話を聞いたリナは不満を爆発させた。
そしてその不満の矛先はグラードに向かう事になった。
グラードはそんな娘に困っていると、グラードを庇う様にエルシスネがリナに話し掛けた。
「無理を言うものではありませんよ、リナ。私たちは“何でも屋”なのです。 それにあの子は既に独立しているのですから。あまりお父様を困らせてはいけませんよ」
エルシスネは、リナを優しく諌めた。同時に「…困った子ねえ」とルミナの事も微笑する。
「ゥ~でも~」
リナは納得していなかったようだった……
ルミナの受けた依頼の内容にもリナは不満があったのだ。
ルミナが受けた依頼の内容は難易度Aで極秘となっていたからだ…
難易度Aは危険な依頼が多い。暴走している高位の聖霊の討伐や、潜入任務といった危険な任務が多いのだ。
最も、ルミナは、既に4年前にグラードの手伝いで『何でも屋』として、とある組織の潜入調査の依頼を受けたりしている為、リナ達は心配している事も不満の原因であった。
「兄さんのバカ……いくら“□□”の力を使えるからって危険な依頼を受けなくてもー」
「「!? リナ、それは口にしてはいけねぇ『ません』!!」」
グラードとエルシスネは、リナが発した言葉に強く諌めた。……先程、リナが口にした事が、各国の、特に六強国にある聖霊本部に伝わってしまうと、ルミナにとって困った事になるからだ。
それは今のこの世界においては異端な事だからだ…
「っ!?……御免なさい」
リナも今、自分が口にした事が失言であったと二人に謝った。
……
グラードとエルシスネは、娘の落ち込んだ姿に苦笑した後、
「「本当に困った子だな『ねぇ』」」
とため息と共に苦笑しあうのだった。
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次話よりヴェストレア学院潜入編。