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セイシェレイド・ユグドラシル  作者: 山都光
第一章~始まり~
3/15

3話:新たな依頼の前触れ~少年と受付嬢~…受付嬢Side

「はふぅ~、ふと見せるルミナ君の笑み。いいわァ、可愛いわ~ムフフ」


先程まで対応していたルミナが頭に浮かび思い出し笑いをする受付嬢。

その様子は今年で25になるとは思えない少女のようである。


ルミナ君。

今年で確か16歳になる男の子。

容姿は人間界ではあまり見かけないサラサラのショートの銀髪。

瞳の奥が深く見詰めていると引き込まれると思える紺色の瞳。

顔立ちは中世的で体の線も細めの為、化粧を施して女物の服を纏えば、彼が男の子とはわからないと思える。

実際数年前からその容姿を活かしての依頼を受けているみたいね。まあ近年はあまりやりたがらないようですけど。

それはまあ一般的な男性であれば当然と言えば当然なのだけども。


彼は数年前……あの時からだから、えっと…もう4年になるかな。

ルミナ君は今現在『どんな依頼でも受ける“何でも屋“』を営んでいる。

【何でも屋】。それは依頼の内容は些細な雑用から、暴れている聖霊の討伐まで、その名の通り何でも受けている。


評判は良く、彼が受けた依頼は最後まできっちりとこなされるので、彼に依頼を申し込むリピーターも今では多い。


今ではルミナ君の登録している冒険者ランクは男性の身では最高と言える『A』となっている。

僅か数年でしかもまだ16になるくらいの年齢でありながらその域に至っている。


(驚いたわよね~。強いと分かってたけどもさ~)


ルミナ君は強い。

並みの男じゃ彼に怪我一つ加えるのも不可能なくらい。

先程達成した依頼。

暴れ聖霊の討伐。

基本聖霊相手には複数の人員で挑む。それが冒険者の男性の殆どが聖霊討伐の依頼を受ける常識なのです。

けどルミナ君は違う。

どの様な方法を用いているのか私にも分からないけど、ルミナ君は特にここ数年は単独撃破を何度も成功させている。

だからこそ数年の短い期間で【A】にまで上り詰めているんだけどね。



私は思い出す。

あれは数年前。彼がまだ12歳の頃くらいだったなぁ。

彼が初めて此処のギルドにやって来たのは…。

私が受付嬢の見習いを卒業しての初めての時だったわ。


初めての独り立ちで私はやる気満々の気持ちだった。


(さぁどんな冒険者でも来るがいいわ!…厳ついのは嫌だけど!)


そんなやる気に漲る私の前に一人の少年がやってきた。


ギルドの扉を開けて入って来たのはあまり見た事のない銀の髪をしたまだ子供の少年だった。

入ってきた少年に周りにいた冒険者の者達も怪訝そうな表情でいた。


「なんだあのガキんちょは?」

「依頼でもしに来た口か?」


そんな周囲の声を気にせず銀髪の少年は私の前までやってきた。

私も他の人達と同じく(何をしに来たのだろ?)と思いながらも今日まで培った営業スマイルでその少年に話しかけた。


「ようこそギルドへ。少年君は依頼をしに来たのかな?」

「フルフル」


少年は私のスマイルなんて効かないとばかりに不表情で首を横に振る。

どうやら依頼が目的でないようです。

では何しに?

そう聞こうとするより早く少年が先に答えた。


「…ボク…此処に登録しに…きた。…御願い…します」


少年は「登録…したい…」と身長差もあり上目で私に冒険者登録を希望すると告げてきた。

受付嬢は、少年が何を言っているのだろうか?と、こんな子供が冒険者に?と、思い困惑の表情を浮かべる。

確かに規定では冒険者は誰でも登録できる。

でもこんな子供が冒険者になるなんて今までないと思った。

確かに冒険者ギルドにて冒険者登録を行うと、色々とギルドから便宜を図ってもらう事が出来る。

ギルド所属で登録されているお店ではランクに応じてサービスして貰えるし、依頼の応答もギルドを通じて対応する事も出来る。

それ故に、殆どの貴族以外の男性はギルドに登録し冒険者稼業を取る者が多い。

しかし、冒険者登録されるのは10代後半の人から、成人の儀を受けた大人が殆どでした。

目の前の少年の様な若さで、冒険者となる人は今までいなかった。


どうしよ?とこの子の対応をどうしたらいいのか困惑する私に、少年は今一度、


「…登録」

「えっと…君、本気?」

「コクン」


本気かと聞く私に少年はその深い紺の瞳をじっと私を見つめ頷く。

受付嬢は少年が本気だと感じ、一先ず冒険者稼業についてと登録について少年に説明する。

少年はその深い紺の瞳でジッと受付嬢を見詰めつつ聞き逃さない様に話を聞く。


「どう分かった?君が思っているほど冒険者家業は優しくはないわよ?それでも登録するの?」

「問題ない…解ってるから大丈夫。…だから登録して」


困った私は他の先輩にこの子の対処について確認し意見を貰おうと思った。

ギルドにおいて冒険者登録に年齢制限は基本的にない。

だが、まだうら若いこの少年を受け入れてよいのだろうか判断しかねた。

「ちょっと待っててね」と少年に一声掛け待ってもらうと奥のスタッフルームに向かう。



私は丁度休憩していた先輩を見つけると件の少年について確認した。

私の話を聞いて先輩も驚いていた。

やはりあまり類を見ない事だったみたい。


少し考え込んでいた先輩は、私に1つ条件をその少年に受けさせて見てはと言う。

それは「冒険者稼業は荒事も多い。だから少年の力量を試し、問題の無い力量を有しているのだった登録を受理したらいい」と言うものだった。


私はあんな子供の少年を戦わせるのに躊躇があった。

ただただ心配だったが大部分だった。

けど私のその心配はその後の数秒で杞憂になったわ。


先輩と話し合って方針を決めた後だったわ。

表の方が何やら騒がしくなっているのに気付いたの。

どうやら男の怒鳴り声も聞こえてくる。


何事?と、あともしかしたらあの子が巻き込まれたんじゃ?と思い、私と先輩はスタッフルームを出ようとした。その瞬間だったわ。床に何か物凄い音と衝撃を与え叩き付けられた音がギルド内を響かせた。

私は性質(たち)の悪い男にあの少年が絡まれたのではと頭に浮かんだ。

冒険者には気性の荒いものが多いと言える。


先輩と私はすぐさま頷き合うと慌てて奥からカウンターに戻る。

そして戻った私達2人の受付嬢は眼を見張った。

2人の眼には件の少年と、その少年に絡んだと思われる少年の倍の身長も屈強な体格がある男が床に叩き付けられ気絶させられている光景だった。


(あの時は驚いたなぁ~彼があの時に叩きのめした男は、気性が荒く問題行動が多い冒険者だった。しかも問題のある性格をしているけどその男の強さは【A】ランクの下である【B】ランクに匹敵していた。けどルミナ君はその男を、子供相手という事もあり油断もあったのだろうけど、その体格差のある相手を倒した技量に、正直感服したわ。みほれたというべきかもしれなかったなぁ~)


目を点にして驚いていると、どうやら私に気付いた少年は、何事も無かったかのようにその場を抜けると私の元にテトテトと歩み寄ってくる。

少年は感情の希薄な紺の瞳を私に向ける。

そして「…登録」と声にする。


私は傍にいる先輩に視線を向ける。

先輩も問題ないみたいだねと許可を出してくれた。

私は少年を受付カウンターのテーブルに案内する。


「ここで登録をしましょう」


と声を掛ける。少年は、


「…うん。……ありが、とう」


と表情の乏しそうな中性的な整った顔を笑みで浮かべる。恐らく本人は無自覚だと思う。

その笑みを見て、何だか胸がキュンとなった。


「…カワイイ…」


と呟いていた。



「はぁ~あの時は本当に可愛かったなぁ~成長されて大人っぽく…なってるけど、あの彼の笑みはなんていうか母性を刺激するって言うのかなぁ~しかも、彼があのグラード一家と共にいるなんてねぇ…」


ハア~とうっとり溜め息を付く。

そんなウットリとトリップしていた私に女性の声が掛かる。


「すみませんが少し宜しいかしら、そちらの受付の御姉さん?」

「へっ?…あっ!?す、すみません!えっと、はい、どの様なご用件でしょうか?登録ですか?それとも依頼でしょうか?……」


受付嬢としては失敗と言える。ぼうっとしてお客様の対応を行ってしまったのだから。

慌てて目の前の女性の要件の確認を行う。

行ったんだけど……

目に映る女性に私が思ったのは怪しい人だった。

その女性は闇の様な深い紺のフードで顔を隠していた。

深々と被っているのでその女性の口元と長い灰色の髪が見えるのみでした。

これまでの経験から、この手の自分の情報を隠そうとされる人は何かしら厄介事を運んでくると分かっていた。

若干警戒しつつ営業スマイルを浮かべて対応する。

そんな私に怪しい女性は口元を笑みで浮かべると、


「ふふ、警戒しなくてもよろしいですよ。私は此処に居ると言う“何でも屋”さんに依頼の御願いをしに来たのです」

「…“何でも屋”さん、ですか?」


私の頭に先程思い返していた彼、ルミナ君の事を浮ぶ。


「ふふっ、ええ、どうしても、貴女が今思い浮かべていた銀の髪をした不思議な雰囲気のある少年に是非にお願いしたい事があるの♪」

「!?」

(この人、もしかしなくても私の思考を読んだの?…ってことは、もしかしてこの人、聖霊の担い手なのかも。ん~それにしてもルミナ君に依頼か……なんでだろ危険な香りがする…どうしよ…)

「ふふ、警戒させちゃったかしら?……それで、彼は今ここにおられるのかしら?居るはずなのですけど」


怪しい女性はまるで確信をもってやって来たかのようにものを言う。

受付嬢はこの目の前の女性を(まるで、【魔女】の様な人ですねぇ)と直感的に思い浮かべ、女性は受付嬢の思考を読んだのか(それ正解ね)と、フフッと笑みを浮かべた。


「それで、彼は今どちらに?早めに依頼の話をしておきたいのですけど?」

「…彼は、えっと……あっ!」


彼の居所を聞かれた私はルミナ君がまだ食堂におられるかもと伝えようとした時だった。私の視界に丁度ギルドの扉から出て行こうとしている彼、ルミナ君の姿を捉えた。

女性も私の視線の方に顔を向ける。


「…あの子ですね……」

「は、はい。―“ちょっと待ってくださぁいっ!ルミナ君っ!君に依頼者が来てるよぉ~!”」



ギルドを出て行こうとしているルミナを受付嬢は大きめの声で呼び止める。

自分が呼ばれた事もありルミナは受付嬢の方に顔を向ける。

そしてルミナは受付嬢の元に歩んでいく。

その合間、ルミナは受付嬢の傍にいる如何にも怪しそうだけど、どこか自分に似た不思議な雰囲気を漂わせているフードで顔を隠している女性が気になっていた。


「俺に依頼、ですか。依頼者はあなた、ですか?」

「はい!こちらの―」

「フフ、初めまして、ですわね。アナタが“何でも屋のルミナ”ですわね。是非とも貴方に引き受けて頂きたい依頼があるのですわ」


【人物】

受付嬢。(名前決めてない)

25歳の聖魂ルナを持たない一般人の女性。

ルミナの初めて冒険者登録した時の担当新人受付嬢。


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