ぶつかり合う大切なもの
「なっ!?」
暗闇に甲高い金属音が鳴り響いた。
直後、重力に従って上空から砕けた『魔龍魂』が落下してくる。
マリオルの視線はその『魔龍魂』に向けられていたかと思われた。
だが、
「――そうか。…………エスオ、君までも」
彼女の視線の先にいたのは、彼女の腹心であるはずだった、エスオの姿だった。
その手には、彼の獲物である大振りの斧が握られている。
「……マリオル。出会った時からお前は他の奴らとは何かが違った。それは人を惹きつける力であったり、単にプレイヤースキルだったり……とにかく、俺が知る限りじゃあ、お前は違った。……いや、違い過ぎたんだな」
龍太郎達の誰よりも前に踏み出たエスオは斧を構え直し、マリオルを強く見詰める。
「違い過ぎた、か」
マリオルは肩を落とし、自嘲気味に笑みを浮かべた。
「お前は既に、この世界の全てを知っているはずだ。お前の崇拝する主のために……それこそ、命を落とせるほどにな」
「……」
マリオルは沈黙した。
それにまるで反応するかのように、エスオは斧の刃を彼女に向ける。
「死を顧みない戦士が戦場に於いてどれだけ恐ろしい存在か、俺は良く知っている。だから、手加減なんて一切しない」
瞬間、何かが爆発するような音が木霊し。
エスオの姿はマリオルの目の前に瞬時に移動した。
「そうか……そうか」
振り下ろされた大斧は空気を聞きり裂き――マリオルの真紅の槍に、受け止められた。
「……いや、そうだな。最初から私に仲間などいなかった。私は常に孤独だった。あのお方だけが、私を死の淵から救ってくれた」
マリオルの持つ槍が淡く光り出す。
「――ならば、始めよう。エスオ、そして龍太郎君達よ。私は悲しいが、戦わなくてはならない。互いの、大切なもののために」




