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少女の意思

「――これが、俺が聞いちまった事の全てだ」

「……」


 話の後、智代理はぽかんとシュンの顔を見つめるばかりだった。

 まるで意識が別のどこかに連れ去られてしまったかのように。


「ち、智代理? 大丈夫か?」

「えっ? ああ、うん……」


 智代理は未だぼうっとしている。どうやらシュンの話が信じられない、といったところだろうか。

 彼女はマリオルのことをデビルズ・コンフリクトで出会ってからずっと尊敬し続けてきていた。マリオルとは、智代理の中で一種のヒーローのような扱いを受けていたのかもしれない。

 そんな人物が、じつはこの世界を創り変えようとしていた……いや、プレイヤーたちを利用するだけして、元の世界に返そうとしていない可能性があるという事実は、智代理の胸の奥深くまで突き刺さる。


「本当に、大丈夫か?」

「……」


 智代理は胸の中でシュンの話をすべて噛み締める。一言一句こぼさないように。それが自分の使命だと言わんばかりに、心に刻む。


「シュンくん」


 声を上げる。智代理は決意を固めた。龍太郎ともう一度旅をするために固めた決意とおなじくらい、強く、つよく。


「このこと、他の皆には?」

「あ、ああ……話したよ。……アスカ以外には」


 シュンはどこかアスカを遠ざける節があった。かと思えば自ら寄ることもあるし、智代理には、その時だけシュンのことがよくわからなくなっていた。

 でも、アスカにだけ話していないというのなら、それは話さなくてはならない。


「シュンくん、聞いて。私、マリオルさんのやろうとしていること、間違っているのかどうかを、最後この目で確かめたい」

「お、おう」


 シュンは珍しく勢いのある智代理に圧倒されている。


「だから、ひとつだけお願いがあるの」

「お願い?」

「アスカちゃん以外の皆を、私の部屋に集めて。皆に向かって私から話したいから」

「……アスカは?」

「アスカちゃんには、私から話すよ。多分、シュンくんはどうしてもアスカちゃんに言いたくないんだよね? それなら、それは私の役目になると思うの」

「智代理……」


 シュンは驚いたような顔で智代理を見ていた。引っ込み思案だった頃の彼女と今の彼女。随分と成長したなと思うことは今までも何度かあったけれど、今回の智代理は、今までで一番成長しているとシュンは感じた。それこそ、自分がくだらない理由でアスカに言い出せないでいることが恥ずかしくなってしまうほど。

 シュンは、ひとつ、頷く。智代理の頼みを聞く。これだけ決意を固めた彼女なら、必ず、何らかの形でマリオルと決着をつけてくれるに違いない。

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