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 時は昼過ぎ。今回行われる第二次作戦、陽動役をつとめる者たちの下には、既に大勢の悪魔族軍が戦力を傾けてきていた。

 マリオル立案である今回の作戦では、龍戦士族軍総勢百二名を陽動役と本攻め役とに分けている。

 陽動役がまず悪魔族の街エリュガレスのすぐ真後ろでスキルによる爆発音を鳴らし、悪魔族軍をおびき寄せる。その間に、少人数で構成された本攻め役が悪魔城ガリデルへと進行する。

 百鬼旋風のメンバーのうち、何故か智代理だけが、本攻め役に抜擢されていた。


「智代理……大丈夫かしら」

「大丈夫じゃないかな、彼女なら」


 アスカが街の方を見ながらポツリと漏らすと、近くにいたセーヴがそれを拾った。

 彼は既に装備を真紅に染め上げており、陽動役にも関わらず、容赦なく悪魔族軍を駆逐していく。

 アスカもそれに続いて、迫ってきた悪魔族を細身の刀で斬り伏せた。


「……どうしても心配かい?」


 思いつめた表情で戦っているアスカをみて、セーヴがそう問いかけた。


「心配です。今すぐにここを抜け出して、智代理の所に行きたい」

「はは、アスカ君は智代理君のことが好きすぎるね」


 セーヴはアスカの重い口から出た言葉を軽く受け流し、からからと喉を鳴らした。

 なぜ、マリオルは百鬼旋風全員を本攻めに回さなかったのか。どう考えても、城を知る者で攻めたほうがいいはずなのに。

 それに智代理だけ、というのもまた不可解だ。彼女はこっちの世界で多少なりとも強くなったが、まだ戦力的に危ないふしがある。顔見知りがいない空間にあの子を一人で放り込ませるのは余りにも無謀だ、とアスカは奥歯を噛み締めた。


「……やっぱり私、あの女性(ひと)嫌いです」

「マリオルさんのこと?」

「はい。何を考えているのか分からなくて」


 アスカの言葉を聞いたセーヴは、そうか、とひとつ間を置いてから口を開いた。


「……実はね、僕、マリオルさんに一度だけリアルで会ったことがあるんだ」

「え? そうだったんですか?」

「うん。彼女はデビルズ・コンフリクト開発チーム主任だった人の古い知り合いらしくてね。僕を含めた開発チームは全員、一度彼女と話す機会があったんだ」


 それからセーヴは、再び一瞬の間を開けた。彼の表情が曇る。


「今の彼女は、僕が初めて会った時の彼女とは明らかに違う。それから、デビルズ・コンフリクト内で見た彼女ともね」


 セーヴはそれだけを言って、新たにやってきた悪魔族をまた一人、倒す。まるで自分が放ったその言葉から逃げるように。

 アスカは彼の暗い顔を見たことがなかった。だから、今の彼はアスカの知らないセーヴだ。

 そんなセーヴが何故だか無性に怖くて、歪に思えてしまって、アスカもまた、思考を戦いに戻した。

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